「ワカヤマソウリュウ」と命名 化石がモササウルス新種と判明

和歌山県内で見つかった化石が、恐竜とともに白亜紀に繁栄し、「海の王者」として君臨した大型のは虫類「モササウルス」の新種とわかり、「ワカヤマソウリュウ」と名付けられました。

これはアメリカのシンシナティ大学の小西卓哉 准教授などの研究グループが、今月、イギリスの古生物学の専門誌に発表しました。

モササウルスは恐竜とともに繁栄し、白亜紀後期に海の生態系の頂点に君臨したことで、「海の王者」とも呼ばれる大型のは虫類です。

グループは和歌山県有田川町にあるおよそ7200万年前の地層から17年前に発見された、全長6メートルのモササウルスの骨格の化石について、詳しく調査しました。

その結果、
▼前脚のひれが大きく発達していることや、
▼背骨の形からイルカのような背びれがあった可能性があることなど、
これまで発見されているモササウルスの化石にはない特徴がみられ、新種と判断しました。

モササウルスは日本では「ソウリュウ」と呼ばれていて、研究グループは新種の学名を発見場所にちなんで、「メガプテリギウス・ワカヤマエンシス」、通称「ワカヤマソウリュウ」と名付けました。

定説を覆す? 新種の特徴は

「ワカヤマソウリュウ」の化石を発見したのは、当時、京都大学大学院で古代生物の研究をしていた、和歌山県出身の御前明洋さんです。

はじめに見つかったのは後ろ脚の骨などの化石で、その後、和歌山県立自然博物館とともに発掘調査が続けられ、平成28年にほぼ全身の骨格が残っていることがわかりました。

シンシナティ大学の小西卓哉 准教授など研究グループは、世界各地で見つかっているおよそ80種類のモササウルスの化石と比較した結果、今回の新種がこれまでの学説を覆すユニークな特徴を持っているとしています。

例えば、泳ぎ方について、これまで発見されたものはサメのように尾びれを左右に振って泳いでいたと考えられていますが、「ワカヤマソウリュウ」は前脚のひれや背中の骨が大きく発達していてウミガメのように前脚で水をかいて泳いでいたとみられています。

また、背中の骨が一部分だけ前方に傾いている特徴的な形をしていて、イルカのような背びれをもっていた可能性があるということです。

モササウルスの新種の発見は国内では5例目です。

小西准教授は「モササウルスが多様な進化を遂げていたことを示す貴重な資料だ。今回の発見をきっかけにモササウルスの研究がさらに進むことを期待したい」と話していました。

「小学生の頃から化石掘っていた山 感慨深い」

現在は北九州市立自然史・歴史博物館の学芸員をしている御前さんは、「発掘した場所は小学生の頃から化石を掘っていた山でした。新種とわかり、ふるさと和歌山の名が付けられたことはとても感慨深いです」と話していました。

和歌山の人から喜びの声“名前も化石の形もかっこいい”

有田川町で見つかっていたモササウルスの骨格の化石が新種と判明し、「ワカヤマソウリュウ」と名付けられたことについて、和歌山の人たちからは喜びの声が聞かれました。

60代の女性は「『ワカヤマソウリュウ』という名前も、化石の形や想像図もかっこいいです。有田川町はみかんのイメージが強いですが、化石が出るというイメージも加わって、地域全体が盛り上がるとうれしいです」と話していました。

70代の男性は「和歌山で新種の化石が出たとわかったことで、観光客も増えて、経済効果が出たらいいなと思います」と話していました。

和歌山県立自然博物館は、来年度以降に展示会を開くなどして、「ワカヤマソウリュウ」の化石を見てもらう機会を作りたいとしています。