【2日詳細】イスラエル軍 “1日余りで400以上の標的を攻撃”

パレスチナのガザ地区でイスラム組織ハマスに対する軍事作戦を再開したイスラエル軍は、再開後の1日余りで400以上の標的を攻撃したと発表しました。

多くの住民が避難している南部でも激しい攻撃が行われていて、ガザ地区の保健当局は戦闘再開後、ガザ地区全体で200人が死亡、580人以上がけがをしたとしています。

イスラエル軍は、合意に基づく戦闘休止の期限が過ぎた現地時間の1日朝、ハマスへの軍事作戦を再開しました。

2日朝にはSNSで戦闘再開後の1日余りでガザ地区全域で400以上の標的を攻撃したと明らかにしました。

北部のベイト・ラヒヤでは戦車や空爆によってハマスの活動拠点を攻撃したほか、南部のハンユニスでは戦闘機で50以上の標的を攻撃したとしています。

さらに、イスラエル軍のアラビア語の報道官は2日、SNSに公開したガザ地区全域を細かいエリアに分けた地図をもとに、対象の住民に対して別の地域に避難するよう通告しました。

ガザ地区からの映像には2日朝も黒い煙があがっている様子が写っていて、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは夜から朝にかけても各地で激しい空爆が行われたと伝えています。

ガザ地区の保健当局によりますと、戦闘再開後にガザ地区全体で200人が死亡し、けがをした人は589人にのぼっているとしています。

ガザ地区南部には10月に始まったイスラエル軍の攻撃から逃れるため、北部から多くの住民が避難していて、イスラエル軍が南部への攻撃を続ければ犠牲者がさらに増えることが懸念されます。

一方、ハマスの軍事部門カッサム旅団は、民間人への攻撃に対する報復としてガザ地区との境界に近いイスラエル南部のスデロットや、最大の商業都市テルアビブにロケット弾による攻撃を行ったとSNSに投稿し、今後、戦闘が激しくなるおそれがあります。

戦闘の再開後、ガザ地区への支援物資の搬入は滞っていましたが、パレスチナの赤新月社は2日、SNSで食料や水、それに医薬品などの人道支援物資を積んだトラック50台がエジプトとの境界にあるラファ検問所を通過し、物資を受け取ったと発表しました。

ただ、燃料も含めた支援物資の搬入が今後、順調に進むのかは不透明で、戦闘の再開によって、ガザ地区の人道状況がさらに深刻化することが懸念されます。

イスラエル軍 ラファへの移動をビラで通告

イスラエル軍は1日、ガザ地区南部のハンユニスの東側に位置する4つの町の住民に、さらに南にあるラファへ移動するよう通告するビラを上空からまいています。

ビラにはアラビア語で「ただちにラファにある避難所に退避せよ。ハンユニスは戦闘が行われる危険な場所だ。これは警告だ」などと書かれています。

2人の子どもと避難生活を続けている男性は「北から南に行けと言ったり、あちらからこちらに向かえと言ったり、次はどこに避難すればいいのでしょうか。電気も水も食料もありませんが、私たちは耐えるしかありません」と話していました。

イスラエル軍 地図をもとに避難通告

イスラエル軍のアラビア語の報道官は2日、SNSでガザ地区全域を細かいエリアに分けた地図をもとに対象の住民に対し、別の地域に避難するよう通告しました。

この地図は軍事作戦の再開に先立ってイスラエル軍がガザ地区全域を1000以上の細かいエリアに分けそれぞれに番号をつけて公開したものです。

投稿では▼北部ガザ市などの住民に対しては、郊外に、▼南部ハンユニス周辺に住む住民に対しては南部ラファに避難するよう通告しています。

アメリカなどはイスラエルに対し、民間人の犠牲を最小限に抑えるよう繰り返し対策を求めていて、イスラエル軍としてはこうした求めに配慮しているとアピールする狙いがあるとみられます。

国連 “イスラエル軍の空爆に加え、地上での戦闘も”

OCHA=国連人道問題調整事務所の1日の発表によりますと、戦闘が再開して以降、ガザ地区の各地でイスラエル軍による空爆に加え、地上での戦闘も行われているという報告があるということです。

また、1日の夜の時点で、ガザ地区への支援物資や燃料の搬入、けが人のエジプトへの避難ができていないとしています。

こうした中、イスラエル軍は1日、ガザ地区南部のハンユニスの一部地区に住む人に対し、南部のラファへ移動するよう求めるビラを上空からまきましたが、大きな避難の動きは見られないということです。

さらにイスラエル軍が、住民の避難の参考として1日にウェブサイトで公開した、ガザ地区を細かなエリアに分けそれぞれに番号を付けた地図について、OCHAは「地図には避難先が明示されていない。電気がなく通信も頻繁に途切れる中、ガザ地区の人々がこの地図を確認できるかは不透明だ」と指摘しています。

