COP28閉幕 焦点の化石燃料「脱却を進める」で合意

UAE=アラブ首長国連邦で開かれていた気候変動対策の国連の会議、COP28は13日、閉幕し、焦点となっていた化石燃料について「脱却を進める」ことで合意しました。化石燃料をめぐる今後の各国の政策が問われることになります。

先月30日に開幕したCOP28では、初日に、気候変動による被害「損失と損害」に特化する新たな基金の運用に向けた具体的なルールが決まったほか、世界全体の気候変動対策の進捗を評価する「グローバル・ストックテイク」が初めて行われました。

対策強化に向けた交渉では、化石燃料が最大の焦点となり、欧米の先進国や島しょ国などが「段階的な廃止」を強く求めたのに対し、産油国などが反対し協議が難航していました。

会期を一日延長して、各国が13日に採択した合意文書では「段階的な廃止」には言及せず「化石燃料からの脱却を進め、この重要な10年間で行動を加速させる」としています。

化石燃料をめぐっては2021年の会議で排出削減対策がとられていない石炭火力発電所の段階的な削減で合意していましたが、今回の会議では、石炭をはじめ石油や天然ガスといったすべての化石燃料を対象に脱却を進めていくことになりました。

国連の気候変動枠組み条約のスティル事務局長は記者会見で「化石燃料の時代に終止符を打つことはできなかったが、合意は化石燃料の終わりの始まりになる」と述べて成果を強調しました。

一方で南米コロンビアのムハマッド環境・持続可能開発相は「私たちは前進したが、結果を台なしにする落とし穴がいくつもある」と指摘し、脱却を進めるためには石炭などに依存する途上国への支援が欠かせないとしています。

各国は今回の合意文書を受けて遅くとも2025年までに新たな削減目標を提出することになっていて、今後の政策が問われることになります。

各国で合意した内容は

まず、産業革命前からの世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えるためには、温室効果ガスの排出量を2019年と比べ、2030年までに43%、2035年までに60%、削減する必要があるとしています。

そのうえで温室効果ガスの排出につながる石炭や石油、天然ガスといった化石燃料について「化石燃料からの脱却を進め、この重要な10年間で行動を加速させる」としています。

また、2030年までに世界全体の再生可能エネルギーの発電容量を3倍にし、エネルギー効率の改善率を世界平均で2倍にすることや、排出削減対策がとられていない石炭火力発電の段階的な削減に向けた努力を加速することでも合意しました。

さらに、効率的でない化石燃料に対する補助金について、段階的な廃止をできるだけ早く行うとしています。

このほか気候変動による被害「損失と損害」に特化する新たな基金については、特にぜい弱な途上国を対象にするなど運用に向けた具体的なルールで合意しました。

基金にはこれまでに合わせて7億9200万ドル、日本円にして1150億円余りの拠出が表明されたとしています。

一方で、先進国が途上国の温暖化対策を支援するため約束した年間1000億ドルの資金支援が2021年の時点で達成されていないとして深い懸念を示し、先進国に対し目標達成に向けた努力を一層強化するよう求めています。

伊藤環境相の演説「対策に向けて行動する」

COP28で合意文書が採択されたあとの各国の代表による演説で、伊藤環境大臣は「気候危機は国境や地域を問わず、すべての国を襲っている。今、対策に向けて行動するとともに、次に各国が策定する温室効果ガス削減の目標でも、今回の『グローバル・ストックテイク』の成果を反映した排出削減を実現しなければならず、日本は最大限の支援する」と述べました。

COP28ですべての日程を終えた伊藤環境大臣は報道陣の取材に応じ、化石燃料からの脱却を進めるとした合意内容について、日本政府としては「脱却」を「移行」と表現するとしたうえで、「化石燃料からの移行に言及する文書が合意されたことは、大変重要だと認識している。わが国としては、化石燃料を中心とする産業や社会構造をクリーンエネルギー中心への転換に取り組んでいることからわが国の方針と整合していると考えている」と話していました。

専門家「合意は大変歴史的だ」

気候変動問題の国際交渉に詳しい東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授は今回の合意について、「これまでの長い気候変動交渉の歴史の中で初めて、産油国であるUAEの議長のもとで、化石燃料からの脱却が今後の気候変動対策の方向性として合意されたのは、大変歴史的だ。『廃止』ということばは使ってはいないが、化石燃料からの脱却を加速し、最終的にはゼロに近づけていく方向性を示す文言だと評価できる」と述べました。

そして、「気候変動の影響を日本でも世界でも感じ始め、さらに将来大きな影響やリスクが生じ得ることを科学が示している。その意味では、気候変動対策をさらに強化して、加速をしていく、非常に重要な合意だった」と評価しています。