【12日詳細】ケレム・シャローム検問所で支援物資の検査開始

イスラエル軍は、この1か月間にガザ地区でイスラム組織ハマスの戦闘員など500人以上を拘束したと主張し、攻勢を強めています。
一方、ガザ地区へ運び込む人道支援物資の安全検査についてイスラエル側との境界にある検問所でも行うと発表し、人道状況の改善につながるかが注目されます

イスラエルやパレスチナに関する日本時間12月12日の動きを、随時更新してお伝えします。

シャローム検問所 支援物資の安全検査を開始

イスラエル国防省の調整組織は、日本時間の12日午後8時すぎに行ったSNSへの投稿で、ケレム・シャローム検問所でガザ地区に搬入する支援物資の安全検査を開始したことを明らかにしました。

投稿では、1台のトラックが通過する映像とともに、「12日、人道支援物資を載せたトラックの第一陣が、ケレム・シャローム検問所での検査を終えてラファ検問所に向かっている。ガザ地区に届けられる支援物資の量を増やす上で重要な一歩になる」としています。

タンカーの運航会社 “行き先はイスラエルでなくイタリア”

イエメン沖を航行していたタンカーが巡航ミサイルとみられるもので攻撃され、フーシ派が関与を認めた事件で、タンカーを運航していたノルウェーの海運会社の幹部は地元の公共放送NRKに、船の行き先はイスラエルではなくイタリアだったと説明しました。

その上で「船はイエメン沖でミサイルを被弾し、火災が起きた。現在は支援を受けながら安全な場所に向かっている」と述べています。

また、国連の専門機関、IMO=国際海事機関は12日、声明を発表し「航海の商船に対する最近の報告は極めて憂慮すべきもので、容認できない。商業海運は地政学的紛争に決して巻き込まれてはならず、商業海運に対するあらゆる攻撃は、航行の自由を保護する法律を含む国際海事法に違反する。船舶、貨物、それに船員は常に保護されなければならない」として、安全な航行の確保に向けて取り組むよう加盟国に呼びかけました。

“ハマスや「イスラム聖戦」の戦闘員500人以上拘束”

イスラエル軍の報道官は11日夜、この1か月間、ガザ地区でハマスやハマスと連帯関係にある武装組織「イスラム聖戦」の戦闘員500人以上を拘束したと主張しました。

ガラント国防相は11日、テレビを通じて演説し「テロリストたちよ、投降せよ。投降すれば命は助かる。さもなければ運命は避けられない」と述べ、ハマスの戦闘員らに投降を迫りました。イスラエルとしては戦闘が長期化するなか、ハマスに対して揺さぶりをかけるとともに、自国民に向けて戦闘を優位に進めているとアピールする思惑があるとみられます。

ラファ 空爆で13人死亡か

イスラエル軍がガザ地区南部のハンユニス周辺の住民などに退避先として通告している南部のラファでも激しい空爆が続いています。NHKガザ事務所のサラーム・アブタホンカメラマンが南部ラファで撮影した映像では、12日早朝に行われた空爆で住宅があとかたもなく破壊され、地面にも大きな穴があいている様子が写っています。

現場では機械が足りないため、住民たちが手作業でがれきを片づけていたほか、がれきのなかから本を探している女の子の姿などもみられました。現場にいる人の話ではこの空爆で少なくとも13人が死亡したということです。

近くに住む男性は「イスラエル軍が出している地図によると、このエリアは安全なはずですがこれが彼らの言う『安全』です。犠牲者のほとんどは女性と子どもで、周囲500メートルほどに被害が出ました。イスラエルの軍事作戦の目的は女性と子どもを標的にすることです」と訴えていました。

検問所追加にラファの人は

イスラエル軍は、ガザ地区に搬入する人道支援物資の安全検査を行う場所について、ケレム・シャローム検問所でも実施し2か所にすると発表したことについて、ガザ地区南部ラファで現地の人に聞きました。

