【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(12月12日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる12日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナとは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

英国防省 ”掃海艇をウクライナ側に提供” と発表

ロシアによる軍事侵攻の影響で、黒海を通じたウクライナからの農産物の輸出が停滞する中、イギリス国防省は11日、輸送ルートの安全確保のため掃海艇をウクライナ側に提供すると発表しました。

イギリス国防省がウクライナ側に提供するのは機雷を除去する掃海艇2隻です。イギリスは北欧のノルウェーとも協力して、黒海の安全保障を強化するための訓練や装備などを長期的に提供するとしています。

ロシア軍はこれまでウクライナ産の農産物の輸出を阻止しようと、黒海に面したウクライナの港の周辺で、機雷などを使って民間の船舶を攻撃しようとしている兆候があるとイギリス政府が指摘していました。掃海艇の提供によってウクライナからの農産物の輸出ルートの安全確保を目指したい考えです。

ウクライナのゼレンスキー大統領はSNSへの投稿で、感謝の意を示すとともに「農産物輸出は世界全体の食料安全保障に寄与するものだ」として黒海の安全保障は世界の問題でもあると訴えています。

ロシア 一部兵士にパスポート提出求める法施行

ロシアでは11日、一部の兵士などに対し要請にもとづいてパスポートを政府に提出するよう求める法律が施行されました。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は「兵役逃れを防ごうとするのが目的だ」と指摘していて、締めつけ強化によって兵士を確保するねらいもあるとみられます。

ゼレンスキー大統領 ハンガリー首相と議論

ウクライナのゼレンスキー大統領は、10日、訪問先のアルゼンチンでハンガリーのオルバン首相と短時間、言葉を交わしました。

オルバン首相は、EU=ヨーロッパ連合の加盟国でありながらロシア寄りの姿勢を示し、EUがウクライナと加盟に向けた交渉を開始することにも反対の姿勢を示しています。

現地で撮影された映像では、ゼレンスキー大統領が、10日に行われたアルゼンチンのミレイ新大統領の就任式の会場で、オルバン首相と会い、真剣な表情で議論しているような様子が映されています。

映像では、会話の内容までは分かりませんが、ゼレンスキー大統領は、その後自身が公開した動画で「オルバン首相と、われわれのヨーロッパの問題についてきわめて率直に話した」と述べています。

ゼレンスキー大統領 米で支援継続訴え

アメリカ議会ではウクライナへの軍事支援をめぐる緊急予算の協議が重要局面を迎えていて、ゼレンスキー大統領は、バイデン大統領などと協議するため、首都ワシントンを訪れています。

ゼレンスキー大統領は、11日、国防大学で演説し、バイデン政権がウクライナへの軍事支援の予算が年内に枯渇するとの見通しを示していることを踏まえ「われわれの兵士たちは激しい戦いの中、前線で持ちこたえ、さらなる行動の準備をしている」と述べ、支援の継続を訴えました。

一方、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は記者団に対し、バイデン大統領は12日に予定しているゼレンスキー大統領との協議で、ウクライナを支援し続ける考えを改めて伝えるとともに、ウクライナ支援がアメリカの国家安全保障上も重要である理由を明らかにすると述べました。

アメリカでは、イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突に対する関心が高まっているほか、議会の共和党の一部からはメキシコとの国境管理を優先すべきだなどとしてウクライナ支援の継続に消極的な意見が出ています。

このためバイデン大統領としても議会に対しウクライナ支援を含む緊急予算の承認を急ぐよう促したい考えです。

プーチン大統領 新型原潜の就役式出席 軍事力で欧米けん制

ロシア北西部のセベロドビンスクで11日、核ミサイルの搭載が可能な新型の原子力潜水艦「皇帝アレクサンドル3世」など2隻の就役式が行われ、プーチン大統領が出席しました。

プーチン大統領は演説で「われわれは北極圏から極東、黒海など戦略的に重要な海域における海軍力を強化する」と述べ「ボレイ級」と呼ばれる原子力潜水艦をさらに3隻建造していると明らかにしました。

そして「皇帝アレクサンドル3世」がボレイ級としては7隻目で、極東の太平洋艦隊に配備されるとした上で「これらの原子力潜水艦は何年にもわたってロシアの安全を確実に守り、戦略的抑止の任務を遂行していく」と強調し、ロシアが軍事侵攻を続けるウクライナや、ウクライナを支援する欧米をけん制するねらいがあるとみられます。

ロシア 東部で追加の突撃部隊投入か

ロシア軍は、ウクライナ東部で攻勢を強めていて、ウクライナ陸軍のシルスキー司令官は11日、ロシア側が追加の突撃部隊を投入するなどして攻撃を仕掛けているとSNSに投稿しました。

イギリス国防省は11日、この1週間で最も激しい戦闘が続いているのはドネツク州のアウディーイウカだとした上で、ロシア軍の攻撃は受刑者などで構成された部隊「ストームZ」による突撃が中心だと分析し、ロシア軍が引き続き多大な犠牲をいとわず攻撃を繰り返していることをうかがわせています。

ウクライナ外相 EU加盟交渉開始を訴え

ウクライナのクレバ外相は11日、ベルギーで開かれたEU外相会議に参加するのに先だって記者団の取材に応じました。

この中で、EUから、ウクライナが目指す加盟に向けた交渉を開始するために求められていた、汚職対策の強化や少数民族の権利の保護といった分野での法律制定などを行ったとした上で「ウクライナは宿題を済ませた。EUにも同様のことを期待する」と述べ、交渉を始めるよう強く訴えました。

EUは今週14日から2日間、首脳会議を開いてウクライナとの交渉開始をめぐって協議しますが、ハンガリーが「ウクライナの加盟が及ぼす影響などが十分検証されておらず、議論は時期尚早だ」などと反対していて、立場を変えるようEU各国が働きかけを行っています。

こうした中、ハンガリー首相府によりますと、シーヤールトー外相は11日のEU外相会議で「いかなる圧力も受け入れない。ウクライナは加盟に必要な条件を満たしていない」などと主張したということで、協議の行方は不透明になっています。