国連 “支援物資の提供を維持”訴え

国連によりますと戦闘休止が始まった先月24日から29日にかけてガザ地区北部に▼およそ4850トンの食料や▼1110トンの飲料水、それに▼148トンの医療物資などが搬入されたということです。

しかしパレスチナ赤新月社によりますとイスラエル軍は1日に戦闘が再開して以降ガザ地区とエジプトの境界にあるラファ検問所を通じた支援物資の搬入を認めていないということです。こうしたなかOCHA=国連人道問題調整事務所のトップ、グリフィス事務次長は、1日、声明を発表しました。

このなかでグリフィス事務次長は「戦闘の休止期間中、ガザ地区へ届けられた支援物資の量は増加していた。その量は人々が必要とする援助の表面をなぞる程度ではあったがそれでも関係機関が基本的な物資を提供し、数週間にわたって遮断されていた地域に出向き、深く傷ついた家族にいくらかの休息を提供できた」としています。

そして「ガザ地区の人々は病気、破壊、そして死に囲まれている」とした上で、「この状況は受け入れられない。私たちは支援物資の提供を維持し、さらに進める必要がある」と訴えました。

少なくとも61人の報道関係者が死亡 NPO発表

報道の自由を守る活動をしている国際的なNPO、CPJ=ジャーナリスト保護委員会は、10月7日から始まった衝突で、12月1日までに少なくとも61人のジャーナリストなど報道関係者が各地で死亡したとしています。

61人の内訳は、パレスチナ人が54人、イスラエル人が4人、レバノン人が3人だということです。

また、11人がけがをし、3人が行方不明、19人が拘束されているほか、安否が確認できていないケースも多くあるとして調査を行っているとしています。

CPJは「この悲痛な紛争を取材するため、地域のジャーナリストは多大な犠牲を払っている。ジャーナリストは民間人であり、紛争の当事者に狙われてはならない」と訴えています。

ハマスに連れ去られた人質の家族らが米訪問 解放訴える

10月7日にイスラム組織ハマスに連れ去られた人質の家族や親族が12月1日、アメリカのロサンゼルスを訪問して人質の解放を呼びかけました。

このうちテルアビブに住むオフィル・ワインバーグさんは、いとこのイタイ・スビルスキーさん(38)がガザ地区近くの集落ベエリにある両親の家を訪ねていた際にハマスに連れ去られ、安否がわかっていませんでした。

その後、戦闘の休止期間に入り、解放されたほかの人質から、スビルスキーさんがいまも生きていることを伝えられたということです。

それによりますとスビルスキーさんにけがはないものの、母親が目の前で殺害されるなど両親が死亡したことを知っていて、長い人質生活で精神的にひどく落ち込んでいるということです。

ワインバーグさんは「ともに捕らえられていた人たちは全員解放され、彼はひとり取り残されたそうです。彼は繊細で優しい人です。同じ集落にいた家族は皆殺しにされたと思い、天涯孤独だと感じていると聞いています」と声を震わせながら話しました。

そのうえで「世界が私たちに味方してくれなければ、市民を連れ去ることが新たなテロの手法として世界中に広がってしまうでしょう」と述べ、人質の解放を求める声に加わってほしいと訴えました。

イスラエル政府 国連人道調整官のビザ更新しないと通知

国連のデュジャリック報道官は1日の定例会見で、イスラエル政府が、パレスチナを担当する国連のへースティングズ人道調整官のビザを更新しないと通知してきたことを明らかにしました。

人道調整官のビザは今月中に期限を迎えるということで、デュジャリック報道官は、国連職員は世界中のどこでも、ビザが切れた状態でその国に滞在することはないと述べました。

ビザが更新されない理由は明らかになっていませんが、イスラエルは国連のグテーレス事務総長の発言がパレスチナ寄りだと主張して辞任を求めるなど、これまでも国連の対応にたびたび反発しています。

NHKガザ事務所カメラマン「ラファ周辺で10回以上の空爆」

NHKガザ事務所のカメラマンがガザ地区南部ラファ市内にある難民キャンプで撮影した映像ではイスラエル軍によるとみられる攻撃で煙が上がり、多くの人が集まってがれきのなかに閉じ込められた住民を助け出そうとする様子が確認できます。

カメラマンは「ラファ周辺では戦闘再開後1日の午前中だけで10回以上の空爆があった。戦闘の休止前よりも激しいペースだった」と話しています。

ハマス“民間人を標的にする敵に立ち向かう”

