刑事手続きのIT化 法制審の部会が試案 “逮捕状など電子化”

捜査や裁判など刑事手続きのIT化に向け、国の法制審議会の部会が試案を示しました。逮捕状などの作成や管理を電子化し、請求や発行などの手続きをオンラインで行えるようにするとしています。

捜査や裁判などの刑事手続きでは、書類への署名や押印に加え、対面で手渡す必要があるものも多いことから、関係者の負担軽減や、手続きの迅速化や効率化が課題となっています。

このため国の法制審議会の部会は、4日の会合で情報通信技術を刑事手続きに活用するとした試案を示しました。

それによりますと、逮捕状や調書などを電子データとして作成・管理し、請求や発行などの手続きをオンラインで行えるようにするとしています。

また検察官や弁護士、被告らを法廷に集めて行う裁判の一部を、被告が病気や障害で出頭が難しいなどやむをえない場合にかぎりオンラインで行えるとしています。

一方、弁護士との接見や裁判の傍聴について、オンラインで行うことが可能か議論が行われてきましたが、設備や体制を整えるのが難しいとして今回の試案に盛り込むことは見送られました。

法務省は、法制審議会の議論などを踏まえ、来年3月までに必要な法案を国会に提出することも視野に検討を続ける方針です。

刑事手続きIT化へ 試案のポイント

刑事手続きのIT化に向け、法制審議会で4日に公表された試案のポイントです。

捜査段階や裁判手続きの電子化

1つめは、書類で行われている捜査段階や裁判の手続きの電子化です。

逮捕状や家宅捜索をするための差し押さえ状などについて、警察官などが電子データで請求したり、裁判所が発付したりすることができるとしています。

容疑者に逮捕状などを示す時は、端末の画面などでも可能になるということです。

現在は、警察官が裁判所に出向いて書面で受け取っていますが、地域によっては移動に時間がかかるなどの指摘がありました。

試案では裁判で使われる、さまざまな調書の保管や被告への起訴状の送達なども、電子化できるとされています。

対面手続きのオンライン化

2つめは、対面の手続きをオンライン化することです。

裁判の前に、裁判官と検察官、弁護士が争点を整理する公判前整理手続きは、通常、法廷に集まって行われますが、試案では、オンラインでの「ビデオリンク方式」を利用できるとしています。

裁判の手続きでも、
▽被告が病気や障害で出頭できない場合や
▽被告に危害が加えられるおそれがあるときなど、
やむをえない時は可能だとしています。

証人尋問も、いまは性犯罪の被害者などに限定して、ビデオリンク方式を導入していますが、
▽病気などの事情で裁判所に来るのが難しい人など、
対象を拡充するとしています。

偽造など防止へ新たな罰則規定も

こうした電子データの偽造や改ざんを防ぐため、新たに罰則規定を設けることも提案しています。