【詳細】日銀 植田総裁会見 チャレンジング意味は? 緩和は維持

日銀は、19日まで開いた金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策を維持することを決めました。市場では、日銀が早期に金融政策の正常化に向けて動くのではないかという観測も出ていましたが、いまの金融緩和策を粘り強く続ける必要があると判断しました。

午後3時半から行われた植田総裁の会見の様子を詳しくお伝えします。

今後の物価の見通しは…

植田総裁は、今後の物価の見通しについて「基調的な物価上昇率が2025年度にかけて物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくという見通しが実現する確度は、引き続き少しずつ高まってきているとは思いますが、先行き賃金と物価の好循環が強まっていくかなお見極めていく必要があると判断している」と述べました。

チャレンジングの意味は…

植田総裁は、今月7日に国会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言した意図を問われたのに対して、「国会でのやり取りとしては今後の仕事の取り組み一般について問われたので2年目にかかるところなので一段と気を引き締めてというつもりで発言した。金融政策については同じ委員とのやりとりの中で粘り強く金融緩和を継続すると述べたところだ」と述べ、早期の金融政策の修正を意図した発言ではないことを明らかにしました。

「賃金と物価の好循環 確認することが重要」

植田総裁は、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現を見通す上で必要なことについて「賃金と物価の好循環が強まっていくか、確認することが重要だ」と述べました。

そのうえで「物価から賃金への波及の面では、例えば、労使交渉を含めた賃金の動向、その前提となる労働需給や、企業収益動向などを確認していく。賃金から物価への波及の面では、企業の価格設定スタンスや、さまざまな物価指数の動向、特にサービス価格の動向を見ていきたい。いずれの側面についても、データだけではなく、ヒアリング情報を含め、丹念に点検していくつもりだ」と述べました。

物価目標の実現に向けた確度「少し上がってきている」

植田総裁は物価目標の実現に向けた確度について問われると「感覚的なものでしかないが、確度は少し上がってきているが、もう少しデータやさまざまなみたいというところだ」と述べました。

そのうえで、今後見ていくデータについて「基本的には、賃金のこれからの動き、あるいはこれまでの賃金の動き、あるいは今後の賃金の動きの価格への波及になるかと思う。それぞれについてデータや情報が連続的に入ってくるもので、どこまで見れば十分だ、どこまで見ないと不十分だということはなかなか前もっては言いにくいと思う」と述べました。

「焦って政策変更は不適切」

植田総裁は、海外の経済や金融政策が与える影響について聞かれると「仮にFRB=連邦準備制度理事会が利下げ局面に入ると、その局面に入るに至った理由も含めて、いろいろな影響は日本経済にあるかと思う。為替レートの変化もあるかもしれないし、さらに、経済自体がインフレ率が低下するというソフトランディング的な動きを示している、ということもあるかと思う」と述べました。

そのうえで「日本経済あるいは物価にどういう影響を与えるかということを考慮しつつ、私どもの金融政策を決定していく。例えば『3か月後、6か月後にFEDが動きそうだから、その前に焦って、私どもの政策変更をしておく』そのような考え方は不適切だ」と述べました。

「サプライズは必ずしも避けられない」

植田総裁は、消費の動向について「緩やかな回復傾向が続いていると判断している。今後については消費が弱いと賃金がという因果関係もあるかもしれないがもう1つの因果関係として来春の賃金が強く出てくればそれがその後の消費を支えていくという因果関係もあると思いますし、その辺を見極めていきたい」と述べました。

また政策修正に向けたコミュニケーションについては「政策変更や政策修正は毎回の決定会合で議論して判断するものだ。次の決定会合までに新しい情報がたくさん入ってくれば、それは次の決定会合で政策修正はありえるということだし、それは前の会合では予想できなかったということになりがちなので、サプライズは必ずしも避けられないということに一般論としてはなる。ただし、新しい情報をどう使って政策判断をしていくのか基本的な考え方については常日頃からできる範囲で丁寧に説明しようと努めているつもりで、それで皆さんにはある程度予想できると思う」と述べました。

「出口の対応について示すことが現在は困難」

植田総裁は出口戦略についての議論の深まりを感じるかを問われると「当然のことながらこういう状態になったらどこをどういうふうに変えていくか政策について常日頃からいろいろ考えている。ただ、先行きの不確実性がまだ極めて高い状況で、物価目標の持続的安定的な達成が必ずしも見通せない状況なので、出口でどういう対応をしていくかということについて確度の高い、こういう姿になるというものを示すことが現在は困難であるということかと思う。そこが見通せる状況になれば適宜、発信していきたいと思う」と述べました。

出口戦略について「確固たることは申し上げられない」

植田総裁は、金融政策の出口戦略について「出口がどういう順序でどういうスピードで修正していくか、ということについて、現状まだ具体的にこうであるという発信が出来る状態にないため、確固たることは申し上げられない」と述べました。

