北朝鮮発射 “地球周回軌道への衛星投入 確認されず” 政府

北朝鮮は21日夜、衛星の打ち上げを目的に弾道ミサイル技術を使用したものを発射しました。政府は現時点では、地球の周回軌道への衛星の投入は確認されていないとしてますが、引き続き、情報収集や分析を行うことにしています。

政府によりますと、北朝鮮は21日午後10時43分ごろ、北朝鮮の衛星発射場がある北西部のトンチャンリ(東倉里)から、衛星の打ち上げを目的として弾道ミサイル技術を使用したものを南の方向に発射しました。

防衛省によりますと、発射されたものは複数に分離し、このうち1つ目は午後10時50分ごろ朝鮮半島の西およそ350キロの東シナ海の予告落下区域の外に落下したということです。

また、2つ目は午後10時55分ごろ、沖縄本島と宮古島の間の上空を通過し、午後10時57分ごろ、小笠原諸島の沖ノ鳥島の南西およそ1200キロの日本のEEZ=排他的経済水域の外側の太平洋に落下したということです。2つ目の落下地点は予告落下区域の内側だということです。

政府は現時点では地球の周回軌道への衛星の投入は確認されていないとしています。

政府関係者によりますと、軌道に投入される速度に達していないとみられるということですが、引き続き、防衛省を中心にアメリカと緊密に連絡をとるなどして、情報収集や分析を行うことにしています。

防衛省 打ち上げ成功したかどうかなど 詳しく分析

防衛省によりますと、日本に関係する船舶などへの被害の情報はなく、自衛隊による破壊措置は実施していないということです。

北朝鮮はことし5月と8月に人工衛星の打ち上げに失敗していて、防衛省は今回、打ち上げに成功したかどうかなど詳しい情報の分析を進めています。

防衛省によりますと、軍事偵察衛星や地球観測衛星を地球の周回軌道に投入するためには、一般的には秒速7.9キロ以上の速度が必要だということです。また、衛星としての機能を果たすためには地上との通信などが必要で、防衛省は今回発射されたものについて、速度や通信の状況などを分析しているものとみられます。

北朝鮮 “軍事偵察衛星の打ち上げ成功”と発表

北朝鮮の国家航空宇宙技術総局は軍事偵察衛星「マルリギョン(万里鏡)1号」を搭載した新型ロケット「チョルリマ(千里馬)1型」を、21日午後10時42分に北西部の「ソヘ(西海)衛星発射場」から打ち上げ、正確に軌道に進入させることに成功したと22日未明、国営の朝鮮中央通信を通じて発表しました。打ち上げにはキム・ジョンウン(金正恩)総書記が立ち会ったとしています。

米国防総省 副報道官「成功したかどうかは分析中」

北朝鮮が軍事偵察衛星を打ち上げ、正確に軌道に進入させることに成功したと発表したことについて、アメリカ国防総省のシン副報道官は21日、記者会見で、「情報は把握している。成功したかどうかについては分析中だ」と述べました。

そのうえで、「地域を不安定化させる行動だ」と北朝鮮を非難し、日本や韓国との連携を一段と強化する考えを示しました。

日米韓の高官 電話協議で強く非難

北朝鮮の発射を受けて、外務省の鯰アジア大洋州局長はアメリカ国務省のジュン・パク北朝鮮担当特別代表代行、韓国外務省のキム・ゴン(金健)朝鮮半島平和交渉本部長と電話協議を行いました。

この中で3氏は、発射は衛星の打ち上げを目的とするものであっても、関連する国連安保理決議に明白に違反しているとして、強く非難しました。

そして、地域の安全保障にとって重大で差し迫った脅威であり、国際社会に対する深刻な挑戦だとして、引き続き、3か国で緊密に連携して対応していくことを確認しました。

米報道官「北朝鮮を強く非難する」

アメリカ・ホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議のワトソン報道官は声明を発表し、「北朝鮮の弾道ミサイル技術を使った発射を強く非難する。これは国連安保理決議に違反し、地域の安全保障情勢を不安定化させるおそれがある」として非難しました。

