岸田首相 政治資金問題受け あさってにも人事行う方向で調整

自民党安倍派の政治資金パーティーをめぐる問題を受け、岸田総理大臣は、14日にも人事を行う方向で調整しています。松野官房長官を交代させるのに加え、西村経済産業大臣ら、安倍派の閣僚3人も代えることを検討しています。

自民党安倍派の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、岸田総理大臣は、安倍派の政権幹部らの交代を検討していて、11日、国会で「人事は、政治の信頼回復と国政の遅滞回避のため、しかるべきタイミングに適切な対応をとる」と述べました。

関係者によりますと、岸田総理大臣は、13日に会期末を迎える臨時国会閉会後、ただちに体制を立て直したいとして14日にも人事を行う方向で調整しています。

人事では、松野官房長官を交代させるのに加え、安倍派に所属する西村経済産業大臣、鈴木総務大臣、宮下農林水産大臣の3人も代えることを検討しています。

また安倍派の副大臣5人と政務官6人についても、交代の規模や時期の調整を続けています。

さらに党側では、高木国会対策委員長の交代を検討しているのに加え、萩生田政務調査会長が、閣僚が辞任する事態になれば、自身の責任も大きいとして、みずから出処進退を判断する考えを示していて、政府側の人事を踏まえて調整が図られる見通しです。

一方、立憲民主党は、内閣の情報発信者としての機能が完全に停止し、国益が大きく損なわれておりただちに職を辞すべきだとして、松野官房長官に対する不信任決議案を衆議院に提出し、12日の本会議で採決が行われます。

松野官房長官「不信任決議案の対応は国会で決めていただくもの」

松野官房長官は閣議のあとの記者会見で「派閥で事実確認が行われている最中で、刑事告発がなされ、関連して捜査が行われていると承知しており、こうしたことを踏まえて私の政治団体についても精査して適切に対応する。不信任決議案の対応は、国会で決めていただくものだ」と述べました。

自民 世耕参院幹事長「捜査に徹底的に協力」

自民党の世耕参議院幹事長は記者会見で「当局による捜査に徹底的に協力し、事実解明をしていくことに尽きる。事態が明らかになる中で問題点や課題が出てきて、党や政策集団としての対応はその後の議論になると思う」と述べました。

自民 高木国対委員長「とにかく職責をしっかりと全うしていく」

自民党安倍派の事務総長を務める高木国会対策委員長は記者団に対し、派閥の政治資金をめぐる問題について「たびたび申し上げているが、刑事告発をされ、すでに捜査が行われていると報道されている。慎重に事実関係を調査、確認し適切に対応する」と述べました。

その上で自身の進退を問われ、「国会開会中なので、とにかく職責をしっかりと全うしていく」と述べました。

立民 岡田幹事長「各派閥の実態を洗い出すべき」

立憲民主党の岡田幹事長は記者会見で「決めたことは守るという法治国家であれば当たり前のことを最大派閥が公然と無視してやってきたことが大前提としてある。安倍派だけでなく安倍派以外に問題はなかったのか疑問があり、自民党として各派閥の実態を洗い出すべきだ。検察の捜査も本格的に始まると思うが、それに委ねるだけでは公党の責任を果たしたことにならない」と述べました。

立民 安住国対委員長「松野氏への不信任決議案 与党にも賛成を」

安住国会対策委員長は記者団に「ほとんどの国民は松野氏が官房長官としてふさわしいとは思っていない。決議案は、国民の声だと思って与党にも賛成してもらいたい。逆に反対して、松野氏は適任だと考えるのであれば理由をしっかり聞かせてもらいたい」と述べました。

その上で「もし決議案を否決して、あさって更迭となれば支離滅裂ではないか。辞書にある支離滅裂のところに、このたとえを書いてもらいたい」と述べました。

一方、岸田内閣に対する不信任決議案の提出については「総合的に判断して決める。今回はこれまでと違って、国会が閉じた瞬間から捜査が進展すると言われてるので、複雑な状況が絡み、慎重な対応をしているだけだ。出す時は出すし、尻ごみはしていない。政治的には、信任なんかとてもできる状態だと全く思っていない」と述べました。

維新 藤田幹事長「自民は全議員を対象に調査を」

日本維新の会の藤田幹事長は記者団に対し「自民党の派閥の裏金問題について説明責任を果たすべきで、内閣を構成する重要な軸となる官房長官に疑義がかかったままでは、国益に資する政府の運営が全くできずに滞ってしまうことは明らかだ。不信任決議案には賛成する」と述べました。

また、「安倍派だけの問題なのか。おそらくほかの派閥でも、大小にかかわらず同様のことがあり、文化として常態化していたのだろう。自民党は、すべての議員を対象に調査をして、事実関係を明らかにすべきだ」と述べました。

