【8日詳細】イスラエル軍 激しい攻撃 多くの戦闘員投降と主張

イスラエル軍は8日、前日からガザ地区各地でおよそ450の標的に攻撃を加えたと明らかにし、南部のハンユニスなどで攻勢を強めています。

ハマスの戦闘員らを含む多くが投降したとも主張していて、戦闘を優位に進めているとアピールするねらいがあるとみられます。

イスラエルやパレスチナに関する日本時間12月8日の動きを、随時更新でお伝えします。

イスラエル軍 450の標的に激しい攻撃 多くの戦闘員投降と主張

イスラエル軍は8日朝、前日からガザ地区各地で陸海空からおよそ450の標的に激しい攻撃を加えたと明らかにしました。

このうち地上侵攻を進める南部のハンユニスでは、ハマスの戦闘員を殺害するために上空から精密な攻撃を加えたとしています。ハンユニスをめぐってイスラエル軍はハマスのガザ地区トップのヤヒヤ・シンワル指導者が潜伏している可能性があるとみて、捜索を続けています。一方のハマス側はシンワル指導者が潜伏しているというイスラエル側の見方を否定しています。

こうした中、イスラエル軍のハガリ報道官は7日、「テロ活動への関与が疑われる数百人を捕まえ、尋問した。この1日で多くの者が投降した」と述べハマスの戦闘員らを含む多くが投降したと主張し、戦闘を優位に進めているとアピールするねらいがあるとみられます。

ただ、スイスに本部を置く人権団体は拘束された中にはジャーナリストや学者など民間人も含まれるとし「軍は避難民に対して無作為かつ恣意的な逮捕を始めたとの報告を受けた」として、民間人の不当な拘束が行われていると非難しています。

ガザ地区の人道状況は深刻 多くの子どもや女性が犠牲に

ガザ地区の人道状況は深刻となっていて、現地の保健当局によりますと戦闘が始まってからの2か月の死者は1万7177人に上り、その多くが子どもや女性とされています。OCHA=国連人道問題調整事務所のトップ、グリフィス事務次長は7日、エジプトとの境界にあるラファ検問所を通じた支援物資の搬入について、「不安定で頼りなく、率直に言って持続可能ではない」と述べ、イスラエル側との境界にあるケレム・シャローム検問所を早期に開放するよう訴えました。

今月1日に戦闘が再開されて以降、人道支援物資の搬入は戦闘休止中と比べて減っていて、ケレム・シャローム検問所が開放され、人道状況の改善につながるかが焦点です。

一方、イスラエル軍は、隣国のレバノンからイスラエル北部への対戦車ミサイルによる攻撃で市民1人が死亡し、これに対しレバノンのシーア派組織ヒズボラの拠点に報復攻撃を行ったと明らかにしました。

ネタニヤフ首相は「仮にヒズボラがわれわれとの全面戦争を決意すればベイルートやレバノン南部はガザ市やハンユニスのようになるだろう」と述べ強くけん制し、ヒズボラとの間でも緊張が続いています。

イラクの米大使館敷地にロケット弾着弾

イラクの首都バグダッドにあるアメリカ大使館の敷地に8日、ロケット弾2発が着弾し、アメリカ大使館はイラン系の民兵組織による犯行が疑われると発表しました。けがをした人はいないということです。

バグダッドのアメリカ大使館は「グリーンゾーン」と呼ばれる警備が最も厳重なエリアにあり、敷地内に攻撃が及ぶのは異例です。

イスラエルとイスラム組織ハマスによる一連の衝突が始まったあとイラクでは、イランの支援を受ける民兵組織が「イスラエルによるガザ地区での犯罪行為への報復だ」として、イスラエルへの支援を続けるアメリカの基地に攻撃を繰り返しています。

イスラエル軍 投降した人を下着姿で拘束か

イスラエル軍のハガリ報道官は7日、「イスラエルの兵士らはテロ活動への関与が疑われる数百人を捕まえ、尋問した。この1日で多くの者が投降した。尋問により集めた情報は戦闘を継続するにあたって役立っている」と述べ、テロ活動に関与する者の拘束が進み、軍事作戦を優位に進めていると主張しました。

こうした中、SNSではガザ地区でイスラエル軍に投降した人たちだとする動画や画像が投稿され、この中では服を脱がされ下着姿となった男性たちが路上に座らされている様子が映っています。

