石川県の高齢者施設 3施設と連絡取れず 厚労省など確認進める

厚生労働省によりますと石川県内で108の高齢者施設で断水や停電などの被害が確認されていますが、3つの施設と連絡が取れない状況が続いているとして、厚生労働省と石川県などが確認を進めています。

5日午前7時現在で、石川県内の高齢者施設で断水や停電が確認されているのは108施設にのぼります。

厚生労働省によりますと、これらの施設には県や自衛隊などが順次、拠点を通じて必要な物資の輸送を行っているということです。

障害者施設でも石川県内では、少なくとも29の施設で停電や断水などの被害が確認されています。

自治体別では、
▽七尾市で10施設
▽輪島市と穴水町でそれぞれ4施設
▽能登町で3施設などです。

一方で依然、連絡が取れていない施設もあり、高齢者施設は3施設、障害者施設は2施設で被害や利用者の状況が把握できていないということです。

厚生労働省は「必ずしもすべての施設が危険な状況にあるわけではないと思うが、県などとともに早急に確認を進めたい」としています。

能登半島の高齢者施設 30施設近く電話通じず

石川県の能登半島にある高齢者施設のうちNHKが58の施設に5日午後の時点で電話で取材したところ、電話が通じない施設が30近くにのぼっていて、孤立状態にある施設もあるとみられています。

電話が通じた29の施設でもいずれも断水が続いていて、食料や衛生用品などが不足し体調を崩す人も出始めていることが分かりました。

NHKは5日午後、輪島市や珠洲市、七尾市など能登半島の7つの市と町にある高齢者施設のうち合わせて58の施設に電話で取材しました。

その結果、電話しても呼び出し音が鳴らない状態で通じず、連絡がとれない施設が珠洲市を中心に29にのぼっています。

中には孤立状態にある施設もあるとみられています。

また、電話が通じた29の施設でもいずれも断水が続いていて、体調を崩し始める高齢者がでている施設があることが分かりました。

多くの施設でトイレが使えず、おむつで代用していたり、食事を作れずに非常食などで対応したりしているということです。

また、給水場に職員が何度も水をくみに行って対応しているとか、下水の代わりに積もった雪を溶かして使っているといった声も聞かれました。

多くの施設で物資の支援が届いておらず、尿取りパッドやおしりふきなどの衛生用品や、食料品、使い捨ての食器なども不足しているということです。

さらに、地震の影響でスプリンクラーが壊れ、利用者の部屋が水浸しになったり、設備が壊れたりしたという施設や、非常食が足りず、食事の提供が1日2食になり栄養面が心配だという声もありました。

施設の中には、地域の高齢者や障害者などを受け入れる福祉避難所として指定されているところもありますが、多くの施設で受け入れはできていませんでした。

能登町の高齢者施設 食料品も手に入らず早急な支援求める

石川県能登町の高齢者施設では断水が続き、食料品も手に入らない状況が続いていて早急な支援を求めています。

能登町の高齢者施設「能輝村」では、現在16人が入所していますが建物の基礎が割れて壁紙が破れるなどの被害がありました。

電気は3日の夜に復旧しましたが、いまも断水が続いていて、近くの湧き水を浴槽にためて洗濯やトイレを流す際などの生活用水にしているほか、節水のため配膳の食器にラップを張って洗い物を減らしたりポータブルトイレを使ったりしているということです。

また、最も不足していのるが食料で、業者から配送が届かなくなり、店も閉店しているため、1回の食事量を減らし災害用の備蓄の食料を使っていますが、あと3日分しか確保できていないということです。

施設のケアマネージャーの久山知美さんは「今必要なのは食料品で、風呂に入れないので体を拭くのにも使えるお尻ふきがほしいです」と支援を訴えました。

そのうえで「家が全壊したり車が壊れたりして出勤できない職員もいる中、少人数でなんとか対応しています。認知症の利用者が多く10分おきにトイレに行ったり地震があったことが分からず『食事はこれだけか』と言われたりして、職員の負担は大きいです。心配なのは感染症で手を洗う水がないなど衛生面が行き届かない中、1人感染したら一気に広まってしまうのではと危惧しています。これが夢ならいいのになと毎日思っています。早く元の生活に戻ってほしいです」と話していました。

輪島市の高齢者施設 職員のほとんどが被災など厳しい状況

地震で甚大な被害が出た石川県輪島市の高齢者施設では、職員のほとんどが被災しているうえ断水や物資の不足が解消されず、厳しい状況が続いています。

輪島市気勝平町にある介護老人保健施設「百寿苑」では、およそ100人の高齢者が入所していますが、入所者が暮らす2階部分が地震で壊れたため、ふだんはデイケアで使用している1階部分に入所者をうつしました。

しかし、エレベーダーも壊れたため、ベッドは2階から運べず、入所者は床にマットレスを敷いて寝起きする生活が続いています。

1階部分はスペースも狭いうえ、マットレスの数も足りず、入所者は3人で2つを分け合い身を寄せ合って生活しています。

また、100人ほどいる職員もほどんどが被災し避難所から通う人や施設で寝泊まりする人も多く職員の疲労もたまってきているということです。

この高齢者施設は、災害時に高齢者などの特に配慮が必要な人を受け入れる「福祉避難所」に指定されていますが、断水が続いているほか被災して施設に来ることができない職員もいるため、近隣からの避難者の受け入れは断らざるをえない状況だと言います。

船本貴宏副施設長は「断水が続き入所者の感染症などが心配な状況が続いている。支援物資は少しずつ増えているが、職員の多くが被災して仕事に来られない人もいて、自分たちだけでも精いっぱいだ」と話していました。