【23日詳細】イスラエル軍 ガザ地区南部への攻勢強める

イスラム組織ハマスの壊滅を掲げるイスラエル軍はガザ地区南部への攻勢を強めています。ガラント国防相はハマスのシンワル指導者について「もうすぐわれわれに銃を向けられることになるだろう」と述べ、戦闘が長期化する中部隊がハマス指導部に迫っていると強調するねらいもあるとみられます。

イスラエルやパレスチナに関する、日本時間12月23日の動きをお伝えします。

ユニセフ “5歳未満の子ども全員が死のリスクに”

ガザ地区では、食料不足が深刻化していますが、ユニセフ=国連児童基金はガザ地区の5歳未満の子ども全員が、重度の栄養失調と、防ぐことができる死のリスクにさらされているなどとして、一刻も早い停戦を求めています。

WFP=世界食糧計画などがガザ地区を対象に行った最新の調査によりますと、人口の93%が「危機的な」食料不足に直面したとしています。

これを受けてユニセフは22日「調査結果はガザ地区の5歳未満の子ども33万5000人全員が、重度の栄養失調と、防ぐことができる死のリスクにさらされていることを示唆している」とコメントを出しました。

さらに今後数週間で、少なくとも1万人の5歳未満の子どもが重度の栄養失調に苦しみ、治療のための食料を必要とするだろうとしています。

また、15万5000人以上の妊娠中・授乳中の女性、13万5000人以上の2歳未満の子どもの栄養状況については、ストレスなどによりさらに悪化するため特に懸念しているとしています。

ユニセフは、こうした状況は「完全に人為的で、予見可能で、回避できるものだ」とした上で「弱い立場にある子どもたちが基本的な栄養と健康のニーズを満たせるよう、即時、かつ長期的な停戦を必要としている」として、一刻も早い停戦を求めています。

UNDP 職員や家族ら70人以上死亡か

UNDP=国連開発計画は22日、イスラエルによる軍事作戦が続くガザ地区の北部ガザ市の近郊への空爆で、56歳の職員1人が死亡したと発表しました。

この空爆では、職員本人や妻、それに子どもたちや親戚など、70人以上が犠牲になったと伝えられているとしています。

この男性職員はおよそ30年にわたり、UNDPで働いてきたということで、UNDPは哀悼の意を示した上で「国連や民間人は攻撃対象であってはならない。この戦争は終わらなければならない。彼の家族や数え切れないほどの家族が経験している苦しみは、これ以上の人々が耐えるべきものではない」として、一刻も早い停戦を呼びかけています。

一連の戦闘では、多くの国連関係者が犠牲になっていて、国連のグテーレス事務総長は22日、SNSに「75日間で136人の同僚が亡くなっている。国連の歴史上、かつてないものだ。ほとんどのスタッフが家を追われている」と投稿しています。

UNRWA「ガザの人々はチェスの駒ではない」

UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関ガザ事務所のトーマス・ホワイト所長は23日、旧ツイッターのXで、イスラエル当局が軍事作戦を拡大するため住民に対してガザ市の南にあるデルバラハ地区に退避するよう通告していると投稿しました。

ホワイト所長は、デルバラハ地区にはすでに避難してきた人たちが大勢いて、15万人以上が影響を受けると指摘したうえで「ガザの人々は人間だ。チェスの駒ではない」とイスラエル軍の対応を批判しました。

イスラエル国防相 “ハマス指導者 もうすぐ銃を向けられる”

イスラエルのガラント国防相は22日、ガザ地区北部は制圧しつつあり、南部でもハマスのガザ地区トップのシンワル指導者がいるとみられるハンユニスを中心に軍事作戦を強化していると明らかにしました。

そのうえでシンワル指導者が地下トンネルに潜伏しているとみられることを念頭に「いま彼は、頭上にいるイスラエル軍の車両や空爆の音が聞こえているに違いない。もうすぐわれわれに銃を向けられることになるだろう」と述べ、ハマスの本格的な解体に向けて南部で攻勢を一層強めていく姿勢を示しました。

これに対してハマスは声明で「この脅迫は意味のないものだ」と反発しました。

イスラエル軍 地下トンネル内部映像を公開

イスラエル軍は22日、犬の体に取り付けられたカメラで地下トンネルの内部を撮影したとする映像を公開しました。

数百メートルにおよぶトンネル内を捜索した結果、司令や通信の設備が見つかったとしています。

イスラエル軍のハガリ報道官は22日の記者会見で、ガザ市でハマスの幹部が利用していた地下トンネルを新たに発見し、爆破したと明らかにした上で「最終的には、ハマスがトンネルから攻撃する能力を奪い取るため、ほかのトンネルも攻撃していく」と強調しました。

国連 “イスラエル軍の攻撃で物資搬入に滞り”

