奈良 下北山村 土砂崩れ 捜索再開は26日以降の見通し

奈良県下北山村の国道で23日発生した土砂崩れで、救助された人の車のほかに別の車1台が巻き込まれた可能性がありますが、現場の安全確保は進まず、消防は捜索の再開は26日以降になるとの見通しを示しました。

23日、奈良県下北山村上池原の国道169号線で国道沿いの斜面の土砂が幅およそ30メートルにわたって崩れ、軽乗用車1台が巻き込まれて50代の男性が大けがをしたほか、別の車1台も巻き込まれた可能性があります。

警察などによりますと、和歌山県に住む70代の男性が、車で釣りに出かけたまま連絡がとれず、土砂崩れに巻き込まれた可能性があるということです。

捜索活動は、崩れた斜面の上にある大きな岩の塊や土砂のために二次災害のおそれがあるとして中断されていて、奈良県が25日朝から安全確保のため岩の塊などを取り除くための準備作業に当たっています。

消防は現場で作業の状況を見守っていましたが、安全確保が進んでいないことから25日の午後も捜索は見送り、捜索再開は26日以降になるとの見通しを示しました。

奈良県は岩や土砂の撤去など安全確保の作業を引き続き進めるとしていますが、めどはたっていないということです。

専門家「土砂崩れは『凍結融解』が原因か」

地盤工学が専門の関西大学社会安全学部の小山倫史教授は、今回の土砂崩れは「凍結融解」によって引き起こされたのではないかと指摘しています。

「凍結融解」は水が凍ったりとけたりを繰り返す現象で、斜面の地中で起きると、土砂の隙間が拡大し、土砂崩れが起きやすくなるということです。

小山教授によりますと、「凍結融解」による災害や事故は、氷点下まで気温が下がる地域では、しばしば発生しているということです。

27年前の1996年に北海道古平町の豊浜トンネル内で巨大な岩盤が崩落し、20人が亡くなった事故も「凍結融解」が原因だとみられているということです。

小山教授は「山の斜面の地盤で『凍結融解』がどれだけ進んでいるのか確認することが防止につながるが、地盤の表面にコンクリートなどが吹きつけられていて詳細に調査するのは難しい。今回の現場と似たような場所は全国にたくさんあるので、調査をして、対策につなげていく必要がある」と話していました。

奈良県 山下知事「今週中に専門家による会議を」

奈良県下北山村の国道で土砂崩れが発生したことを受け、奈良県の山下知事は、今週中にも専門家による会議を開いて原因の究明や復旧作業の方法を検討することを明らかにしました。

現場の国道を管理する奈良県は、今回の土砂崩れが発生したことを受けて、25日、臨時の会見を開きました。

冒頭で、山下知事は「事故に遭われた方やご家族に心よりお見舞い申し上げるとともに、要望に対して丁寧に対処したい」と述べました。

県によりますと、土砂崩れが起きた現場は、ことし5月、大雨で斜面が崩れたため、防護柵を設置して片側交互通行の措置が取られていました。

その後、先月までに本格的な復旧工事を始める予定でしたが、県の事務的なミスがあり入札をやり直したため、工事の開始予定は、およそ2か月遅れの来年1月に変更されたということです。

また、週に1回、目視による道路パトロールを行っていて、発生前日の今月22日にも実施していましたが、異常は確認されなかったということです。

今後の対応について、山下知事は、捜索活動を最優先するとともに、今週中に専門家による会議を開いて、原因の究明と復旧工事に向けた工事の方法を検討することを明らかにしました。