【5日詳細】イスラエル軍 南部への空爆強化 地上部隊を展開

パレスチナのガザ地区で北部に続いて南部でも地上侵攻を進めるイスラエル軍は5日、南部の中心都市ハンユニスへの空爆を強め、地上部隊を市の周辺に展開しています。ハンユニス市内には多くの住民が残っていて、市街地で戦闘が本格化すれば犠牲者がさらに増えるのは避けられない情勢です。

イスラエルやパレスチナに関する日本時間12月5日の動きを随時更新でお伝えします。

ハンユニスへの空爆強める

イスラエル軍はガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスへの軍事作戦を続け、5日にかけて特に南部の中心都市ハンユニスへの空爆を強めるとともに、地上部隊を市の周辺に展開しています。

イスラエルの有力メディアハーレツは「イスラエル軍はハンユニスの地下トンネル施設にハマスのガザ地区の指導者、ヤヒヤ・シンワル氏をはじめ、幹部が潜んでいる可能性があると見ている」と伝えています。

イスラエル軍は民間人の犠牲を抑えるためとして上空からQRコード付きのビラをまき、さらに南のラファの方面に避難するよう通告していますが、NHKガザ事務所のカメラマンによりますと、すべての住民がビラを手にするわけではなく、現地では通信状況が悪いため、QRコードを読み取って詳しい内容を確認するのは容易ではありません。

こうしたなか、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関ガザ事務所のトーマス・ホワイト所長は4日、SNSに、ハンユニスよりさらに南のラファに避難民が押し寄せていると投稿し、「人々は安全な場所を教えてほしいと懇願しているが、私たちは何も答えてあげられない」と厳しい状況を説明しています。

ガザ地区の保健当局によりますと、戦闘開始からこれまでの死者数はガザ地区で1万5899人にのぼっていますが、ハンユニス市街地で戦闘が本格化すれば、犠牲者と行き場を失う人がさらに増えるのは避けられない情勢です

UNRWA事務所 “ラファ 避難民受け入れに耐えられない”

イスラエル軍がガザ地区南部でも地上侵攻を進め、住民に退避するよう通告する中、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は5日、SNSに、「多くの住民がすでに1回以上、住む場所を追われている。退避通告はガザの人々をパニックや恐怖と不安におとしいれている」と投稿しました。

イスラエル軍は数日前から、南部の中心都市ハンユニスの東側の地区の住民に対し、安全を確保するためとして、さらに南のラファに退避するよう通告しています。

これについて、UNRWAのガザ事務所のトーマス・ホワイト所長は5日、SNSへの投稿で、今後、50万人の避難民がラファに向かう可能性があるとしたうえで、ラファはもともと人口が28万人だが、すでにおよそ47万人の避難民を受け入れていて、「さらなる避難民の受け入れには耐えられない」としています。

さらに、ホワイト所長は「UNRWAは残りの300張りのテントを配布しているが、数千人が野外生活を余儀なくされている」と苦境を訴えています。

また、UNRWAによりますと、イスラエル軍がこれまでに退避通告を出した対象地域には60万人が暮らし、UNRWAが運営する避難所のうち69か所があるということです。

イランで隊員2人の葬儀 報復示唆

イスラエル軍によると見られるシリアへの空爆で死亡したイランの精鋭部隊、革命防衛隊の隊員2人の葬儀が5日、本国イランの首都テヘランで行われました。

テヘランのモスクには2人の遺体の入ったひつぎが置かれ、革命防衛隊の関係者ら参列者が祈りをささげました。

イランの国営通信は、2人は同盟関係にあるシリアで軍事顧問の任務にあたっていたところ、イスラエル軍による空爆を受けて死亡したと伝えています。

2人のひつぎが車に載せられてモスクを出発すると、参列者は車の後を追って行進し、「イスラエルに死を、アメリカに死を」と怒りの声をあげました。

57歳の女性は「悲しい気持ちですが、殉教したことは名誉なことです。イスラエルが破壊されることを確信しています」と話していました。

イスラエルとハマスの衝突をめぐり、イランはこれまでのところ、直接的な軍事介入は行わない考えを示しています。ただ、隊員2人が死亡したことを受けて、イラン外務省のキャンアニ報道官は4日の記者会見で、「イランの利益と安全を脅かすどんな行動も報いを免れない」と述べ、イスラエルへの報復の可能性を示唆しています。

南部の病院 負傷者が次々と搬送

南部ハンユニスのナセル病院で4日に撮影された映像には、負傷者が救急車などで次々と運ばれてくる様子が映っています。

また、負傷した生後2か月ほどの赤ちゃんが抱きかかえられて病院に運び込まれ、酸素マスクを装着した状態で手当てを受けている様子も映っています。

赤ちゃんの父親は「ガザ北部を離れて南部に行くよう言われ、従ったにもかかわらず、南部で息子が負傷しました。私たちはどうしたらいいんでしょうか。息子は戦闘が始まって2日目に生まれ、まだ出生登録もできていません」と話していました。