ラファ市内に住む男性は「子どもたちのミルクや井戸水をくみ上げる発電機の燃料などを補給するために、ケレム・シャローム検問所が開かれなければいけない。イスラエルには期待していないが、ガザの人々が苦しい状況にあるのだから、アメリカや国際社会はそのために圧力をかけるべきです」と話し、安全検査にとどまらず、物資を搬入する場所としてケレム・シャローム検問所が開かれるべきだと訴えました。

また、同じラファ市内に住む女性は「支援物資がガザに入るのは歓迎すべきことです。ただ、その物資が国連などから届いているのなら、なぜイスラエルが管理する必要があるのでしょうか」と話していました。

別の男性は「必要なのは完全な停戦で、検問所のことなど私にとって二の次です。少なくとも1日500台のトラックが物資を搬入することが必要だと思う。ガザ地区では多くの人が避難所生活を送っていて、人道状況はとにかく悲惨です」と訴えていました。

イスラエル側 “検問所 国連がもっとうまくやるべき”

ケレム・シャローム検問所について、11日、イスラエル側は「支援物資の『安全検査』を行うためにケレム・シャローム検問所を開けることを決めた。検査量を2倍にできる」と発表しました。

イスラエル軍は検査する量を増やすことで、運び込む支援物資を倍増させることができるはずだと主張しています。ただ検査後のトラックはエジプトとの境界線沿いを3キロほど走って、引き続き支援物資の唯一の搬入口であるラファ検問所を通らなければなりません。

ガザ地区に入る物資などを管理するイスラエル国防省の調整組織は11日のSNSへの投稿で、渋滞するトラックの写真とともに「ケレム・シャローム検問所が開き、検査の量は倍になる。しかし、支援物資はラファの入り口で待たされ続けている。国連がもっとうまくやるべきだ」と注文をつけました。

イエメンの反政府勢力フーシ派 「タンカーに軍事作戦行った」

イスラエルと敵対する中東イエメンの反政府勢力フーシ派は12日、SNSで「ノルウェーのタンカーに対する軍事作戦を行った」などと声明を発表しました。イエメン沖では、日本時間の12日早朝、航行中のタンカーがフーシ派の支配地域から発射された巡航ミサイルとみられるもので攻撃を受けたとアメリカ軍が発表していました。

声明でフーシ派は「今後も、ガザ地区に支援物資が入らない限り、イスラエルの港に向かうすべての船の航行を阻止する」としています。フーシ派は今月3日にも、イスラエルの船舶2隻に対する攻撃を行ったと主張していて、周辺海域での緊張が高まっています。

イエメン沖航行のタンカー 巡航ミサイルの攻撃受ける

アメリカ中央軍は、中東のイエメン沖を航行していたタンカーが、イエメンの反政府勢力、フーシ派の支配地域から発射された巡航ミサイルとみられるもので攻撃を受けたと発表しました。

発表によりますと、攻撃があったのは、日本時間の12日午前6時ごろでこれまでのところ人的な被害は、確認されていないとしています。

ロイター通信などによりますと、被害を受けたとされるタンカーは、ノルウェー船籍でスエズ運河方面に向かって北上していたということです。

フーシ派は今回の攻撃への関与についていまのところ明らかにしていませんが、12月9日には、「イスラエルの港に向かう船舶はどの国の船であっても航行を阻止する」などとする声明を発表していました。

国連安保理の理事国大使ら ラファ検問所など視察

ガザ地区での人道状況が悪化の一途をたどる中、国連安全保障理事会の理事国の大使らがエジプトを訪れガザ地区との境界にあり人道支援物資の搬入が行われているラファ検問所などを視察しました。視察はエジプトとUAEの調整で実現したということで、日本からも志野国連次席大使が参加しました。

一行は、はじめにエジプトのアリーシュでUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関からガザ地区での状況について説明を受けました。UNRWAのラザリーニ事務局長は「ガザ地区では飢餓が蔓延している。何日も食事をしていない人々が増えている。すべてが不足している」などと述べ、支援強化を強く求めました。

続いて、一行はガザ地区への人道支援物資の搬入が行われているラファ検問所を訪れて多くのトラックが列をつくっている現場などを視察しました。国連の安保理では8日、人道目的の即時停戦を求める決議案が、アメリカによる拒否権の行使で否決されていて、エジプト政府は今回の視察について「残念ながら安保理がガザ地区での停戦を決定できなかった非常に重要な時期に行われた」としています。

ラファ検問所で取材に応じたロシアのネベンジャ国連大使は「一刻も早い人道的な停戦しかない」と述べたほか、中国の張軍国連大使は「平和と安全を守るのが安保理の責任だ。安保理はもっと努力する必要がある」と述べ、名指しを避けながらも拒否権を行使したアメリカに圧力をかけたかたちです。

バイデン大統領 “イスラエルがハマス排除まで支援も慎重に”

アメリカのバイデン大統領は11日、ホワイトハウスでユダヤ教の伝統的な祭り、「ハヌカ」を祝う式典を行い、招待したユダヤ系の人などを前に演説しました。

この中でバイデン大統領はイスラム組織ハマスとの戦闘を続けるイスラエルへの連帯を改めて示した上で「われわれはイスラエルがハマスを排除するまで軍事支援を提供し続ける」と強調しました。

ただ、バイデン大統領は「私たちとイスラエルは慎重でなければならない。世界の世論は一夜にして変わる可能性がありそうさせてはならない」と述べて、ガザ地区で民間人の犠牲者が増え続けていることを念頭に、軍事作戦の進め方については慎重であるべきだという考えを示しました。

イスラエル軍がガザ地区で空爆と地上部隊による激しい攻撃を続ける中、軍事面で支えるアメリカに対する批判も国内外で高まっていて、バイデン政権は民間人を保護するための対応をとるようイスラエルへの働きかけを強めています。

“イスラエル軍 米供与の「白リン弾」使用” 米有力紙

アメリカの有力紙ワシントン・ポストは11日、イスラエル軍がことし10月に隣国レバノンを攻撃した際、アメリカから供与された「白リン弾」を使用していたことを、砲弾の残骸に記されていた情報から確認したと伝えました。

砲弾の残骸が見つかったのはレバノン南部の町で、イスラム教シーア派組織ヒズボラが拠点としていることからイスラエルが空爆を続けていて、アメリカが供与した「白リン弾」による攻撃で少なくとも民間人9人がけがをしたということです。

「白リン弾」は、国際法で使用が禁止されている兵器には指定されていませんが、着弾したときに飛び散る高温の白リンによって大やけどを負わせることなどから非人道的だとして、国際的な人権団体が非難しています。

ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は11日、記者団に対し「白リン弾を照明や煙幕として使う場合は正当だ」とした上で、「供与した相手には当然、ルールを守ってもらいたいと考えている」と述べ、詳細を調査する考えを明らかにしました。

ロンドン 英政府に停戦支持求めデモ

イギリスの首都ロンドンで、11日、パレスチナのガザ地区での停戦を支持するようイギリス政府に求めるデモが行われました。

このデモは、今月8日に国連の安全保障理事会で、パレスチナのガザ地区での人道目的の即時停戦を求める決議案にイギリスが唯一、棄権したことを受け、パレスチナの人権擁護のため活動する慈善団体が呼びかけました。

ロンドンの首相官邸前には11日、親子連れなど200人以上が集まり「子どもたちに対する空爆をやめろ」とか「スナク首相は恥を知れ」などと声を上げました。

中には、停戦を訴える親たち1万3000人以上の名前が書かれた、長さ10メートル近い紙を手に抗議する人もいて、参加者たちはイギリス政府に対し、停戦を支持するよう求めました。

