日中韓外相会議 “首脳会議 適切な時期開催へ”作業加速で一致

日中韓の外相会議が韓国で開かれ、2019年を最後に開かれていない3か国の首脳会議を、できるだけ早く適切な時期に開催するため、作業を加速させることで一致しました。

対面では4年ぶり 日中韓3か国による外相会議

対面では4年ぶりとなる日中韓3か国による外相会議には上川外務大臣、中国の王毅外相、韓国のパク・チン(朴振)外相が出席し、26日午後3時すぎから1時間半余り、韓国のプサン(釜山)で行われました。

冒頭、上川大臣は「3か国は隣国であるがゆえに困難な問題に直面することもある。大局的な観点に立って3か国の協力を再スタートさせる契機としたい」と述べました。

そして、3か国が未来志向で実務的な協力を進めていくことが地域と世界の平和と繁栄に重要だという認識で一致しました。

さらに、経済・貿易や平和・安全保障など6つの分野で協力を進めることを確認しました。

また、会議では軍事偵察衛星を打ち上げたとする北朝鮮への対応をめぐって意見を交わし、上川大臣は「朝鮮半島の完全な非核化に向け、国連安保理決議の完全な履行を含めしっかりと取り組むべきだ」と指摘しました。

イスラエル・パレスチナ情勢について3氏は、ガザ地区での人道状況の改善が重要で、外交努力を重ねる必要があるという認識で一致しました。

そして、2019年を最後に開かれていない3か国の首脳会議をできるだけ早く、適切な時期に開催するため、作業を加速させることで一致しました。

会議のあと、上川大臣は記者団に対し、「国際社会が大きな挑戦と変動を経験し、歴史の転換点にあるいま、きたるサミット=首脳会議が目に見える成果のある会議となるよう、引き続き連携していく」と述べました。

一方、当初予定されていた共同記者発表や晩さん会は中止となり、日本政府関係者は「中国側の都合によるものだ」と説明しています。

中国外相 “3か国の協力を正しい軌道に戻し継続的発展を”

会議の冒頭で中国の王毅外相は「世界経済がいま大きな課題に直面している中、3か国は地域と世界の発展に積極的な役割を果たすべきだ。中国は一衣帯水の隣国として、引き続き、韓国と日本とともに努力し、3か国の協力を正しい軌道に戻し、健全で安定的かつ継続的な発展を推し進めていく」と述べました。

中国外務省 3か国首脳会議へ“準備作業緊密に進めることで合意”

中国外務省は、日中韓の外相会議について、3か国の首脳会議の開催に向けて条件を整え、準備作業をさらに緊密に進めることで合意したと発表しました。

一方で、会議のなかで王毅外相は今後の3か国協力のあり方を巡り「最も重要なのは歴史を直視し、互いの発展の道筋と核心的な利益を尊重し、デリケートな問題に適切に対処することだ」と述べたということです。

さらに「3か国の協力によって東アジアの協力をリードすべきであり、地域協力が陣営の対立になることに反対すべきだ」とも強調し、台湾海峡や南シナ海などを巡ってアメリカとの連携を重視する日本と韓国をけん制したものとみられます。

このほか、王外相は朝鮮半島の情勢について「緊張が続くことはどの当事者の利益にもならない。緊張を緩和させ対話を再開させるために必要な条件を整え、有意義な行動をとることが急務だ」と述べたということです。

韓国外相 “会議が開かれ正常化に向かうことは意義ある”

韓国のパク・チン外相は会議の冒頭「韓国・日本・中国は大変、大きな潜在力を持っているにもかかわらず、これまでの協力は国際情勢や2国間関係によりうまくいかなかった。きょう、4年3か月ぶりに会議が開かれ、正常化に向かうことはとても意義がある。きょうの会議をもとに、3か国の協力の頂点である首脳会議が早期に開かれるようともに努力していくことを期待する」と述べました。

また、北朝鮮による「軍事偵察衛星」の打ち上げについて、朝鮮半島と北東アジアの平和と安定を脅かしたとした上で、「朝鮮半島の平和と安定は3か国共通の利益であり、北東アジアの平和と安定の必須条件だ。問題の解決に向けた協力について深く議論することを期待する」と述べました。

