ゴールデングローブ賞アニメ映画賞に「君たちはどう生きるか」

アメリカでアカデミー賞の前哨戦とされるゴールデングローブ賞の各賞の発表が行われ、アニメ映画賞に宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が選ばれました。

日本の作品がアニメ映画賞を受賞するのは初めてです。

今回で81回目となるゴールデングローブ賞は、ハリウッドで映画業界を専門に取材する外国人記者でつくる団体が選ぶもので、3月に開かれるアメリカ映画界最大の祭典、アカデミー賞の前哨戦と位置づけられています。

7日、ビバリーヒルズのホテルで各賞の発表が行われ、アニメ映画賞に宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が選ばれました。

日本の作品がアニメ映画賞を受賞するのは初めてです。

宮崎監督は授賞式に出席しませんでした。

「君たちはどう生きるか」は宮崎監督が引退宣言を撤回し、原作と脚本も担当して、およそ7年の製作期間をかけて作り上げた作品で、太平洋戦争中に母親を失った少年が不思議な世界に迷い込む宮崎監督のオリジナルストーリーです。

アニメ映画賞には、新海誠監督の「すずめの戸締まり」もノミネートされていました。

このほかの各賞では、日本に投下された原爆の開発を指揮した学者を題材にした「オッペンハイマー」が最も注目される作品賞のドラマ部門をはじめ監督賞、作曲賞などあわせて5部門で受賞しました。

作曲賞には「君たちはどう生きるか」で音楽を担当した久石譲さんがノミネートされましたが、受賞はなりませんでした。

鈴木敏夫プロデューサー「格別な気持ち」

受賞を受けてスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーは「受賞の知らせを聞いて、本当にうれしく思います。歴史あるゴールデン・グローブ賞で、ジブリ作品が賞を頂いたのは初めてのことなので、格別な気持ちです。日本では年初以来、地震や事故などの痛ましいニュースが相次ぎました。被災地では未だ救助を待っている方々が数多くいらっしゃるという報道を聞くと、やり切れない思いで一杯になります。そんな中で受賞という明るいニュースは、少しでも皆さんに笑顔を届けることができるでしょうか」とするコメントを出しました。

レッドカーペットに久石譲さんも

授賞式に先立ち、各作品の出演者や関係者がレッドカーペットを歩き、取材陣のインタビューなどに応じました。

このうち「君たちはどう生きるか」の音楽で作曲賞にノミネートされた久石譲さんは「シャンパンとおいしい食事が食べられるというので楽しみにしてきました。宮崎駿さんの作品は絶対に評価されると思っています」と話していました。

また、「すずめの戸締まり」の企画・プロデュースを担当した川村元気さんは映画でも重要な役を担った小さなイスを抱えてレッドカーペットを歩き、「初めてのゴールデングローブ賞ですが、右を見ても左を見てもムービースターだらけでテンションが上がります。震災からインスパイアされて製作した作品だが、災害は世界中の人が体験することなのではないかと思うので、映画を通じて人がどう生きていくのかということが伝わったらいいと思います」と話していました。

「君たちはどう生きるか」とは

「君たちはどう生きるか」は、スタジオジブリの宮崎駿監督の10年ぶりの長編映画です。

タイトルは宮崎監督が子どものころに読んで感動したという、児童文学者の吉野源三郎の作品からとったということですが、ストーリーは全く異なります。

太平洋戦争が始まった日本を舞台に、火事で母親を失い、父とともに疎開した少年が、青サギと人間の姿を行き来するサギ男に導かれて、不思議な世界に迷い込む宮崎監督のオリジナルストーリーで、2023年7月の公開時には、映画の内容に関する情報を事前に明らかにしない異例の対応が取られ、話題となりました。

宮崎駿監督の歩み

宮崎監督は、東京都出身の83歳。アニメーション作家の巨匠として世界的に知られ、「風の谷のナウシカ」や「となりのトトロ」「もののけ姫」など、数々のヒット作を発表し、2001年の「千と千尋の神隠し」は、アメリカのアカデミー賞の長編アニメーション映画賞を受賞しました。

宮崎監督は2013年の「風立ちぬ」の公開後、一度は長編アニメからの引退を表明しましたが、その後、引退を撤回し、原作と脚本も担当して、およそ7年の制作期間をかけて今回の作品を作り上げました。