目隠しをされて、後ろ手を縛られた状態で拘束されている様子を捉えたものもあります。

これらが撮影された場所や日時など、詳しいことはわかっていませんが、イスラエルメディアはハマスの戦闘員も含まれていると伝えています。

これに関連してスイスに本部を置く人権団体、ユーロ地中海人権モニターは「イスラエル軍が医師や学者、ジャーナリスト、高齢者の男性を含む避難民に対して無作為かつ恣意的な逮捕を始めたとの報告を受けた」との声明を発表し、イスラエル軍が民間人を不当に拘束し虐待していると非難しています。

NYでユダヤ教の祭り「ハヌカ」 停戦訴える参加者も

イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘から2か月となる7日、アメリカ・ニューヨークでは各地で、ユダヤ教の祭り「ハヌカ」を祝いろうそくに火をともす点灯式が行われましたが、祭りの参加者の間では、停戦への考えをめぐり隔たりも見られました。

「ハヌカ」は毎年この時期に行われているユダヤ教の伝統的な祭りで、8日間にわたり、1日1本ずつろうそくに火をともすのが慣習となっています。

このうちニューヨークのセントラルパークの近くでは、祭りの初日となる7日、点灯式が行われました。

主催者が「われわれはテロリストとは交渉せず、ガザを掃討する。神の力を借りてこの戦争に勝つ」と訴えると、集まった人たちからは大きな歓声が上がり、このあと、1つ目の灯がともされました。

一方、そこからおよそ800メートル離れた場所では別の団体による点灯式が行われ、停戦を訴えるユダヤ系の人たちが集まりました。

停戦を求める点灯式に参加したイスラエル出身の男性は「私たちが目の当たりにしている破壊は、イスラエルにとってもパレスチナにとってもよりよい未来にはつながらないと思う。前進するためには、停戦と、すべての命の尊厳が保たれ、包囲も占領も存在しない解決策を模索することが必要だ」と話していました。

”キリスト生誕の地” クリスマスツリー設置を取りやめ

ヨルダン川西岸にはおよそ320万人のパレスチナ人がイスラエルの占領下で暮らしています。

このうちパレスチナ暫定自治区のベツレヘムでは、キリストが生まれたとされる場所に建てられた「聖誕教会」の前の広場に毎年12月、高さ10メートルを超えるクリスマスツリーが飾られ、世界各地から多くの観光客が訪れますが、ことしはガザ地区で苦しむ人たちに連帯を示すためにツリーの設置や装飾を取りやめ、広場は閑散としています。

近くで土産物店を営む男性は「ガザ地区で民間人が犠牲になっているのは本当に悲しい。平和が訪れたときこそ、最高のクリスマスを迎えられると思います」と話していました。

また、市内の「クリスマス教会」では、毎年キリスト生誕の場面として祭壇の隣に展示する飼い葉おけの中で眠る幼いキリストの姿の代わりに、パレスチナ伝統の織物「クーフィーヤ」に包まれ、がれきの中で横たわる幼子の人形を飾っています。

教会のムンザ・イサーク司祭は「もしイエスさまがきょう生まれるとしたら、ガザで苦しむ子どもたちと一緒にがれきの中で生まれるでしょう。世界中がクリスマスを華やかに祝う中、パレスチナでのクリスマスの実情を知ってほしかった」と話していました。

バイデン大統領がネタニヤフ首相と電話会談 “住民保護が重要”

イスラエル軍がパレスチナのガザ地区の北部に続いて南部にも地上侵攻を進めるなか、アメリカのホワイトハウスは7日、バイデン大統領がイスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談したと発表しました。

会談でバイデン大統領は、イスラム組織ハマスに今も拘束されている人質の状況に懸念を示した上で、解放に向け引き続き協力していくことを確認したということです。

また、バイデン大統領はガザ地区の住民を保護するため、戦闘地域から安全に移動できる回廊などを通じて民間人をハマスから切り離すことが極めて重要だと強調しました。

さらに人道支援をめぐっては、イスラエルがガザ地区南部に最低限の燃料の搬入を認めると明らかにしたことを歓迎する一方、さらに多くの支援が緊急に必要になっていると伝えたということです。

