COP28 きょうから閣僚級会合 化石燃料削減めぐる文言など焦点

UAE=アラブ首長国連邦のドバイで開かれている気候変動対策の国連の会議、COP28は8日から閣僚級の会合が始まります。世界全体の対策の進捗(しんちょく)を評価する「グローバル・ストックテイク」の交渉が行われ、対策の強化に向けて化石燃料の削減をめぐる文言を合意文書にどう盛り込むかなどが焦点となります。

先月30日から始まったCOP28では、2030年までに世界全体の再生可能エネルギーの発電容量を3倍にすることなどに110か国以上が誓約しました。

しかし、化石燃料の利用については、段階的な廃止で合意すべきという声がある一方で、反対する意見もあり、各国の意見の隔たりが浮き彫りになっています。

8日から始まる閣僚級会合では、気候変動対策について世界全体の取り組みの進捗を5年に1度評価する「グローバル・ストックテイク」の交渉が行われ、対策の強化が話し合われます。

その中で、化石燃料をめぐり「段階的な廃止」などの文言が合意文書に盛り込まれるのか、または言及しないのかなどが焦点になります。

日本からは伊藤環境大臣が2日目の会合から出席する予定です。

近江牛の「ふん」をエネルギーに

COP28の会場では、気候変動対策の最新技術などを世界に発信するセミナーなどが開かれています。

ジャパンパビリオンでは6日、国内の自動車業界によるセミナーが開かれました。

そこで発表されたのは「牛のふん」をエネルギーに活用する技術です。

滋賀県のブランド牛「近江牛」の発祥の地で、畜産業が盛んな滋賀県竜王町ではおよそ4000頭の牛が飼育されています。

竜王町では、畜産農家や町内にある大手自動車メーカーと連携し、牛のふんを活用した「バイオマス産業都市構想」を掲げています。

年間25万台の自動車を製造する工場では車の部品を作る溶解炉で1日に一般家庭のおよそ1400世帯分にあたる都市ガスを使っています。

より環境への負荷が少ないガスを求めて注目したのが、近江牛の「ふん」です。

工場に隣接する牧場では1日7トン余りが出ていて、そのふんを畜産農家が提供し、工場でメタン菌と混ぜて槽で発酵させ、ガスを作る実験を進めています。

こうして発生させたバイオガスを工場で使おうという計画です。

町では、ガスを抽出したあとに残ったカスも堆肥として活用するほか、この堆肥で育てた農作物を近江牛の餌にして再び牛ふんを使うという、地域でバイオマス資源が循環する仕組みを目指しています。

工場に牛のふんを提供している畜産農家は「産業廃棄物として悩んでいる堆肥の処理も含め、それがCO2削減に対して一役買えるのだという思いだ」と話していました。

CNG車に「牛のふん」を活用

世界で最も多い3億頭の牛がいるインドで、天然ガスで走るCNG車を150万台販売している日本の自動車メーカーでは、牛のふんから発生させたバイオガスを車の燃料とする取り組みを進めています。

ことし東京で開かれたジャパンモビリティショーでは、実際にインドで走行しているCNG車が登場し、この車に牛のふんから発生させたバイオガスを転用していく事業が紹介されました。

ガソリンとは別にガスを充てんするタンクがトランクに備え付けられ、牛1頭の1日分のふんで、およそ6キロ走行できるということです。

この自動車メーカーが出資する静岡県内の発電施設では、1日およそ300頭分の牛のふんを集めてバイオガスを発生させ、電気を作っています。

年間80万キロワットが発電されて周辺の住宅で使われ、1150トンの二酸化炭素の削減効果があるということで、こうして国内で得た知見をインドでの事業に生かす方針です。

「スズキ」の経営企画室の山野博之さんは「化石燃料を使わずに走る自動車でカーボンニュートラルな社会を目指している。牛ふんなど今ある資源を活用することが重要で、これまで無価値だった牛ふんを有価で買い取ることでインドの農村地域を支援する、SDGsの観点でも意味がある取り組みだと思う」と話していました。