ダイハツ 国内4つのすべての自動車工場 来週から稼働停止へ

国の認証取得の不正問題で、すべての車種の出荷を停止したダイハツ工業は、国内4つのすべての自動車工場で来週から稼働を停止することになりました。今後、国土交通省が基準への適合を確認する方針で、会社は生産再開の見通しはたっていないとしています。

ダイハツ工業は20日、国の認証取得の不正問題で、新たに64車種で174件の不正が見つかったことを公表し、国内外のすべての車種の出荷の停止を決め、国内では、すでに出荷を停止しています。

これを受け会社は、国内に4つあるすべての自動車工場で、来週からすべての生産ラインで稼働を停止することを決めました。

このうち、
▽滋賀県竜王町にある滋賀工場
▽京都府大山崎町にある京都工場
▽子会社の「ダイハツ九州」の大分県中津市にある大分工場の、
3つの工場については、12月25日から稼働を停止するとしています。

また、
▽大阪 池田市にある本社工場については、12月26日から稼働を停止するとしています。

国土交通省は、不正のあった車種の基準への適合を確認する方針で、会社は、生産再開の見通しはたっていないとしています。

生産と出荷の停止が長期化した場合、部品の取引先や新車を購入する消費者への影響は避けられない見通しです。

販売店では顧客の対応に追われる

ダイハツ工業の販売店では、顧客からの問い合わせなど対応に追われています。

千葉県鎌ケ谷市の販売店では、新車の注文を受けていた顧客に電話をかけるなどして、出荷の停止や今後の対応について説明しています。

店では、当初予定していた時期に納車を希望する場合には、在庫のある車種や同じ車種の中古車の購入の相談にも対応していますが、すでにキャンセルも数件出ているということです。

また、出荷再開の見通しが立たない中、新車の新たな注文は受け付けていないということです。

販売店には、来月に納車予定だったという人も訪れていて、担当者から説明を受けていました。

ダイハツ千葉販売鎌ケ谷店の大澤和平店長は「出荷停止となっていることをおわびするとともに、すでに注文をいただいた方に、納車をお待ちいただけるか意向を確認しています。お客様の不安にしっかりと耳を傾け対応していきたい」と話しています。

1月に納車予定の女性は

鎌ケ谷市の販売店を訪れた60代の女性は、1月に納車の予定で、今週に入って代金の支払いを済ませたばかりだったということです。

女性は「納車をとても楽しみにしていたので、何があったのかと本当に驚きました。いつ納車されるかわからないですが、注文した車が好きなので、半年や1年は待つことにしました。今後、同じような不正が起きてはならないので、ユーザーも時間の余裕を持って待たないとならないと思います」と話しています。

ダイハツの工場がある自治体では

ダイハツの工場がある自治体では、影響を懸念する声が出ています。

このうち、滋賀県竜王町には軽自動車の「タント」などを生産する滋賀工場があり、ダイハツによりますと、正社員だけでも、およそ4000人が働いているということです。

さらに、町にはダイハツの取引先の工場などもあり、自動車関連が主力産業になっているだけに、出荷停止による影響を懸念しています。

杼木栄司副町長は「自動車産業はすそ野が広いので、地域経済への影響に加え、自治体としても税収面での影響を懸念している状況だ」と話していました。

さらに竜王町は子育て支援策として、2021年度から一定の条件を満たした町内の家庭を対象に、2人目や3人目以降の子どもを出産した場合、3年間、ダイハツの車を無償で貸し出す制度を導入しています。

町では、制度の継続には会社側の協力が不可欠だとして、今後の推移を見極める必要があるとしながらも、できるかぎり続けていきたいとしています。

杼木副町長は「町は人口の増加を目指して、子育て支援に力を入れてきた。その1つである車の無償の貸し出しは、ダイハツの工場があるからこその施策で、ほかの町にはできないものだ。今回のことで、いったん保留になるかもしれないが、継続することを前提に進めていきたい」と話しています。

ダイハツ工業とは

ダイハツ工業は、
▽1907年にエンジンの製作と販売を行う会社「発動機製造」として大阪で創業し、
▽1930年に自動車の生産を始めました。

当初は小型三輪車を生産し、のちに軽自動車や小型自動車の生産につながりました。

▽1951年に、いまの「ダイハツ工業」に社名を変更し、
▽1967年には、トヨタ自動車の前身の「トヨタ自動車工業」と「トヨタ自動車販売」の2社と業務提携を結びました。