このほか、バイデン大統領は、ヨルダン川西岸におけるユダヤ人入植者によるパレスチナ人への暴力に改めて懸念を示しました。

米国務長官 民間人の犠牲増加に懸念

アメリカのブリンケン国務長官は7日、記者会見で「イスラエルは引き続き、民間人の保護を重視する必要がある。ただ、実際に目にする現場の状況にはギャップがある」と述べ、イスラエル軍が民間人の保護を掲げているにも関わらず、パレスチナのガザ地区南部で民間人の犠牲が増え続けていることに懸念を示しました。

また、ブリンケン長官は「安全地帯を設けることに加え、人々がいつどこに安全に避難できるかを知らせることが重要だ」と述べ、イスラエルに対応を求めました。

ハマス政治部門幹部「抵抗を続け降伏はない」

イスラム組織ハマスの政治部門の幹部がレバノンの首都ベイルートで会見し「パレスチナ人をガザ地区から追い出そうとする試みに、抵抗を続け降伏はない。侵略や占領を止めない限り、解決はない」などと述べ、徹底抗戦の構えを改めて強調しました。

また「イスラエルは幻の勝利のために幻の標的を掲げている。シファ病院の地下にハマスの拠点があるという主張がうそだった」と述べ、ガザ地区南部のハンユニスにハマスのシンワル指導者が潜んでいるというイスラエル側の見方も否定し、批判しました。

ガザ地区 2か月で1万7000人以上が死亡

ことし10月7日にガザ地区を実効支配するハマスの戦闘員などがイスラエル側を襲撃し、これに対してイスラエル軍がガザ地区での大規模な軍事作戦に乗り出してから、7日で2か月となりました。

イスラエル軍は7日もガザ地区南部のハンユニスを中心に多くのハマスの拠点などを攻撃したと明らかにし、ハマスのガザ地区のヤヒヤ・シンワル指導者が市内に潜伏している可能性があるとみて、捜索を続けているもようです。

これに対してハマスも7日、ハンユニスの周辺でイスラエル軍の戦車にロケット弾などで攻撃を加えたとSNSで明らかにし、双方の激しい攻防が続いています。

ガザ地区の保健当局によりますと、ハンユニスのナセル病院には、およそ1000人のけが人がいて、病床が足らず多くの患者が床に横たわることを余儀なくされているということです。

保健当局によりますと、ガザ地区では前日からの24時間に新たに350人が死亡し、この2か月での死者は1万7177人に上り、その多くが子どもや女性とされています。

イスラエル軍はハマスが依然として138人の人質を拘束しているとして、ハマスを壊滅させ人質全員を解放するまで軍事作戦を続ける構えで、今後さらに民間人の犠牲が増えることが懸念されます。

学生たち「窒息させられているよう」

イギリスの首都ロンドンを拠点にパレスチナ人の学生たちに奨学金の支援などを行っている慈善団体は、一連の衝突が始まって以降、学生たちが危機に直面していると訴えています。

ロンドンの「ガリラヤ財団」は、16年間にわたってヨルダン川西岸のパレスチナ人やイスラエル国内のアラブ系の学生に、奨学金の提供や就職支援を行っています。

支援を統括するパレスチナ人のマハ・アルファラさんによりますと、ヨルダン川西岸ではイスラエル軍の検問所が増え、学生たちは通学に数時間かかるようになったり、兵士から身体検査だとして服を脱ぐよう強いられ身体的な暴力を受けたりしていて、多くの学生が大学に通えていないということです。

また、イスラエル国内の大学に通うアラブ系の学生については、パレスチナとの連帯を示したことでおよそ130人が逮捕されたり退学させられたりしていて、ガザ地区の赤ちゃんが犠牲になったことにSNSで言及した学生は、1年間の停学を命じられたということです。

アルファラさんは、「学生たちは『窒息させられているようだ』と話している。イスラエルは自らを民主的な国家だと言いながらなぜ表現の自由が認められないのか」と非難しました。

また、アルファラさんは、ガザ南部のハンユニスの近くに避難しているいとこと、定期的にやりとりしています。

いとこが送ってきたボイスメッセージの背後では、絶えず戦闘機が飛行するような音が聞こえていて、アルファラさんは「子どもたちがどんな思いをしているのか、想像もつかない」として、一刻も早く戦争を終わらせるよう訴えていました。