“新たに16人の人質解放”戦闘休止の延長めぐり交渉続く

イスラエルとイスラム組織ハマスによるガザ地区での戦闘休止は、期間のさらなる延長をめぐって29日深夜も関係国の仲介で交渉が続けられている模様です。イスラエルのネタニヤフ首相が休止期間が終わり次第、軍事作戦を再開する姿勢を示す中、交渉を通じて戦闘休止が30日以降も維持されるかが焦点となっています。

イスラエル軍は29日夜、ハマス側に拘束されていた人質のうち、イスラエル人とタイ国籍のあわせて16人が新たに解放されたと発表しました。

イスラエルとガザ地区を実効支配するハマスは11月24日から6日間にわたって戦闘を休止し、ハマスが人質を段階的に解放する一方、イスラエル側も刑務所に収容しているパレスチナ人を釈放することで合意しています。

戦闘休止の6日目にあたる29日夜、イスラエル軍はハマス側に拘束されていた人質のうち
▽イスラエル人12人
▽タイ国籍4人のあわせて16人が新たに解放されたと発表しました。

戦闘休止のさらなる延長に向けて仲介役を務めるカタールの首都ドーハではアメリカのCIA=中央情報局とイスラエルの対外工作活動を担う情報機関モサドのトップなどの間で29日深夜も話し合いが続けられている模様です。

こうした中、イスラエルのネタニヤフ首相はSNSに投稿した動画で「最後まで戦闘に戻らないことはない。それが私の政策で、政府全体、兵士たち、そして人々が支えている」などと述べ戦闘休止の期間が終わり次第、ガザ地区での軍事作戦を再開する姿勢を示しました。

ハマス“高齢のパレスチナ人の釈放要求”

イスラム組織ハマスの幹部は29日夜、声明を発表し「戦闘休止の延長に向けた努力はまだ実っていない。これまでのところ延長に値するような提案は示されていない」としてイスラエルとの交渉は進展していないという見方を示しました。

その上で「イスラエル軍が高齢のパレスチナ人を交換要員にする意向を表明すれば、われわれは応じる用意があり、それは戦闘休止の延長を意味する」として、イスラエルの刑務所に収容されている高齢のパレスチナ人たちを釈放するよう要求しました。

“パレスチナ人の子ども含む4人死亡”ヨルダン川西岸

イスラエル軍はヨルダン川西岸のパレスチナ暫定自治区のジェニンで軍事作戦を行い、パレスチナ側によりますとパレスチナ人の8歳と15歳の子ども2人を含む少なくとも4人が死亡しました。

イスラエル軍は28日夜から29日にかけて、ジェニンの難民キャンプなどで軍事作戦を行い、発表によりますとパレスチナの武装組織「イスラム聖戦」の幹部2人を殺害したとしています。

一方、パレスチナ側によりますと、この作戦でパレスチナ人少なくとも4人が死亡し、このうち2人は8歳と15歳の少年でイスラエル軍の銃撃で死亡したということです。

イスラエルの有力メディアハーレツは少年2人の死亡についてイスラエル軍の話として「兵士に爆発物を投げたためだ」と伝えていて現地では緊張が高まっています。

11月24日に始まったイスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘休止などの合意によってヨルダン川西岸ではこの5日間で合わせて180人のパレスチナ人が刑務所から釈放されましたが、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、これを上回る少なくとも203人がヨルダン川西岸や東エルサレムで新たに拘束されたと伝えています。

UNRWA現地代表“より長期の戦闘休止が必要”

ガザ地区で人道支援にあたる国連機関の現地代表がNHKのインタビューに応じ、戦闘の休止期間を利用してガザ地区北部に支援物資を届けることができたものの、食料も生活物資も足りていないとして、より長期の戦闘休止が必要だと訴えました。

UNRWA(アンルワ)=国連パレスチナ難民救済事業機関は、食料を配給したり、学校を運営したりしてガザ地区の住民の7割を占めるパレスチナ難民の生活を支えています。一連の衝突後は100人以上の職員やスタッフが戦闘で死亡するなかでも、学校などを利用して避難所を運営し、ガザ地区全体で100万人以上が身を寄せています。

こうしたなかガザ事務所のトーマス・ホワイト所長が、ガザ地区南部のハンユニスにある避難所の1つでNHKのインタビューに応じました。

北部の避難所には、いまだに10万人近くがとどまっていて、これについてホワイト所長は「戦闘の休止期間中にガザ地区北部で困難な状況にある住民にも人道支援物資を届けることができた」と述べました。

ただ「避難者に必要な食料や衛生用品、ブランケットなどの生活物資は足りていないのが現実だ」と述べ「ラファ検問所を通じた人道支援物資の搬入を続けるために圧力をかけ続けることと、より長期間の戦闘休止に向けた働きかけを国際社会には求めたい」と訴えました。

さらにホワイト所長はイスラエル政府が戦闘休止期間のあとに、ガザ地区南部にも地上侵攻を拡大する姿勢を示していることについて「大規模な戦闘が再開し、それが北部だけでなく南部でも起きることを強く懸念している。北部での死と破壊は驚愕するレベルでこの戦争は終わらせなければならない」と述べ、甚大な人道危機を引き起こすことにつながると懸念を示しました。