そして、
▽1998年に、トヨタが株式の過半数を取得してトヨタの子会社になると、
さらに、
▽2016年には、トヨタがすべての株式を取得し、完全子会社となりました。

他社向けの車の供給は、
▽2000年代半ばごろから本格化し、
トヨタの完全子会社となった
▽2016年前後には、トヨタ向けの車の供給が大きく増えました。
さらにトヨタ以外にも、SUBARUやマツダに軽自動車や小型車を供給してきました。

一方、海外展開も進め、現在は、東南アジアのインドネシアとマレーシアに現地企業との合弁工場を持ち、現地向けや輸出用に小型車の生産を行っています。

ダイハツ工業の取引企業 全国で8136社に

民間の調査会社、帝国データバンクによりますと、ダイハツ工業と取り引きがある企業は、2次下請けや3次下請けなどを含めた部品メーカーのほか、運送会社や商社など、全国で8136社にのぼっています。

所在地別では、
▽親会社のトヨタ自動車が本社を置き、自動車関連産業が集まる愛知県が2084社
▽ダイハツが本社を置く大阪府が1043社
▽東京都が562社
などとなっているほか、

ダイハツの工場がある
▽滋賀県が187社
▽大分県が89社
などとなっています。

帝国データバンクでは「取引先の企業は47都道府県すべてに広がっていて、出荷停止が長引けば、これらの企業の業績や雇用、地域経済への影響が懸念される」としています。

東南アジアでも影響広がる

ダイハツ工業は、東南アジアを中心に小型車の生産や販売を行っていますが、国の認証取得の不正問題で海外向けも含めてすべての車種の出荷の停止を決め、海外にも影響が広がっています。

ダイハツ工業は、東南アジアを中心に海外展開していて、このうち、
▽インドネシアでは、委託も含めた去年の自動車の生産台数は、国内最大の54万台となっています。
また、
▽マレーシアではダイハツ工業の出資する現地の自動車メーカーが国内販売で4割近いシェアを占めているほか、
▽タイではトヨタブランドで販売を行っています。

今回の問題を受けて、会社は日本国内だけでなく海外も含めたすべての車種について出荷を停止することを決めていて、各国の当局と対応を協議するとしています。

日本車を愛用しているという40代のタイ人の男性は「不正問題のニュースはとても驚きました。日本車の安全性はとても高いと考えていたので、それが突然崩れ去るような気がしました」と話していました。

2022年度の軽自動車 国内新車販売メーカー別シェア

ダイハツ工業は昨年度、2022年度の軽自動車の新車販売で国内トップのシェアとなっています。

全国軽自動車協会連合会によりますと、昨年度のメーカー別の軽自動車の新車販売台数は、
▽ダイハツが56万5000台余りでした。
全体に占めるシェアは33.4%で、メーカー別で首位となっています。

次いで、
▽スズキが51万5000台余りで、シェアは30.5%
▽ホンダが29万8000台余りで、17.6%
▽日産自動車が18万7000台余りで、11%
▽三菱自動車工業が4万4000台余りで、2.6%
などとなっています。

ただ、2023年度の上半期の軽自動車の販売では、
▽ダイハツは、部品メーカーの火災で生産が滞った影響などで、シェアは31.7%となり、
▽スズキが32.2%で首位となっています。

“短期間での開発がプレッシャーに” 第三者委員会

第三者委員会は、今回の不正の原因の1つに、ダイハツが強みとしてきた車両の短期間の開発が現場のプレッシャーにつながったと指摘し、2016年にトヨタ自動車の完全子会社になって以降、車両の短期間の開発を推し進めたとしています。

第三者委員会の調査報告書では、2011年に販売を開始した軽自動車の「ミライース」で、従来よりも大幅に開発期間を短縮したことが、大きな成功体験になったとしています。

そして、その後のプロジェクトで、さらなる短期間での開発が求められるようになり、これをきっかけに、不正の件数も増加したとしています。

2016年にトヨタ自動車の完全子会社になってからは、開発人員が不足する中でも、トヨタの海外事業の生産プロジェクトにも関与するようになり、車両の出荷先や生産国が増加していきました。

