【27日詳細】戦闘休止4日目 合意延長が実現するかが最大の焦点

イスラエルとイスラム組織ハマスが合意した戦闘の休止は4日目に入り、合意した期間の終了が近づいています。双方は合意の延長に前向きと取れる姿勢を示していますが、条件をめぐって激しい駆け引きが続いているとみられ、延長が実現するかどうかが最大の焦点となっています。

※イスラエルやパレスチナに関する動きを随時更新でお伝えします。

バイデン大統領 ネタニヤフ首相と電話会談 “合意継続を望む”

アメリカのホワイトハウスは26日、バイデン大統領がイスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談したと発表しました。

電話会談では、バイデン大統領が、過去3日間にわたるイスラム組織ハマスによる人質の解放を歓迎するとともに、両首脳が、戦闘の休止や、必要性が一段と増しているガザ地区への追加の人道支援について議論したとしています。

そのうえで、「仕事はまだ終わっておらず、両首脳はすべての人質の解放が実現するまで努力を続けることで合意した」としています。

バイデン大統領は26日に行った緊急の記者会見のなかで、イスラエルとハマスの合意について「イスラエルは、人質が10人解放されるごとに戦闘の休止を1日延長する用意があるとしている。合意が終わるのではなく、継続されることを望む」と述べ、今後も人質の解放が続き、4日間の戦闘の休止期間が延長されることに期待を示しました。

ネタニヤフ首相“人質解放のために戦闘休止延長は望ましい”

イスラエルのネタニヤフ首相は26日、SNSに投稿した動画で、イスラム組織ハマスとの戦闘休止の期間について「1日ごとに、さらに人質10人の解放を可能にする枠組みもある。それは歓迎すべきことだ」と述べ、より多くの人質を解放するために休止期間を延長するのは望ましいという考えを示しました。

その一方で「アメリカのバイデン大統領には電話会談で人質全員の解放とともに、その枠組みのあとにハマスのせん滅と、ガザが以前の状態に戻らないようにするという目標を全力で実現することも伝えた」と述べ、ハマスとの完全な停戦はしないと強調しました。

ガザ地区 燃料搬入も不足訴える声

イスラエルとハマスの戦闘休止にともなって、ガザ地区には3日連続で燃料の搬入が行われていますが、人道危機を改善するには十分とは言えない状況が続いています。

NHKガザ事務所のサラーム・アブタホンカメラマンが26日、ガザ地区南部のラファ市内にある調理用のガスの販売所で撮影した映像には、この日の未明から1000人以上の住民たちがガスを求めて列を作っている様子が確認できます。

午前11時ごろにラファ検問所を通過して燃料を積んだ車が到着すると、待っていた人たちは歓声をあげていました。

通常では容器には12キロのガスが入れられますが、この日はより多くの人に配給するため1人あたり6キロに限られ、数百人が提供を受けたということです。

ガザ地区の南部では多くの家庭が北部から避難してきた親戚や友人を受け入れていることから、必要なガスの量が2倍から3倍以上に増えていて、6キロのガスでは数日分の調理しかできず、引き続き燃料不足を訴える声があがっているということです。

ガスを買いに来た男性は「20日前からガスがなくて、まきを使っています。午前3時から8時間、ここで待っていますが、このまま何も手に入らずに家に帰るかもしれない。この苦しみは世界で最も過酷なものです」と訴えていました。

また別の女性は「家にガスがなく、料理やパンを焼くのにまきを使っている。もうすぐ戦争が始まって2か月になるのに、ガスが手に入らない。70年間生きてきてこんなに苦しくつらいことは初めてです」と話していました。

ハマス 人質解放の映像を公開

ハマスの軍事部門カッサム旅団は26日、SNSで、人質の第3陣を解放した際のものだとする映像を公開しました。

映像では、顔を隠し銃を携行した戦闘員が車で移動している様子や、戦闘員が囲む中で複数の子どもや女性が赤十字の車に乗り込む様子などがうつっています。

別れ際には戦闘員が女性や子どもにしきりに手を振っていて、人質を丁重に扱い友好的な雰囲気だったと強調する意図もみられます。

バイデン大統領 戦闘休止延長に向け外交努力

アメリカのバイデン大統領は26日、東部マサチューセッツ州内の休暇先で緊急の記者会見を開き、イスラム組織ハマスが26日に解放した人質のなかにアメリカ国籍の4歳の女の子が含まれていたことを確認したと明らかにし、「私自身と私のチームの何週間にもわたる懸命な努力の結果だ」と強調するとともに、人質の解放に尽力してきたカタール政府に謝意を示しました。