また、「今回の発射は北朝鮮の大陸間弾道ミサイル開発に直接、関連する技術を使ったものだ」と指摘し、同盟国などと連携しながら状況を分析しているとしました。

そして、「外交の扉は閉ざされたわけではないが、北朝鮮はただちに挑発的な行動をやめ、対話を選ばなければならない。アメリカはアメリカ本土の安全と、同盟国である韓国と日本の防衛を保障するため、あらゆる手段を講じる」と強調しました。

沖縄 玉城知事「通告期間前に発射を強行 大変遺憾」

沖縄県は22日午前8時半から危機管理対策本部会議を開きました。

はじめに県の幹部が、昨夜10時46分にJアラート=全国瞬時警報システムで沖縄県を対象に情報が発信されて以降の経緯について報告しました。

続いて、県警察本部や県の各部局から、これまでに被害や落下物の情報は寄せられていないことが報告されました。

報告を受けたあと玉城知事は「事前に発射期間を通告していたにもかかわらず、通告期間前に発射を強行し、沖縄上空を通過するなど、県民に大きな不安を与えたことは大変遺憾と言わざるを得ない」と述べました。その上で、各部局などに対し、引き続き、情報収集をあたることを指示しました。

官房長官 2回目の会見「周回軌道へ衛星投入 確認されず」

北朝鮮による発射を受けて、松野官房長官は22日午前1時ごろから、2回目となる臨時の記者会見を開きました。そのなかで、「地球の周回軌道への衛星の投入は確認されていない。現時点では被害情報も確認されていない」と述べました。

また、「北朝鮮は21日午後10時43分ごろ、北朝鮮北西部沿岸地域のトンチャンリ地区から、衛星打ち上げを目的とする弾道ミサイル技術を使用した発射を強行した」と述べました。

そして、「発射された1発は複数に分離し、1つ目は午後10時50分ごろ、朝鮮半島の西およそ350キロの東シナ海上の予告落下区域外に落下し、2つ目は午後10時55分ごろ、沖縄本島と宮古島との間の上空を通過し、午後10時57分ごろ、沖ノ鳥島の南西およそ1200キロの太平洋上のわが国のEEZ=排他的経済水域外である予告落下区域内に落下した。これ以上の詳細は分析中だ」と説明しました。

一方、松野官房長官は「北朝鮮は昨年以降、わが国上空を通過したものを含め、弾道ミサイルをこれまでにない高い頻度で発射している。再び日本列島上空を通過する形での発射が行われたことは、わが国の安全保障にとって、いっそう重大かつ差し迫った脅威であるとともに、地域および国際社会の平和と安全を脅かすものであり、国際社会全体にとっての深刻な挑戦だ」と述べました。

そのうえで、「政府としては情報の収集と分析に全力を尽くし、新たな情報については、国民に対して情報提供を行っていく。また、アメリカや韓国などの関係国と緊密に連携し、引き続き、国民の安全と安心の確保に万全を期していくので、冷静に平常どおりの生活を送ってもらいたい」と述べました。

また、松野官房長官は「先ほど、NSC=国家安全保障会議の4大臣会合を開催した。今般の発射に関する情報を集約するとともに、さらなる事実関係の確認と分析を行った」と述べました。

そして、「北朝鮮によるさらなる発射などに備え、情報収集、警戒監視にあたることや、国民の安全と安心の確保に万全を期すことを改めて確認するとともに、外交・安全保障政策に関する今後の対応方針について議論を行った」と述べました。

松野官房長官は「北朝鮮は一貫して核・ミサイル能力を強化していく姿勢を示しており、各種ミサイルの発射や核実験など、さらなる挑発行為に出る可能性はあるとみている」と述べました。

一方で、ロシアと北朝鮮との技術協力について問われ、「ロ朝関係に関しては現在、技術協力も含めて、分析中だ」と述べました。

また、記者団が「破壊措置命令は今後も継続するのか」と質問したのに対し、「今後の態勢については、防衛省で各種の情報の分析や評価を続ける中で適切に判断していく」と述べました。

