「徴用」めぐる問題 韓国最高裁が日本企業側に賠償命じる判決

太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で、韓国人やその遺族が、三菱重工業や日本製鉄に損害賠償を求めていた裁判で、韓国の最高裁判所は上告を退けて、いずれも日本企業側に対し、賠償を支払うよう命じ、判決が確定することになりました。

太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題では、韓国人女性やその遺族合わせて4人が、名古屋にあった軍需工場で「女子勤労てい身隊」として働かされたとして、三菱重工業に損害賠償を求めていたほか、別の原告団は、福岡県や岩手県にあった日本製鉄の前身の製鉄所で過酷な労働を強いられたとして、日本製鉄に損害賠償を求めていました。

いずれの裁判も、1審と2審は、原告側の主張を認めて賠償を支払うよう命じ、日本企業側が上告していました。

21日、韓国の最高裁判所は「原告側の個人の請求権は、1965年の日韓請求権協定の範囲に含まれないとする1審の判決に誤りはない」などとして、いずれも日本企業側の上告を退け、三菱重工業と日本製鉄に対し、賠償を支払うよう命じ、判決が確定することになりました。

「徴用」をめぐる問題で、韓国の最高裁が判決を出すのは、5年前の2018年に日本企業側に賠償を命じる判決を相次いで言い渡して以来です。

韓国政府は、ことし3月、最高裁から賠償を命じられた日本企業に代わって、韓国政府傘下の財団が、当時判決が確定していた原告などに支払いを行うほか、係争中の裁判でも原告の勝訴が確定した場合は、同様に支払うとする解決策を発表しています。

一方で、そうした支払いを拒否する原告などを対象に、財団は支払金額を裁判所に供託する手続きを行いましたが、裁判所は受理しない判断を相次いで示しています。

韓国外務省「きょう判決受けた原告にも財団が支払う方針」

判決について、韓国外務省の報道官は記者会見で、韓国の最高裁から賠償を命じられた日本企業に代わって、政府傘下の財団が原告などに支払いを行うとする、ことし3月に示した解決策に触れ、「きょう判決を受けた原告にも財団が支払いを行う方針だ。原告など一人一人に直接会い、理解を求める努力を続けていく」と述べました。

また、判決が確定する原告が増えたことで、支払いに充てる財源の拡充をどうするのかと記者団から問われたのに対し、報道官は、「民間からの自発的な寄付などを含めて、必要な財源を拡充できる方策を検討していく」と述べました。

林官房長官「極めて遺憾 韓国側に抗議」

林官房長官は午前の記者会見で「判決は日韓請求権協定の第2条に明らかに反し、極めて遺憾で断じて受けられず、韓国側に抗議を行った。一方で韓国政府は、原告勝訴が確定する場合の判決金、および遅延利息について、韓国の財団が支給をする予定である旨をすでに表明しており、それに沿って対応していくものと考えている」と述べました。

また、一部の原告が反対を続けていることで、日本企業の韓国国内の資産の「現金化」のリスクが残っていることへの認識を問われ「韓国政府は今後も、原告の理解を得るべく、最大限、努力を続けていくと承知している」と述べました。

三菱重工業「日韓請求権協定に反する一連の判決 極めて遺憾」

これについて三菱重工業は「日韓両国間およびその国民の間の請求権に関する問題は、日韓請求権協定により『完全かつ最終的に解決』され、いかなる主張もできなくなったと理解している。これに反する一連の判決および手続きは極めて遺憾だ」とコメントしています。

日本製鉄「判決は日韓請求権協定に反するもの 極めて遺憾」

また日本製鉄は「いわゆる韓国人元『徴用工』の問題は1965年の日韓請求権協定によって解決済みと認識しており、今回の判決は日韓請求権協定に反するもので極めて遺憾だ」とコメントしています。