米議会 ウクライナ支援継続の緊急予算 年内の承認を断念

アメリカ政府がウクライナへの軍事支援の予算が年内に枯渇するとの見通しを示す中、アメリカ議会は支援の継続に必要な緊急予算について与野党の協議がまとまらず、年内の承認を断念しました。

ウクライナ支援をめぐってはアメリカ議会で野党・共和党から継続に消極的な意見が出ていることなどから、新たな支援のための緊急予算の審議が滞っています。

こうした中、民主・共和両党の議会上院トップは19日、緊急予算について「上院として新年早々に迅速な行動をとれることを望んでいる」とする共同声明を発表し、年内に承認することを断念する考えを明らかにしました。

共和党は緊急予算の承認には党が重視するメキシコとの国境管理の強化を進めることが条件になると主張し、与野党が協議を続けていますが合意に至っていません。

アメリカ政府の高官は年内にあと1回、ウクライナへの追加の軍事支援を行うものの、緊急予算が承認されなければ、その後の支援は行えなくなると危機感を示しています。

緊急予算の承認が年明けに持ち越されることが確実となり、ウクライナの戦況の鍵を握るアメリカの支援の先行きに不透明感が増しています。

NATO米大使「支援継続を確信」

アメリカ議会でウクライナ支援を含む緊急予算が決まらないなか、NATO=北大西洋条約機構の本部に駐在するアメリカのスミスNATO大使は20日、オンラインでのNHKのインタビューに応じ「議会の承認手続きは複雑で時間がかかるものだ。ただ、表には出ていない関係者のやりとりから、最終的に緊急予算は承認され、アメリカはウクライナ支援を主導し続けることができると確信している」と強調しました。

今後の具体的な支援については「ウクライナはいま2つの焦点があるとしている。1つは追加の防空システムで、もう1つは弾薬の確保だ。支援する各国も、防空システムと弾薬がウクライナに渡るよう取り組んでいる」と述べました。

また、当面は冬場の戦闘を乗り切るための支援に注力する考えを示したうえで、その先の支援をめぐっては「来年春のウクライナ軍による反転攻勢については、もう少し時間をおいて、ウクライナがどう進めようとしているか、戦略に応じたどのようなニーズがあるか話を聞く必要がある」と述べるにとどめました。