2児の母親だという女性は「イギリスが国連決議を棄権したことは恥ずべきことだ。子どもたちに危害を加え続けるのではなく、暴力の連鎖を止めてほしい」と話していました。

また、1歳の娘を抱いた女性は「私たちはみな、ガザ地区からの映像にショックを受けている。この状況を終わらせるためには外交が必要だ」と、涙ながらに訴えていました。

“望むのはガザへの実際の入り口となること” 国連報道官

国連のデュジャリック報道官は11日、定例の会見で、ケレム・シャローム検問所で検査が行われれば人道支援活動を行いやすくなるだろうと評価する一方「われわれが望むのは、ケレム・シャローム検問所がガザへの実際の入り口となることだ」と述べ、ガザ地区の人道状況を改善するためにはケレム・シャローム検問所を通じた支援物資の搬入が必要だと強調しました。

“ケレム・シャローム検問所でも安全検査行う” イスラエル軍

イスラエル軍は11日、ガザ地区へ運ぶ支援物資の安全検査を行う場所について、ガザ地区とイスラエル側との境界にあるケレム・シャローム検問所でも行うと発表しました。

支援物資の安全検査を行う場所はこれで2か所に増えることになり、イスラエル軍は「ガザ地区へ運び込む支援物資を倍増させることができる」と主張しています。

ただ、支援物資の搬入については引き続き、エジプトとガザ地区との境界にあるラファ検問所1か所に限定するとしています。

イスラエル軍 ガザ地区南部に戦車部隊展開 ハマスは徹底抗戦

イスラエル軍は、ハマスのガザ地区のトップ、シンワル指導者が潜伏している可能性があるとみている南部のハンユニスや、北部ジャバリアなどにあるハマスの拠点に対して攻撃を加えています。

このうち、ハンユニスの中心部には戦車部隊を展開させていて、イスラエル軍のアラビア語の報道官は11日、SNSを通じて、激しい戦闘が続いているハンユニス中心部は通らずにう回して避難するよう住民に通告しました。

また、イスラエル側はSNSで、ハマスの戦闘員に投降するよう促すなど情報戦を活発化させ、圧力を強めています。

これに対して、ハマス側は徹底抗戦の構えを崩しておらず、ハンユニスやその周辺でイスラエル軍の戦車などに攻撃を加えたほか、民間人の犠牲に対する報復としてイスラエル最大の商業都市、テルアビブに向けて多数のロケット弾を発射したと主張しています。

イスラエルのメディアによりますと、ロケット弾1発がテルアビブ近郊の都市に着弾し、住民1人がけがをしたということです。

ガザ地区の保健当局は11日、これまでの死者が1万8205人に上ったと明らかにし、戦闘休止に向けた道筋が見えない状況が続いています。

ヨルダン川西岸 各地で大規模ストライキ

ヨルダン川西岸のパレスチナ暫定自治区の各地では11日、ガザ地区への激しい攻撃を続けるイスラエルに抗議の意思を示すため、学校や商店などを一斉に閉鎖する大規模なストライキが行われました。

NHKのムーサ・シャエルカメラマンがベツレヘムで撮影した映像では、多くの商店が建ち並びふだんはにぎわう大通りで、すべての店のシャッターが下ろされ、歩く人の姿は見られず閑散としていました。

また、ベツレヘムにある、キリストが生まれたとされる洞穴の上に建てられた「聖誕教会」も、ストライキの影響もあって、訪れる人は見当たりませんでした。

ストライキには、イスラエルに対してだけでなく、今月8日の国連の安全保障理事会で人道目的の即時停戦を求める決議案に拒否権を行使したアメリカに抗議の意思を示すねらいもあるということです。

また、ストライキは隣国ヨルダンなどでも行われたと伝えられていて、ベツレヘムに住む男性は「パレスチナ人の命のために世界が連帯する、前例のないストライキだ」と話していました。