そして、イスラエルとハマスのあいだの合意について「絶対に必要な援助物資が住民に届けられ、人質が解放されており、人命を救う結果をもたらしている。依然として機能しており、こうした結果を積み重ねることで合意を延長することは可能だ。戦闘休止の期間が過ぎてもこの状態を続けることこそが、われわれの目標だ」と述べ、カタールやエジプト、イスラエルの各政府とともに、さらなる人質の解放と戦闘休止の延長に向けて外交努力を続ける考えを示しました。

また、安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は、26日に放送されたABCテレビのインタビューのなかで「イスラエル政府は、ハマスが人質を10人解放するごとに戦闘休止を1日延長する用意があるとしてきた。戦闘休止が終わるならそれはハマスの責任であり、イスラエルの責任ではない」と述べました。

ハマスは17人を解放 イスラエルもパレスチナ人39人を釈放

イスラエルとハマスは、今月24日から4日間にわたって戦闘を休止し、ハマスがガザ地区で拘束してきた人質のうちイスラエル人の子どもや女性50人を解放する一方、イスラエルは刑務所に収容しているパレスチナ人150人を釈放することなどで、合意しています。

戦闘休止3日目にあたる26日、ハマスはイスラエル人14人とタイ人3人の合わせて17人を、解放しました。

解放されたイスラエル人の1人はロシア国籍も持っているということで、イスラエルメディアは、ロシア側の求めに応じた解放で、イスラエルとの合意に基づくものではないという見方を伝えています。

前日の25日には、ハマスが支援物資が合意のとおりガザ地区に搬入されていないと主張して解放を遅らせましたが、26日は大きな混乱はありませんでした。

また、ハマスは今回、ガザ地区の南部ではなく北部で人質を赤十字に引き渡していて、ハマスが北部で軍事力を失いつつあるというイスラエル側の主張を、けん制するねらいもあると見られます。

一方、イスラエル政府も26日、刑務所に収容していたパレスチナ人39人を釈放したと発表しました。

戦闘休止の期間が最後の1日となるのを前にハマスは26日、声明を出し、「このあとも解放する人質の数を増やすことで、戦闘休止の期間を延長したい」として、人質を段階的に解放するのと引き換えに戦闘休止の延長を求めていく考えを示しました。

一方、イスラエルのネタニヤフ首相は26日、ガザ地区に展開している部隊を視察し、「戦争の目標は、ハマスのせん滅、人質全員の奪還と、ガザ地区が二度とイスラエルの脅威にならないようにすることだ。誰もわれわれを止めることはできない」と述べ、軍事作戦を続ける姿勢を改めて強調しました。

しかしイスラエル国内では、まだ解放されていない人質の家族などから戦闘休止を延長するよう求める声も上がっていて、今後のイスラエル側の対応が焦点となります。

人質だった親戚から聞いた拘束時の状況は

これまでに解放された人質はイスラエルの病院で健康状態の確認などが行われていて、まだメディアの取材には直接、応じていませんが、地元メディアなどは人質の家族などを通じて拘束されていたときの状況を伝えています。

このうち親戚3人が人質になっていたメラブ・ラビブさんは人質だったいとことおばから話を聞きました。

食事については「食事は不規則に与えられ、主に米とパンを食べていた。いとことおばは50日間でおよそ7キロも体重が減った」ということです。

また過ごしていた場所については「応接間のようなところに並べられたいすの上で寝ていた。トイレに行きたいときはドアをノックして、時には数時間も待たなければならなかった」と話していますが、地下トンネルの中だったのかなど詳細は話していません。

パレスチナ囚人協会「釈放された少なくとも4人は“行政拘束”」

イスラエルはハマスとの合意に基づきパレスチナ人の女性と子どもあわせて117人を刑務所から釈放しました。

地元の人権団体「パレスチナ囚人協会」はNHKの取材に対して、釈放された人のうち少なくとも4人の女性は、イスラエル当局が裁判所の判断や根拠を示すことになくパレスチナ人を刑務所に事実上、無期限に収容することを可能にする「行政拘束」と呼ばれる措置で、拘束されていたと明らかにしました。

こうした中、行政拘束によって拘束され、24日に釈放されたハナン・バルグーシさん(59)がNHKの取材に応じました。

バルグーシさんは「ことし9月にハマスへの関与を疑われて真夜中に突然イスラエル軍が自宅に押し入ってきた。目隠しと手錠をされて刑務所に連行された」と拘束されたときの状況を説明しました。

ハマスによる大規模攻撃が起きた先月7日以降はトイレやシャワーの利用が制限され、6人部屋に11人が収容され、換気用の窓も閉じられるなど劣悪な環境に置かれていたと証言しました。