内閣不信任決議案の提出については「これまで会期末に季節行事のように立憲民主党が提出することを批判してきたが、今回は、よほどの事態が起こっていることに鑑みて、提出されれば賛成し、衆議院を解散すべしという立場だ。選挙中は検察の捜査が止まるという考えも一理あるが、選挙が終わったあとに、捜査を継続すればいい」と述べました。

公明 山口代表「岸田首相はきっぱりと判断すべき」

公明党の山口代表は記者会見で「不信任決議案を否決したからと言って、政治資金の問題が不問に付されるわけではなく、即信任と評価すべきではない。官房長官として職責を全うできるかに疑義が持たれているので、岸田総理大臣は任命権者として国民の信頼を得るためきっぱりと判断すべきだ」と述べました。

また、「岸田総理大臣には信頼を取り戻すため果断な対応が求められる。政権として国民の信頼を取り戻すのは並大抵のことではないが、岸田総理大臣のリーダーシップに期待し、われわれも国政の遅滞を招かないよう責任を果たしたい」と述べました。

政治資金規正法を改正する必要性を問われ「最終的に実態が明らかになれば再発防止のため与野党ともに知恵を絞るのは立法府に課せられた責任ではないか」と述べました。

国民 玉木代表「不信任決議案には賛成」

国民民主党の玉木代表は記者会見で「与野党を超えて政策実現のために連携や協力をしていく方針だが政治への信頼がきちんと確保されていることが前提だ。内閣の要である官房長官に、裏金づくりや法令違反の疑惑がある中では、政策を前に進めることはとてもできない。事態の収拾を速やかに図る観点からも、不信任決議案には賛成し、職を退いてもらうことが国益にかなう」と述べました。

鈴木総務相「特にコメントはない」

鈴木総務大臣は閣議のあとの記者会見で、岸田総理大臣が安倍派の閣僚を代えることを検討していることについて「任命権者は総理大臣であるから、特にコメントはない。いただいた職責は、その期間においてはしっかりと務めさせていただきたい」と述べました。

小泉法相「政治資金収支報告書に収入として記載している」

小泉法務大臣は、12日開かれた参議院法務委員会で、所属する二階派からキックバックを受けたものの政治資金収支報告書に収入として記載しており問題ないという認識を示しました。

この中で立憲民主党の石川大我参議院議員は、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題に関して、小泉法務大臣がキックバックを受けていないか、ただしました。これに対し小泉大臣は「パーティー券の一定の目安を超えた場合は、私が所属する二階派から、超えた分に見合う支出を受け取っているが、政治資金収支報告書に記載している」と述べ、問題ないという認識を示しました。

宮下農相「人事 総理から何も伝えられていない」

自民党安倍派の政治資金パーティーをめぐる問題で、宮下農林水産大臣は12日の閣議のあとの会見で、岸田総理大臣が自身を含む安倍派の政務三役の交代を検討していると報じられたことについて「人事に関して総理から何も伝えられていないし、決まっていない状態だ。何ら決定されていないので今の時点ではコメントのしようがない」と述べました。

そのうえで、自身の政治資金については「私自身は政治資金規正法上、適正に処理してきていると随時申し上げており、そこは変わりません」と述べました。

西村経済産業相「政治不信につながっていることを改めておわび」

西村経済産業大臣は、12日の閣議のあとの会見で、「多くの方から疑念を持たれ、告発がなされて捜査が行われていることは派閥の幹部の1人として責任を感じている。国民の政治不信につながっていることを改めておわびしたい」と述べました。その上で、自身の政治資金については、「帳簿の保存期間である3年を超えた分も含めて秘書にも確認しながら慎重に精査を進めている」と述べ、捜査の状況も見ながら適切なタイミングでみずから説明を行うと強調しました。

一方、自身の進退については、「今の時点でコメントすることはないが、大臣という立場にある以上、日本が直面する課題にしっかりと対応するのが私の責任だと考えている」と述べました。

自民 小泉氏「自民党全体の大きな問題」

自民党で派閥に所属していない小泉 元環境大臣は国会内で記者団に対し「無派閥か派閥の議員かという問題ではなく、自民党全体の大きな問題だ。国民の大きな不信がわれわれに寄せられているのは間違いないので、信頼を回復できるようにしていかなければならない」と述べました。

経済同友会 新浪代表幹事「透明性を確保して説明責任を」

自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題について経済同友会の新浪代表幹事は12日の記者会見で「何が起こっているのかと、国民や働く方々の不信感になってしまうので、透明性をしっかり確保してそれが向上していくことを早急にみせていってほしい。そして、説明責任を果たしてほしい」と述べました。

そのうえで「政策をきちっと運営し、国民の不信感を払拭していってほしい。ここで立ち止まってはいけない」などと述べ、政策運営への影響が出ないよう努めてもらいたいという考えを示しました。