元海将「必ずしも成功とは言いきれない状況」

海上自衛隊で司令官を務めた元海将の香田洋二さんは北朝鮮の人工衛星が地球周回軌道に投入されたかどうかについて、「一般論で偵察衛星は高度400キロから500キロくらいで、北極と南極を軌道とすると1時間半ほどで回って戻ってくるが、今回2時間近くたっても衛星が発する電波をとらえられていない。軌道に入っているとしたらアメリカの宇宙軍が情報をつかんでいる可能性があるが、おそらくまだ来ていないということなので、断定はできないが、必ずしも成功とは言いきれない状況だ」と話しました。

そのうえで、ロシアによる技術支援があったことは間違いないという認識を示しつつ、「8月の失敗から3か月で原因を突き止めて修正することは、いかにロシアの技術を得ても完成度を高めるにはやや短いのではないか」と指摘しました。

また、人工衛星を打ち上げるという北朝鮮のねらいについて、「日米韓の協力体制が強くなる中、日本の東からフィリピンのあたりまでしっかりと見て、近場にも対応するには衛星が無いと対応能力が落ちる。中短距離の射程1000キロ級のミサイル、こちらは開発は順調にいっているようだが、これと組み合わせるということだと思う。北朝鮮としてはICBM=大陸間弾道ミサイルにくわえて、日米韓の共同体制を把握し、強い抑止力をもつためには正確な情報が必要で、そのためには衛星が必要だというのがひとつのロジックで、自前の衛星を早く打ち上げたいということが軍事的には言えるのではないか」と話しました。

宮澤防衛副大臣「失敗か成功か分析中」

防衛省の宮澤副大臣は記者団に対し、「地球の周回軌道への衛星の投入は確認されていない」と述べました。

また、「打ち上げが失敗か成功かは分析中だ」と述べました。

岸田首相「安全に関わる重大な事態だ」

岸田総理大臣は21日午後11時55分ごろに総理大臣官邸に入りました。この際、記者団に対し、「本日、北朝鮮が弾道ミサイル技術を使用した発射を強行した。詳細について分析中だが、少なくとも1発は沖縄上空を太平洋に通過した。詳細はこれから報告を受けるが、安全の確認、情報収集の徹底、関係国との連携強化などを指示した。今のところ被害は確認されていない」と述べました。

そのうえで、岸田総理大臣は「人工衛星と称したとしても弾道ミサイル技術を使用した発射は明らかに関連する国連決議違反で、わが国国民にとって安全に関わる重大な事態だ。北朝鮮に対してはすでに厳重に抗議し、最も強い口調で非難した。今後とも警戒監視や情報収集に努めるとともに、日米や日米韓の関係国と連携しながら対応を続けたい」と述べました。

松野官房長官「沖縄県上空を太平洋へと通過と推定」

松野官房長官は臨時の記者会見で、「北朝鮮は21日、22時43分頃 北朝鮮北西部沿岸地域のトンチャンリ地区から南方向に、弾道ミサイル技術を使用した発射を強行した。詳細は分析中だが、発射された1発は沖縄県上空を太平洋へと通過したと推定される」と述べました。

また、松野官房長官は「これまでの度重なるミサイル発射を含め、一連の北朝鮮の行動は、わが国、地域および国際社会の平和と安全を脅かすものであり、このような発射は衛星打ち上げを目的とするものであっても、関連する国連安保理決議に違反し、国民の安全に関わる重大な問題だ」と述べました。

その上で、「特に、発射について繰り返し中止を求めてきたにもかかわらず、今般、北朝鮮が行った発射は、航空機や船舶はもとより、住民の安全確保の観点からも極めて問題のある行為だ。北朝鮮に対して厳重に抗議し、最も強い表現で非難した」と述べました。

政府 エムネット「避難の呼びかけ解除」

政府はエムネット=緊急情報ネットワークシステムで21日午後11時16分新たに情報を発信し、「ミサイルは午後10時52分ごろ、沖縄県からなる地域の上空を飛しょうし、太平洋へ通過したものとみられます。避難の呼びかけを解除します。なお、ミサイルの破壊措置の実施はありません。不審な物を発見した場合には決して近寄らず、直ちに警察、消防、または海上保安庁に連絡して下さい。続報が入り次第、お知らせします」と伝えました。