避難先の子どもたちの動画

また、SNSには、南部ハンユニスに避難している子どもたちを撮影した動画が投稿されています。

パレスチナ赤新月社が旧ツイッターのXに投稿した動画で、子どもたちは手をつないで輪を作ったり、歌をうたったりして笑顔で過ごしています。

動画に合わせて、パレスチナ赤新月社は「経験している困難にもかかわらず、子どもたちは遊びや歌を最大限いかし、恐怖と痛みの中で幸せと希望を見いだしている」と投稿しています。

ガザ地区への支援トラック 大幅減

OCHA=国連人道問題調整事務所は、4日に人道支援物資や燃料を積んでエジプトからガザ地区に入ったトラックは100台としていて、7日間の戦闘休止の期間に1日あたり平均170台が入った状況と比べると大きく減っています。

OCHAは現地の担当者の話として、ガザ地区の避難所では飲み水が不足し、衛生環境が保てず、物資が十分に届いていないとして、避難民は精神的にも身体的にも疲れ果てているとしています。

また、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関によりますと、ガザ地区南部にある規模が大きな病院では1000人以上の入院患者と1万7000人が身を寄せていますが、物資の不足から十分な治療活動ができる状況にないとしています。

一方、イスラエル側の発表は、4日にガザ地区に入ったトラックの台数を180台としていて、OCHAの発表より80台、多くなっています。

国連安保理で緊急会合 議論は難航

パレスチナのガザ地区の情勢をめぐり、国連の安全保障理事会では4日、対応を協議する緊急会合が非公開で行われました。

フランスは休戦を求める決議の採択が必要だと訴えたのに対し、イスラエルを擁護するアメリカは新たな決議の採択に消極的な姿勢を示し、事態打開を目指す安保理での議論は難航しています。

“民間人犠牲 広がらないよう求める” 米高官

アメリカ・ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は4日、イスラエル軍が民間人への犠牲が最小限になるよう十分な配慮をしているか問われ、「判断するには時期尚早だ」としながらも、イスラエル軍が住民に対して避難を呼びかけていることなどを挙げて、改めて擁護する姿勢を示しました。

一方で、「攻撃禁止区域に指定した地域では攻撃が避けられるものと考えている」と述べ、イスラエル軍に対し、民間人の犠牲が広がらないよう、攻撃対象から除外した地域では戦闘を行わないよう求めました。

また、人質を巡ってハマスが女性と子どもはすべて解放したと主張し、イスラエルと言い分が異なっていることについて、サリバン補佐官は「ハマスは戦闘休止の合意に反して民間人の女性を解放するのを拒否している」と述べて強く非難し、人質の解放に向けて関係国に働きかけていくと強調しました。

ガザ地区 人口の8割超の190万人が避難 UNRWA 発表

UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は4日、ガザ地区では人口の8割を超えるおよそ190万人が避難を余儀なくされているとする報告書を発表しました。

避難する人は増え続けていて、11月30日からイスラエル軍の軍事作戦が再開された翌日の12月2日にかけては、少なくとも6万人の避難民が新たにガザ地区中部と南部の避難所に逃れたとしています。

現在、UNRWAが運営する156の避難所にはあわせておよそ120万人が避難しているということです。

3人の子どもと避難所に身を寄せている母親は「何日も食事をしてません。水を手に入れるのも大変で、子どもは汚い水を飲んで下痢をしました。誰の力も借りられず、何をどうしたらいいか分からず怖いです」と話しています。

また、10月に戦闘が始まってから今月2日までにガザ地区で亡くなった国連職員やスタッフはあわせて111人にのぼることも明らかにしました。

上川外相「戦闘再開 誠に残念」

上川外務大臣は5日の記者会見で、「戦闘が再開されたことは誠に残念だ。すべての当事者に対して、国際法の順守や先般採択された国連安保理決議に基づいて誠実に行動することを求めつつ、戦闘休止の合意への復帰や事態の早期沈静化に向けた外交努力を粘り強く積極的に続ける」と述べました。

松野官房長官「外交努力を粘り強く続ける」

松野官房長官は記者会見で、「情勢を深刻な懸念を持って注視している。戦闘の再開は誠に残念で、危機的な人道状況がさらに深刻化することを強く憂慮している」と述べました。

その上で、「わが国としては引き続き、関係国や国際機関との間で意思疎通を行い、人質の即時解放や人道状況の改善と、それに資する戦闘休止の合意への復帰、事態の早期沈静化に向けた外交努力を粘り強く積極的に続けていく」と述べました。