有害性指摘のPFAS 一部物質について発がん性評価引き上げ WHO

国内各地の河川や水道水から高い濃度の検出が相次ぎ、有害性が指摘されている有機フッ素化合物「PFAS」の一部の物質について、WHO=世界保健機関のがん研究機関が発がん性の評価の引き上げを公表しました。

1万種類以上が存在するとされる有機フッ素化合物の「PFAS」のうち、「PFOA」と「PFOS」の2種類は有害性が指摘され、国内でも製造や輸入が禁止されています。

この2種類について、WHOのがんの研究機関IARCは
▽PFOAについて、4段階ある分類のうち最も高い「発がん性がある」に2段階引き上げ、
▽PFOSについては、上から3番目の「発がん性がある可能性がある」に初めて位置づけたと公表しました。

「発がん性がある」とされたPFOAについては動物実験だけではなく、人に対しての研究でがん発生のメカニズムが確認されたとしていて、同じ分類にはアスベストやたばこの煙などが含まれています。

一方、PFOSについては動物実験での証拠に限られ、人での発がんに関する証拠は不十分だったとしています。

環境省はPFASの健康影響について、国内での被害事例は確認されておらず、確定的な知見はないとしていますが、今回の公表も踏まえ、健康影響への研究を本格化させるとしています。

岐阜 各務原 住民の血液検査の結果は

PFASが各地で検出される中、水道水を供給する水源から国の暫定的な目標値の最大で2.6倍のPFASが検出された岐阜県各務原市では、医療団体が住民を対象に行った血液検査の結果が公表され、国のパイロット調査の平均値の5倍余りの濃度のPFASが検出されたことが分かりました。

岐阜県内の医療団体がことし10月から行った血液検査の結果では、問題の水源地のエリアに住む住民100人の血液中のPFASの濃度の平均値は1ミリリットル中、32.2ナノグラムで、国がおととし、全国の3地点で行ったパイロット調査の平均値の5.3倍だったことが分かりました。

問題の水源地の水道水を30年以上使い、今回、国の調査の平均より高い値が出たという68歳の女性は「びっくりしました。本当に落ち込みます。PFASを体に持ったままの生活に不安があります」と話していました。

専門家「飲料水についても厳しい値 設定も」

国のPFAS対策を話し合う専門家会議のメンバーの京都大学大学院の原田浩二准教授は「どれだけの量を体内に取り入れたら、発がん性のリスクがあるのか、今後、WHOが飲料水の値についても厳しい値を設定されることも考えられる。各務原市のように、体内に取り入れられた量が多い地域では、健康影響を評価していく必要がある」と話していました。

伊藤環境相「水質の目標値見直しの参考にしたい」

有機フッ素化合物「PFAS」の一部の物質について、WHO=世界保健機関のがん研究機関が発がん性の評価の引き上げを公表したことについて、伊藤環境大臣は5日の閣議後の会見で、「国民の不安が高まらないよう、モニタリングの強化や飲用防止の徹底などの対策を着実に進めたい」と述べました。

そのうえで、「今回のWHOの評価については、国内の水質の目標値見直しの参考にしたい」として河川や地下水などの目標値を検討する専門家会議で議論を進める考えを示しました。