子どもの感染症流行で病児保育ひっ迫 学校はオンライン活用も

インフルエンザをはじめとした感染症が子どもの間で流行している影響で、子どもの保育サービスを行うNPO法人では依頼が殺到し、十分に対応できない状態になっています。学校では学級閉鎖が相次ぐなか、休み中もオンラインで復習の時間を設けるなどして学びの定着をはかっているところもあります。

感染急増で病児保育ひっ迫

首都圏で病気になった子どもの保育サービスを行うNPO法人には依頼が殺到し、予約を受け付けても十分に対応できない状態になっています。

東京・千代田区に本部を置くNPO法人は、会員の自宅に保育スタッフを派遣し、発熱や病気で学校に行けない子どもの看病を仕事などで面倒を見られない保護者に代わって行うサービスを展開しています。

利用の予約は半年前ごろから多い状態が続き、特に今月に入ってからはインフルエンザやかぜの子どもの保護者からの依頼が殺到しているということです。

このため現在、予約を受け付けても実際に保育スタッフを派遣できるのは7割から9割程度が限界だということです。

NPO法人は、平成17年からサービスを始め、これまではほぼすべての依頼に応じることができたということですが、半年近くにわたり想定を超える予約が寄せられ、依頼に十分に対応できない状態が続くのは初めてだということです。

NPO法人では、保育スタッフの採用や育成の計画を前倒しして対応しているということです。

NPO法人「フローレンス」病児保育事業部の三枝美穂マネージャーは「ここまで予約が殺到する状況はいまだかつてありませんでした。保育スタッフがフル稼働している状況で、疲れが見えてきています。とにかく、いったん収まってほしいです」と話しています。

オンライン授業を活用する学校も

東京・葛飾区の区立宝木塚小学校は1年生から6年生まであわせて13クラスあり、児童数はおよそ430人です。

学校などによりますと、10月に6年生の1クラスが最初に学級閉鎖になったあと学年やクラスを変えながら断続的に続いていて、これまでに11クラスが学級閉鎖になったということです。

今週は、4年生の1クラスでおよそ3分の1の児童がインフルエンザになったため2日間学級閉鎖になり、児童が楽しみにしていた理科の時間のプラネタリウムへの課外活動も延期になりました。

このクラスでは休み中もタブレット端末を使ったオンラインの授業が行われ、希望した児童10人余りが参加しました。

参加できない子どももいることから新しい単元に進まず復習の時間に当てられ、担任の教員が健康観察をしたあと、黒板を映すなどしながら算数の問題の解き方などを確認していました。

担任の西村幸輔先生は「進度的にたくさんの内容があるわけではないが、算数は1番難しいところにさしかかっていて2日間授業がないだけでも、子どもたちにとって大変なのかなとは思う。タブレットがあることで休みでも子どもたちの様子が見られるのは便利です」と話していました。

この学校ではピークだった11月下旬にはおよそ80人の児童がインフルエンザの影響で欠席していた時期があるということです。

小高和子校長は「欠席者が増えると、行事や学習の遅れなどが出るおそれがあるのできめ細かく対応していきたい」と話していました。

インフルエンザ コロナ前と比べて“およそ3.5倍”

国立感染症研究所などによりますと、今月10日までの1週間に全国およそ5000か所の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は16万6690人で、1医療機関当たりでは33.72人となりました。

新型コロナウイルスの感染が拡大する前の2019年のほぼ同じ時期では、患者数は4万7200人、1医療機関当たりでは9.52人で、今回発表された数はおよそ3.5倍となっています。

都道府県別でも、今月10日までの1週間で「警報レベル」とされる30人を超えたのは、33の道と県でしたが、新型コロナの感染拡大前の2019年のほぼ同じ時期では「警報レベル」を超えている都道府県はありませんでした。

専門家 “対策を重ね感染の可能性を下げて”

子どもを中心にインフルエンザの流行が続いていることについて川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は「インフルエンザについては去年までのコロナ禍では感染者が少なく今の時期は免疫をもっている人が少ないことが流行の要因の1つと考えられる」と話しています。

その上で「人との接触機会を減らすことが望ましいが、現状では難しいと思う。▽人が密集するような場所ではマスクをつける、▽手指消毒をする、▽可能な人はワクチンを打つなどさまざまな対策を重ねて感染の可能性を下げることが妥当だ」と指摘しています。

また、感染症になってしまった場合については「まずは自宅で少し様子を見てほしい。高熱やせきが続く、脱水など症状が重くなる傾向があればためらわずに医療機関を受診してほしい」と話しています。