韓国外相“何よりも首脳会議を早期に開くことが必要”

会議のあと、韓国のパク・チン外相は記者団の取材に応じ、「3か国の協力が完全に正常化するためには、何よりも首脳会議を早期に開くことが必要だと強調した」と述べました。

そのうえで、3か国の首脳会議について、「お互いの都合がよい最も早い時期に開くことを改めて確認した」と述べ、準備を加速化させることで一致したと明らかにしました。

また、北朝鮮に関連して、弾道ミサイルの発射や核開発は地域の最も大きな脅威の1つだと強調したうえで、北朝鮮の非核化に向けて3か国がさまざまなレベルで連携していくことを確認したと述べました。

さらに、パク外相は韓国がプサンでの開催を目指している2030年の万博の誘致について、日本と中国に支持を求めたということです。

韓国メディア “来年初めの開催に向け準備が進んでいる”

日中韓3か国の首脳会議について韓国政府の関係者は記者団に対し、「現時点で日程について合意したものはない。いくつかの案で調整中だ」と述べるにとどまりました。

複数の韓国メディアは、時間が足りないため、年内の首脳会議開催は事実上難しくなったとして、来年初めの開催に向けて準備が進んでいると伝えています。

《日韓外相が会談》

日中韓外相会議に先立って、上川外務大臣は26日午前9時からおよそ1時間半、パク・チン外相と会談しました。

会談で上川大臣は慰安婦問題をめぐり、3日前の今月23日に韓国の高等裁判所が日本政府に賠償を命じる判決を言い渡したことについて、「主権国家がほかの国の裁判権に服さないとする国際法上の『主権免除』の原則が否定され、極めて遺憾だ」と述べました。その上で、国際法違反の状態を是正するため適切な措置を講じるよう求めました。

一方、両外相は今月21日に北朝鮮が「軍事偵察衛星」だとする物体を打ち上げたことについて、関連する国連安保理決議の明白な違反だとして強く非難しました。

そして、北朝鮮が弾道ミサイルなどの発射を繰り返していることに深刻な懸念を共有し、引き続き、日韓、日米韓3か国で連携して対応していくことを確認しました。

また、上川大臣は拉致問題の早期解決に向けた韓国政府の一貫した支援に謝意を示し、両外相は拉致問題を含む北朝鮮の人権問題について緊密な連携を確認しました。

両外相は日中韓3か国の首脳会議の早期開催に向けて、引き続き、連携していくことを確認しました。

韓国外相 慰安婦問題めぐる判決 “2015年の慰安婦合意尊重”

韓国政府の関係者によりますと、パク・チン外相は上川外務大臣が慰安婦問題をめぐる韓国の高等裁判所の判決は極めて遺憾だとして適切な措置を講じるよう求めたのに対して、「最終的かつ不可逆的な解決」を日韓両政府で確認した2015年の慰安婦合意を尊重する立場を示したということです。

そして、「被害者たちの名誉と尊厳を回復するため両国が努力すべきだ」としたうえで、未来志向の関係を模索すべきだという趣旨の発言をしたということです。

《中韓外相が会談》

北朝鮮が「軍事偵察衛星」の打ち上げに成功したとする中、中国の王毅外相は訪問先の韓国でパク・チン外相とおよそ2時間にわたって会談しました。

韓国政府の関係者によりますと、この中でパク外相は北朝鮮による「軍事偵察衛星」の打ち上げなどに触れ、「北が挑発をやめて非核化に進むことが韓国と中国の共同利益であり、中国に建設的な役割を果たしてほしい」と述べました。

中国外務省によりますと、これについて王外相は「中国は一貫して北東アジア情勢の緩和のために建設的な役割を果たしてきたし、今後も果たし続ける」と述べ、協力していく姿勢を示しました。

一方で、王外相は「中国は大きな市場を有しており、今後、さらに高い水準で開放していく」と強調し、中国経済の先行きに不透明感が広がり、外国企業からの投資が減少傾向にある中で、韓国からの投資に期待を示しました。