ハマスはSNSを更新し「民間人を標的にする敵に立ち向かう」などと徹底抗戦の姿勢を示しました。

また、ハマスの軍事部門カッサム旅団は民間人への攻撃に対する報復としてガザ地区との境界に近いイスラエル南部のスデロットや、最大の商業都市テルアビブにロケット弾による攻撃を行ったとSNSに投稿し、今後、戦闘が激しくなるおそれがあります。

また、戦闘の再開によって支援物資の搬入などに影響が出るおそれもあるほか、イスラエル軍は、多くの住民が避難しているガザ地区南部にも侵攻する構えを見せていて、犠牲者がさらに増えることが懸念されます。

イスラエルとハマスは先月24日から戦闘を休止し、1日までにハマス側がガザ地区で拘束していたイスラエル人と外国籍の人質合わせて105人を解放した一方、イスラエルも刑務所に収容していたパレスチナ人240人を釈放しましたが、戦闘の休止は7日間で終わりました。

ガザ地区南部のナセル病院 救急車次々と負傷者搬送

イスラエル軍が軍事作戦を再開した1日、ロイター通信が配信した映像では攻撃が行われたガザ地区南部のハンユニスにあるナセル病院に救急車が次々に入っていく様子が確認できます。

病院内の映像では、足に包帯を巻いた女の子が抱えられながら運び込まれたり、灰色の粉じんで顔が覆われた赤ちゃんが手当てを受けたりする姿が写されています。治療を受けている女の子は、「母と弟と一緒にいました。兄がどこにいるのかも分かりません」と涙を流しながら話していました。

イスラエル 人質の家族や支援者 軍事作戦再開を批判

イスラエル軍がガザ地区での軍事作戦を再開したことに、イスラエルでは人質の家族や支援者から批判も上がっています。

イスラエル政府は外国籍を含む137人がいまだにハマス側の人質になっているとしていて、イスラエル最大の商業都市テルアビブ中心部の広場には市民が連日集まり、人質が無事に解放されることを願って歌を歌ったり、ろうそくをともしたりしています。

イスラエル軍がガザ地区での戦闘を再開した1日は、家族や支援者およそ20人がまだ解放されていない人質の写真や「全員が戻るまで戦いをやめろ」などと書かれた横断幕を掲げて、戦闘の中止を訴えました。

このうち、親族が人質にとられているという男性は「いずれハマスを壊滅しなければならないのは理解しているが、人質全員を取り戻すまで数週間、あるいは数か月待てるはずだ」と話していました。

同様に、親族が解放されていないという女性は「これまでの合意をもう少し続ければより多くの人質を取り戻せると期待していたので、残念です。拘束されている人たちの健康状態がとても心配です」と涙を流しながら話していました。

また、かつてイスラエル空軍のパイロットだったという男性は「イスラエルは独裁政権ではなく政府は国民のためにあるはずだ。軍事作戦を直ちにやめ、人質全員の解放を求めるべきだ」と話し、政府への不満をあらわにしていました。

米 ブリンケン国務長官「戦闘休止終了 ハマスが約束をほご」

イスラエル軍が軍事作戦を再開したことについてアメリカのブリンケン国務長官は「ハマスが約束をほごにしたからだ」と述べ、イスラエルを支持する姿勢を改めて示しました。

アメリカのブリンケン国務長官は11月30日から1日にかけて、イスラエル、パレスチナのヨルダン川西岸、それにUAE=アラブ首長国連邦を訪れ、政府要人と会談しました。

一連の日程を終えたブリンケン長官は1日、UAEで記者団に対しエルサレムで武装した2人が市民を銃撃し3人が死亡した事件や、ロケット弾の発射をあげたうえで「戦闘の休止がなぜ終了したかが大切だ。それはハマスが約束をほごにしたからだ」と述べ、イスラム組織ハマスが戦闘の休止期間中に攻撃を行ったなどとして、戦闘を再開したイスラエルを支持する姿勢を改めて示しました。

また、ブリンケン長官は民間人の保護と人道支援の継続が不可欠だと強調した上で「イスラエルはきょう速やかに、安全な場所の情報を提供するなどの対策を取り始めている。イスラエルは民間人を保護するためにあらゆる措置を講じようと、さまざまな計画を立てている」と述べました。

一方、アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズがイスラエルが10月7日のハマスの攻撃の情報を1年以上前から把握していたと報じたことについて記者団から問われると「誰がいつ何を知っていたか、全容を明らかにする機会はあるだろう」と述べました。

パレスチナ赤新月社「イスラエル軍が支援物資の搬入を禁止」

パレスチナ赤新月社は1日、SNSで、イスラエル軍が、ガザ地区とエジプトの境界にあるラファ検問所を通じた支援物資の搬入をできないようにしていると明らかにしました。

それによりますと、イスラエル軍は、ラファ検問所で活動するすべての団体に対して、支援物資を積んだトラックのエジプト側からガザ地区への通行を1日から「さらなる通知があるまで禁止すると通告した」ということです。