実際、新たに不正が見つかった64車種のうち、およそ3分の1にあたる22車種がトヨタ自動車のブランドで販売されていました。

第三者委員会は「トヨタグループの中で、ダイハツの強みを海外にも展開する『トヨタの遠心力』とも称される役割を期待されるようになり、ダイハツが、その期待に応えようと奮起したことも、短期間での開発がますます促進された背景の1つだ」と指摘しています。

また、トヨタ自動車の中嶋裕樹副社長も20日の記者会見で、「小型車を中心に海外展開車種を含むダイハツからのトヨタへの供給車が増えたことが、現場の負担を大きくした可能性があることを認識できていなかった」と話しています。

原因の1つに“経営陣のリスク感度の低さ” 第三者委員会

第三者委員会は、長年にわたって不正が行われた原因の1つに、社内の監査やチェック体制が機能せず、経営陣のリスクに対する感度が低かったことがあると指摘しています。

第三者委員会がまとめた調査報告書によりますと、少なくとも2013年以降は、衝突安全試験の認証申請に関わる業務は、安全性能の担当部署に委ねられ、認証申請書類の正確性をチェックする体制が無かったとしています。

その安全性能の担当部署では、2011年ごろから人員削減が行われたうえ、法規の理解が不十分なまま、目の前の業務をこなしていく状況が生じ、不正行為の自己正当化が進んでいたと思われると指摘しました。

その後、2021年からは、認証申請に関わる業務の社内での監査の仕組みが作られ、監査は、車両の開発などを行う「くるま開発本部」が担当することになりました。

しかし、認証の申請書類と部品データなどの合致の監査にとどまり、チェック体制の不備の発見や是正には至らなかったとしています。

さらに、「品質保証部」でも、認証業務に関する監査は特段行われておらず、「監査部」の内部監査でも、2018年度に認証業務について一度監査を実施したものの、「不正の余地はない」と結論づけていました。【現場の実情把握は】一方、第三者委員会の調査報告書では、開発期間の短縮のプレッシャーを受けるなど、現場の実情について管理職や経営幹部まで情報が吸い上げられるレポーティングラインが機能していなかったと指摘しています。

背景には、1人の管理職の担当する範囲が広く、極めて多忙なことから、現場の業務や実情を理解する余裕がないという声が、複数の社員などから得られたとしています。

そうした中、2019年から2020年にかけて、認証申請に関する複数の申請書類に不備が見つかった際、経営陣は、現場の実情が認証業務に影響を及ぼすリスクをある程度認識していたと思われるとしています。

松林淳会長と奥平総一郎社長、星加宏昌副社長は、再発防止策を検討する過程で、窮屈な開発日程から書類の不備が発生した状況を認識していたとしています。

しかし、この際にも、現場で何が起きているのか実態を把握するまでの対応は行われなかったとしています。

第三者委員会は、調査報告書で「組織内のゆがみや弊害について、常にアンテナを張り巡らせて敏感にリスクを察知する必要があったが、ダイハツの経営幹部のリスク感度は鈍かったと言わざるをえない」と結論づけています。

専門家 “トヨタが完全子会社の監視怠ってきた”

ダイハツ工業の国の認証取得の不正問題について、自動車産業に詳しい東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは「トヨタに対して優秀性を見せたいという思いが強いプレッシャーとなり、データの不正や操作が『慣れ』として容認されていたのではないかと想像する」と不正の背景について分析しました。

また、第三者委員会の報告書で指摘された「トヨタの遠心力」とも称される役割を期待されていたことについては、「大企業が世界で勝負する中で、拡大路線が続き、その過程で不正が見過ごされてきたということは、完全子会社としてのダイハツの監視をトヨタ自動車が怠ってきたと考えている」と述べて、トヨタとしての責任も指摘しました。

日商会頭 “取引先への影響ないよう 責任持ち対応すべき”

日本商工会議所の小林会頭は21日の記者会見で、ダイハツ工業で新たに見つかった不正について、「大手メーカーのコンプライアンスの問題が取引先に波及することはこれまでもあった。サプライチェーンのトップというのは、それなりの責任があるので、常に川下に目配りをしていないとだめだ」と述べ、取引先の中小企業などに影響が広がらないよう、責任を持って対応すべきだという考えを示しました。