「実質賃金低下が必ずしも正常化の障害にはならない」

植田総裁は賃金の上昇率が物価の上昇率に追いつかなくてもマイナス金利を解除する可能性があるのかどうかを問われると「足元の実質賃金が前年比マイナスであっても、先行きを見た場合に賃金上昇が続く、そして、消費者物価総合のインフレ率が低下を続けるということで実質賃金が好転する見通しが立つのであれば、足元の実質賃金の低下が必ずしも正常化の障害にはならないと思う」と述べました。

利上げ予告について「いきなり言う可能性はあまりない」

植田総裁は、1月の金融政策決定会合に向けては「新しい情報次第だ」としたうえで「新しいデータはある程度入ってくるが、それほど多くないと思う。ただ、支店長会議もあり、地方を含めたさまざまな情報を吸い上げることも出来る。そうした結果や、ここまでのデータを1月にかけて、新しい見通しとして整理し、それを含めて判断する」と述べました。

また、利上げをする際に予告をするのかどうかについて問われ「データや情報をどういうふうに活用するかという、私どもの考え方を繰り返し説明していく。それに、今後の展開に応じて付け加えられるような、『こういう見方もある』ということが出てくれば、適宜、追加的に情報発信をしていきたい。『来月上げますよ』といきなり言う可能性はあまりないと思っている」と述べました。

ETFの今後の処分方針「まだ決めかねている」

植田総裁は日銀が大量に保有するETF=上場投資信託の今後の処分方針について問われると「今方針としてこれはできればこういうふうにしたいと思っているのは、抽象的なところになるが適正な対価で処分すること、それから日銀の損失、それから市場のかく乱、これは極力避けるいう方法を選びたいということではある。ただ、その上で具体的にそういう基本線にのっとってどういうオプションが適当かということについてはまだ決めかねている。適切なタイミングがきたら。公表していきたい」と述べました。

会見は午後4時半に終了

日銀の植田総裁の記者会見は午後4時半に終了しました。

今後の焦点は

日銀の金融政策、今後の焦点は、来年の春闘に向けて賃上げの流れが継続するかどうかという点です。そして、賃金の上昇を伴った2%の物価安定目標が実現できる見通しが立ったと判断すれば、いよいよマイナス金利政策の解除など金融政策の正常化を検討することになります。この判断のタイミングがいつになるのか市場は大きな関心を寄せています。

日銀 金融政策決定会合 大規模な金融緩和策を維持

日銀は、19日までの2日間、金融政策を決める会合を開き
▽短期金利をマイナス0.1%
▽長期金利をゼロ%程度とする大規模な金融緩和策の枠組みを維持しました。

その上で長期金利が1%を超えても一定水準までは金利の上昇を容認するという方針を継続します。

消費者物価指数の上昇率は、ことし10月まで19か月連続で日銀が目標とする2%を上回っていますが、日銀は賃金の上昇を伴う形での物価安定目標の達成にはなお至っていないとして、目標の実現に向けて今の金融緩和策を粘り強く続ける必要があると判断しました。

日銀の植田総裁は今月7日に国会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになると思っている」と発言し、これを受けて日銀が早期に金融政策の正常化に向けて動くのではないかという観測から外国為替市場で円高ドル安が進みました。

このあと行われる記者会見で今後の金融政策の方向性や緩和からの出口について植田総裁から踏み込んだ発言があるのか市場が注目しています。

林官房長官「適切に金融政策運営が行われることを期待」

林官房長官は午後の記者会見で「引き続き政府と密接に連携を図り、経済や物価、金融情勢も踏まえ、賃金上昇を伴う形での物価安定目標の持続的で安定的な実現に向けて適切に金融政策運営が行われることを期待している」と述べました。

大規模な金融緩和策の維持 円相場は一時144円台まで値下がり

19日の東京外国為替市場は、日銀が大規模な金融緩和策の維持を決めたことを背景に、円安ドル高が進み、円相場は一時、144円台まで値下がりしました。

日銀が19日までに開いた金融政策を決める会合で大規模な金融緩和策を維持することを決めたことで市場では、日米の金利差が縮小傾向にあるという観測が後退しました。

このため円を売ってドルを買う動きが出て、19日の東京外国為替市場、円相場は決定の前より1円ほど円安ドル高の1ドル=143円台後半まで値下がりしました。

また、日銀の植田総裁が記者会見で、今月7日に国会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになると思っている」と発言したことについて、早期の金融政策の修正を意図したものではないことを明らかにしたことなどから、円相場はさらに円安が進み、一時、1ドル=144円台前半まで値下がりしました。

市場関係者は「市場では日銀が早期に金融政策の修正を行うのではないかという観測が根強いが、きょうの記者会見で植田総裁から踏み込んだ発言がないという受け止めから円安が進んでいる」と話しています。