パレスチナ赤新月社は、支援物資の搬入の禁止は、民間人の苦しみを悪化させ、人道支援を行う団体がより困難な課題に直面することになるとして、できる限り早く物資の搬入を認めるよう求めています。

COP28首脳級会合でも懸念の声

イスラエル・パレスチナ情勢について、気候変動対策を話し合う国連の会議、COP28の首脳級会合でも、アラブ諸国の首脳などから懸念の声があがりました。

このうち、中東のヨルダンのアブドラ国王は「私たちの周りで起きている人道的な悲劇と気候変動を切り離して語ることはできないことを、これまで以上に認識しなければならない。私たちがこうしている間にも、パレスチナの人々の暮らしと命は差し迫った脅威に直面している。戦争による大規模な破壊は水と食料不足という環境上の脅威をさらに深刻にしている」と訴えました。

そのうえで「気候変動への対応について話し合うため、私たちはここに集まっているが、最も弱い立場の人たちについても話し合おう」と述べ、深刻化するガザ地区の人道危機への対応についてもCOP28で協議すべきだという考えを示しました。

また、トルコのエルドアン大統領は「気候危機を議論する一方で、私たちのすぐ隣のパレスチナで起きている人道危機を無視することはできない。1万6000人以上の罪のない民間人の命を奪ったイスラエルの攻撃は、その大多数が子どもと女性であり、決して正当化されるものではない」として、ガザ地区への攻撃を行っているイスラエルを非難しました。

さらにヨーロッパのスロベニアのムサル大統領は「ガザやウクライナでは壊滅的な人道的大惨事と生態学的災害となっている」と述べ、紛争は直接的な人的被害に加え、環境破壊にもつながっているとして懸念を示しました。

岸田首相 “事態の鎮静化へ外交努力続ける”

岸田総理大臣は訪問先のUAE=アラブ首長国連邦で記者団に対し「一連の首脳会談では人道状況の深刻さに対する懸念を伝え、『戦闘の再開は極めて残念で、合意への復帰と事態の早期の沈静化が重要だ』と述べて、各国の理解と連携を呼びかけた。各国首脳からはパレスチナや周辺国へのわが国の支援に対する高い評価が示され、期待の大きさも感じた」と述べました。

その上で「今後も状況は予断を許さないが、人質の早期解放や人道状況の改善、事態の沈静化を働きかけ、G7の場を含め外交努力を続けていきたい」と述べました。

イラン「イスラエルが作戦再開すれば激しい反撃」

イスラエル軍が軍事作戦を再開したことを受けて、ハマスを支援しているイランの外務省のキャンアニ報道官は1日、声明を出しました。

声明では「イスラエルがアメリカ政府の支援を受けて殺人を再開した」として、イスラエルに加え、戦闘を再開したイスラエルを支持する姿勢を示したアメリカに対しても、非難の矛先を向けました。

その上で「世界中の多くの国や人々が戦闘休止の継続とガザ地区やヨルダン川西岸への攻撃を完全にやめることを求める中、イスラエルは女性や子ども、市民を殺害することで勝利を追い求めようとしている」としています。

また、イラン外務省によりますと、アブドラヒアン外相はオマーンの外相と電話会談を行い、「イスラエルの軍事作戦をとめるにはイスラム諸国が結束することが必要だ」と強調したということです。

その上で「もしイスラエルが軍事作戦を再開すれば、これまでより激しい反撃を受けることになると抵抗勢力の指導者たちから聞いている」と述べ、今後、イランが中東各地で支援する武装組織によるイスラエルや、アメリカ軍への攻撃が激化する可能性を示唆して、けん制しました。

イスラエル政府の報道官 “137人がいまだに人質”

イスラエルがパレスチナのガザ地区への軍事作戦を再開する中、イスラエル政府の報道官は1日の会見でハマスが解放する人質のリストを提出せず1日朝、ロケット弾を発射したと非難し、戦闘休止が終わったのはハマスの責任だと主張しました。

会見で報道官は「ハマスは義務づけられていた女性の人質全員と子どもの解放をせず、ロケット弾の攻撃を再開し、戦闘の休止を終えることを決めた」と述べました。

また、外国籍を含む137人がいまだにハマス側の人質になっていると明らかにしました。

内訳は、子どもを含む男性が117人、女性が20人だとしています。

この中には75歳以上の人も10人いるとしています。

一方、戦闘休止期間の前も含めこれまでに外国籍を含む110人が解放されたとしています。