ガザ地区の人道状況をめぐり、国連のグテーレス事務総長が22日、国連本部で記者会見し「ガザの人たちの切実なニーズを満たし、いまも続く悪夢を終わらせる唯一の方法が人道的な停戦だ」と述べ、停戦の必要性を改めて訴えました。

また、国連安保理でガザ地区への人道支援を拡大するための決議が採択されたことについては「きょうの決議が停戦を最終的に実現させるのに役立つことを期待しているが、いますぐにでも必要とされていることが数多くある」と述べ、人道状況の改善に向けて一刻も早い対応を呼びかけました。

一方、グテーレス事務総長は「問題は、イスラエルの攻撃方法がガザ地区での人道支援物資の流れに大きな障害をもたらしていることだ」と述べ、イスラエル軍の攻撃によって物資の搬入が滞っているという認識を示し、支援活動にあたるスタッフらの安全を確保するようイスラエルに求めました。

「戦闘停止と人質解放で交渉」イスラエル世論調査で支持多数

イスラエル軍はガザ地区南部の地上部隊を増やしてイスラム組織ハマスへの攻勢を強めていますが、今もおよそ130人が人質になっているとみられています。

こうした中、イスラエルの新聞「マーリブ」が22日に伝えた世論調査によりますと「戦闘を停止する引き換えに人質を解放する取り引きをもう一度行うことに賛成か反対か」という質問に対し、67%が賛成、22%が反対と回答し、世論の多数が交渉を支持していることが浮き彫りになりました。

また、イスラエルの首相にはネタニヤフ首相と野党党首のガンツ前国防相のどちらがふさわしいかとの質問では、ガンツ前国防相が46%、ネタニヤフ首相が34%と依然としてガンツ前国防相の支持が高いものの、ネタニヤフ首相の支持は前回の調査から3ポイント上がっています。

調査では前回の選挙でネタニヤフ首相が党首を務めるリクードに投票した層でネタニヤフ首相への支持が伸びていると伝えています。

ガザ地区南部“1トン爆弾によるとみられるくぼみが208個”

アメリカの新聞「ニューヨーク・タイムズ」は21日、AI=人工知能を使ってガザ地区南部の衛星写真などを分析した調査報道の結果を報じました。

それによりますと戦闘が始まってから6週間が経過した時点で、ガザ地区南部ではイスラエル軍が投下した1トン爆弾によるとみられる円形のくぼみが208個、確認されたとしています。

記事ではアメリカ軍が1トン爆弾を人口が密集した地域に投下することは現在、ほとんどないとする専門家の指摘を伝えています。

ガザ地区の保健当局によりますとガザ地区での死者数はすでに2万人を超えていて、民間人の犠牲は膨らみ続けています。

国連安保理 ガザ地区への人道支援拡大決議案を採択 米ロが棄権

国連安全保障理事会でパレスチナのガザ地区への人道支援を拡大するための決議案の採決が行われ、15か国のうち日本やイギリス、フランスなど13か国が賛成、アメリカとロシアが棄権し、決議案は採択されました。

イスラエル軍とイスラム組織ハマスの軍事衝突が始まって以降、国連安保理で事態打開を目指す決議が採択されたのは2回目です。

国連安保理では22日、日本時間の23日未明に緊急会合が開かれました。

安保理では、ガザ地区への人道支援を拡大するための決議案をめぐり、各国が鋭く対立して採決が4日連続で延期される異例の事態となっていましたが、UAE=アラブ首長国連邦とアメリカが決議案をとりまとめ、提出しました。

決議案は、急速に悪化しているガザ地区の人道状況に深い懸念を示した上で、人道支援を大規模に増やすために敵対行為の停止に向けた条件をつくるよう求めているほか、ガザ地区に搬入される支援物資の監視や調整などを行う国連調整官を任命するよう求めています。

会合でははじめに、ロシアが決議案のさらなる修正を求め、採決が行われましたが、アメリカが拒否権を行使してロシアの提案は否決されました。

その後、決議案の採決が行われ、15か国のうち日本やイギリス、フランスや中国など13か国が賛成、アメリカとロシアが棄権し、決議案は採択されました。

イスラエル軍とイスラム組織ハマスの軍事衝突が始まって以降、国連安保理で事態打開を目指す決議が採択されたのは、先月(11月)15日に続き、2回目でガザ地区で民間人の犠牲が増え続けるなか、安保理として人道状況の改善に取り組むようイスラエルに迫った形です。

一方、決議が採択された後、イスラエルの国連次席大使は「安保理はまずテロ組織の脅威を取り除くことに取り組むべきだ。ハマスの能力を排除するというわれわれの使命は変わらない」などと主張していて、今回の決議が事態の打開につながるかどうかは不透明です。