自身が釈放されたことについて「うれしいが、息子4人も行政拘束で刑務所に収容されていて、惨めな気持ちだ」と話していました。

中東の衛星テレビ局アルアラビーヤは26日「イスラエルの刑務所に収容されている7000人のうち3分の1にあたる2200人のパレスチナ人が裁判などの刑事手続きを経ずに数か月から数年にわたって拘束されている」と伝えています。

タイ首相 “ガザ地区で拘束の人質3人 新たに解放”

タイのセター首相は27日に自身のSNSで、26日にイスラム組織ハマスがパレスチナのガザ地区で拘束していたタイ人の人質3人が第3陣として、新たに解放されたと発表しました。

これまでに解放されたタイ人の人質は、24日の第1陣の10人、25日の第2陣の4人と合わせて17人となりました。

タイ外務省 25日までに解放されたタイ人たちの写真公開

タイ外務省は、26日、ハマスによってガザ地区で人質にされ、25日までに解放されたタイ人たちの写真を公開しました。

写真はイスラエルの病院で撮影され、解放された人たちがイスラエルの関係者と笑顔でことばを交わしている姿が確認でき、このうちの1人は関係者と抱き合い、喜びをかみしめているようでした。

解放されたタイ人 ビデオ電話で「お母さんに早く会いたい」

イスラエル南部のガザ地区の周辺ではおよそ5000人のタイ人が働いていたと見られ、先月7日の、ハマスによる襲撃では39人が死亡し、32人が人質になったとみられています。

タイ政府によりますと、このうち17人のタイ人が今月24日から26日までの3日間で解放され、現在はイスラエルの病院で健康状態の確認が行われています。

その1人のナタワリー・ムンカンさんは26日、ビデオ電話でタイ東北部にいる母親のブンヤリンさんと初めて会話しました。

このなかでブンヤリンさんが「あなたが拷問されていないか心配で仕方なかったが、元気な姿を見ることができてほっとした」と語りかけると、ナタワリーさんは「私は元気で大丈夫だったので何も心配しないで。所持品はすべて失ってしまったけどお母さんに早く会いたい。もうすぐ家に帰って会えるね」などと応えていました。

ブンヤリンさんは「何も残っていなくてもあなたが生きて帰ってきてくれるだけで十分。あなたの身が安全で、私はうれしい」と涙ながらに語り、2人は解放された喜びをかみしめていました。

ガザ地区の近くでは27日の時点で依然、15人のタイ人が人質となっているとみられ、タイ政府は解放を働きかけ続けるとともに、イスラエル政府と調整してすでに解放された人たちの帰国を急いでいます。

拘束されていた息子「解放されて生まれ変わった気がする」

タイ東北部に住むブンチョープ・コンマニーさんはイスラム組織ハマスに拘束されていた息子のバンチャーさん(42)と26日、ビデオ電話で話しました。

拘束されていたときの状況についてたずねたところバンチャーさんは「解放されて新しい人生を得て生まれ変わった気がする」と答え、しばらくの間、電話口で泣いていてそれ以上詳しいことは話さなかったということです。

ブンチョープさんは「息子は少し痩せたようだった。拘束されていたときは食欲もなかったのだろう。ここの暮らしは貧しいけれど、もう息子をどこにも行かせるつもりはない。息子が解放されて、宝くじで1等賞が当たった気分です」と話していました。

ロシア外務省報道官「ハマスとの直接の合意によるもの」

ロシア外務省のザハロワ報道官は26日、SNSで声明を発表し、解放された中にロシア国籍をもつ1人が含まれていることを明らかにし、「ハマスと交渉を続けてきた外交官の努力が実を結んだ。この解放はイスラエルとハマスの取り引きの枠組みの外で行われたものであり、ロシアとハマスとの直接の合意によるものだ。今後もこの作業を続けていく」としています。

ロシア外務省は先月、イスラム組織ハマスの幹部をモスクワに招いて協議していて、ロシアが欧米諸国とは一線を画しハマスとも独自の関係を築いてきた外交成果を強調するねらいもあるとみられます。

松野官房長官「長期にわたって戦闘休止継続が重要」

松野官房長官は午後の記者会見で「イスラエル、ハマス双方とも戦闘休止の延長に前向きな立場を表明していると承知している。引き続き合意が着実に実施されるとともに、さらに長期にわたって戦闘休止が継続することが重要だ」と述べました。

その上で「情勢の推移は予断を許さないものの、わが国としては引き続き関係国や国際機関と意思疎通を行い、事態の早期沈静化に向けた外交努力を積極的に続けていく」と述べました。