少子化対策強化へ 「こども未来戦略」素案まとまる 政府

少子化対策の強化を目指す政府の「こども未来戦略」の素案がまとまりました。児童手当の支給要件の緩和や、3人以上の子どもを扶養する世帯の大学授業料の無償化などが盛り込まれています。

11日に政府の会議で明らかにされた「こども未来戦略」の素案によりますと、児童手当について所得制限を撤廃するとともに、今は中学生までとなっている支給対象を18歳まで広げるとしています。

また、3人以上の子どもを扶養する世帯に対しては、第3子以降は月額3万円に増やし、第1子が22歳に達する年度まで増額措置を継続するほか、大学授業料の無償化も行うとしています。

さらに、ひとり親世帯を対象にした児童扶養手当の支給要件も緩和し、満額を受け取れる年収の上限を160万円未満から190万円未満に引き上げるとしています。

このほか、両親がともに14日以上、育児休業を取得した場合の育児休業給付の給付率を引き上げ、28日間を上限に、手取り収入が実質的に10割にすることなども盛り込まれています。

一方、一連の対策の予算は、今後3年かけて新たに3兆6000億円程度を確保するとしています。

財源については、当面は国債を発行して賄い、社会保障費の歳出改革や、国民や企業から広く集める「支援金制度」の創設などを通じ2028年度までには安定的な財源を確保するとしています。

政府は、この素案をもとに年内にも「こども未来戦略」を閣議決定したい考えです。

岸田首相「社会全体で子育て応援の機運高めることが必要」

岸田総理大臣は会議の中で「年末までに『こども未来戦略』をとりまとめたうえで、来年の通常国会に必要な法案を提出し、スピード感をもって実行に移していく。制度や施策の意義や、目指す姿を国民一人一人にわかりやすいメッセージで伝えるとともに、施策が社会や職場で活用され、社会全体で子どもや子育て世帯を応援する機運を高めていくことが必要だ」と述べました。

“年間3兆6000億円程度の財源” どう確保?

政府は少子化対策の強化のため、2028年度までに国と地方の総額で年間3兆6000億円程度の安定的な財源を確保するとしています。

具体的には、
▽すでにある予算の活用で1兆5000億円程度
▽歳出改革で1兆1000億円程度
▽国民や企業から広く集める「支援金制度」で1兆円程度としています。

このうち、すでにある予算の活用の例として、政府は、厚生年金保険の対象となる企業が従業員の賃金に応じて負担している「子ども・子育て拠出金」を挙げています。

今年度の収入は6800億円余りと見込まれ、保育所の運営費や、児童手当などの子育て政策に使われていますが、今後も賃上げが続けば収入が増えるとみられることから、使途の拡充などを検討する方針です。

また、国や地方自治体が行っている社会保障の事業全般について精査し、予算の効果的な執行に取り組むとしています。

また歳出改革では、医療や介護分野でデジタル化を進めて効率化を図るほか、医療費や介護費について高齢者の自己負担割合の見直しも検討するなどとしています。

政府は、これまで進めてきた高齢化に伴う社会保障費の伸びを抑える取り組みで、昨年度までの10年間で国と地方合わせて毎年平均1800億円の歳出を抑制したとしています。

2028年度までの6年間も同じペースで歳出改革を進められれば、1兆1000億円程度の財源を確保できると説明しています。

これに加えて政府は、新たな「支援金制度」で2028年度までに1兆円程度を確保するとしています。