アメリカ国連大使 採択歓迎もイスラエル擁護の姿勢

アメリカは、決議案の修正が必要だとして採決の延期を繰り返し求めながらUAEとの間で決議案をとりまとめ、採決では、拒否権を行使せず、棄権にまわりました。
拒否権を行使しないことで採択を容認した形です。

決議が採択されたあと、トーマスグリーンフィールド国連大使は「この人道危機について安保理が一致して発信したことは喜ばしいが、ハマスのテロ攻撃を非難できなかったことには、アメリカは深く失望している。ハマスは恒久的な和平に関心がない。だからこそ、国民をテロ行為から守るイスラエルの権利をアメリカは支持する」と述べ、決議の採択を歓迎しながらも、イスラエルを擁護する姿勢を改めて示しました。

イスラエル「決議を実行に移すよう呼びかける」

国連安全保障理事会でパレスチナのガザ地区への人道支援を拡大するための決議案が採択されたことを受けてイスラエル軍のハガリ報道官は22日、記者会見で「決議はハマスに捕らえられた人質について、無条件かつ即時の解放や必要な医療を提供するための人道的なアクセスを認めることを要求している。私たちは国際社会や国際機関に対し、この決議を実行に移すよう呼びかける」と述べました。

ハマス「不十分だ 戦争止めるための決意含まれていない」

一方、イスラム組織ハマスは決議について「不十分で、イスラエル軍という『テロ製造機』が作り出したガザ地区の壊滅的な状況に必要なことを満たしていない。とりわけガザ地区のパレスチナ人に対する大量虐殺のような戦争を止めるための国際的な決意が含まれていない」としたうえでアメリカがイスラエルのために決議を骨抜きにしたと批判しました。

ロンドン 停戦訴えるデモ「クリスマスの間も殺りく止まらない」

クリスマスを前に、イギリスの首都ロンドンに親子連れなど数百人が集まってデモを行い、ガザ地区での一刻も早い停戦を訴えました。

このデモはパレスチナの人権擁護のため活動するグループが即時停戦を求めて呼びかけ、22日、ロンドンのウェストミンスター寺院の前に親子連れなどおよそ200人が集まりました。

集まった人たちは、飼い葉おけの中で眠る幼いキリストの姿のかわりにガザ地区のがれきに見立てた灰色の空箱などを並べ、パレスチナ伝統の敷物「クーフィーヤ」に包まれた手作りの人形を飾り、キリスト生誕の場面を表しました。

そして、パレスチナが置かれる苦しい状況を盛り込んだクリスマスキャロルの替え歌を歌いました。

また、集まった人たちは即時停戦を支持しないイギリス政府に抗議するため、「ガザへの空爆をやめろ」などと声を上げながら、外務省の前まで行進しました。

2歳の息子を抱いた女性は「ガザの子どもたちは絶え間なく空爆されている。母親として、いま起きていることを見ることに耐えられない」と話していました。

主催者のパレスチナ人の女性は「世界中でクリスマスを祝いイエス・キリストの誕生を祝福しているが生誕の地とされるパレスチナは空爆され人々が殺されている。当局者たちが(クリスマスの)休暇に出かけている間もガザでの殺りくは止まらないと伝えたかった」と話していました。

病院ボランティア「民間人や学校、病院が標的に」

パレスチナのガザ地区にある「インドネシア病院」で医薬品や食料を配布するボランティアを続けてきたインドネシア人の男性がNHKの取材にオンラインで応じました。

人口のおよそ8割がイスラム教徒のインドネシアは長年、パレスチナを支援していてイスラエルとは外交関係がありません。

ガザ地区北部にある「インドネシア病院」はインドネシアの人道支援団体「医療緊急救助委員会」が資金援助をして建設され、2015年から稼働していてます。

フィクリ・ロフィル・ハクさん(24)は2020年からこの病院でボランティアを続け、いまもガザ地区にとどまっています。

フィクリさんは「病院をできるかぎり支援したが、イスラエル軍は民間人や公共施設、学校、病院を攻撃の標的にしていた」と述べ、激しい攻撃を受けた病院は11月下旬から稼働できていないと明らかにしました。

その上で「パレスチナの人にとっても外国人にとっても、ガザ地区に安全な場所はない」と訴えました。

また、ガザ地区北部の攻撃の状況については「ことばでは言い表せない。学校や病院に避難していた人たちも拘束されている」と指摘しました。

フィクリさんは現在ガザ地区南部に移動して、食料などを配布する活動を続けていますが「数日前は200メートル先でイスラエルの無人機が爆弾を投下した」として、危険が差し迫っていると述べました。

また南部のラファに届けられた物資は北部には届いていないと指摘し「イスラエルは飢えでガザの人々を滅ぼそうとしている」と述べて一刻も早く支援が行き渡るようにすべきだと訴えました。