北朝鮮は22日午前0時から来月1日の午前0時までの間に、「人工衛星」を打ち上げると通報していました。防衛省が情報収集と分析を進めています。

防衛省関係者 “現時点で迎撃などの対応なし”

防衛省関係者によりますと、北朝鮮から発射された弾道ミサイルの可能性があるものについて、現時点で迎撃などの対応はとっていないということです。

また、北朝鮮から発射されたものに関して、これまでのところ、日本のEEZ=排他的経済水域の内側への落下物は確認されていないということです。防衛省が引き続き、情報の収集を進めています。

自衛隊幹部「打ち上げ成功か現段階でわからない」

自衛隊幹部は記者団に対し、「衛星の打ち上げが成功したかどうかは現段階ではわからない。分析を進めている」と述べました。

北朝鮮発射「人工衛星」の打ち上げと見られる 防衛省関係者

防衛省関係者によりますと、北朝鮮から発射された弾道ミサイルの可能性があるものは「人工衛星」の打ち上げと見られるということです。

岸田首相 “必要な対応を適時適切に”指示

岸田総理大臣は21日午後10時53分ごろ、新たに▽上空を通過したと判断される地域に重点を置き、落下物などによる被害がないか速やかに確認すること、▽北朝鮮の今後の動向を含め、引き続き情報の収集・分析を徹底すること、▽アメリカや韓国など関係諸国と連携し、引き続き必要な対応を適時適切に行うことを指示しました。

政府 Jアラート 沖縄県を対象に情報発信

政府はJアラート=全国瞬時警報システムで、21日午後10時46分沖縄県を対象に情報を発信し、「北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。建物の中や地下に避難して下さい」と伝えました。

北朝鮮は22日午前0時から来月1日の午前0時までの間に「人工衛星」を打ち上げると通報していました。現在、防衛省が情報収集と分析を進めています。

北朝鮮による発射について、政府がJアラートとエムネット=緊急情報ネットワークシステムで情報を発信したのは、「人工衛星」の打ち上げに失敗したことし8月24日以来、今回で10回目です。

第10管区海上保安本部が地域航行警報

鹿児島沖の東シナ海などを管轄する第10管区海上保安本部は今回の情報を受けて、21日午後10時48分に地域航行警報を出しました。管内を航行する船舶に対し、落下物がある場合、近づかずに海上保安庁に通報するとともに、今後の情報に注意するよう呼びかけています。また、午後11時時点で被害や落下物に関する報告は入っていないということです。

第11管区海上保安本部 船舶被害の情報なし(0:00)

沖縄県周辺の海域を管轄する第11管区海上保安本部によりますと、22日午前0時現在、船舶の被害の情報は入っていないということです。

国土交通省 日本周辺の空域飛行の航空機に注意呼びかけ

北朝鮮がミサイルの可能性があるものを発射したという情報を受け、国土交通省は現在、日本周辺の空域を飛行している航空機に情報を伝えるとともに、注意を呼びかけています。また、航空機や空港などに被害がないか確認を進めています。

那覇 防災無線のスピーカーから自動音声

21日午後10時45分すぎ、那覇市おもろまちのNHK沖縄放送局の近くに設置されている防災無線のスピーカーからは、北朝鮮からミサイルが発射されたという内容の自動音声が流れました。局内からは外を出歩く人の姿はほとんど見られませんでした。

政府 国家安全保障会議の閣僚会合を開催

政府は北朝鮮による今回の発射を受けて、22日午前0時すぎから20分間、総理大臣官邸で岸田総理大臣をはじめ、上川外務大臣、木原防衛大臣ら関係閣僚が出席して、NSC=国家安全保障会議の閣僚会合を開きました。これまでに入っている情報を分析するとともに、今後の対応などを協議したものとみられます。

韓国軍 北朝鮮が軍事偵察衛星と主張するものを発射と発表

韓国軍の合同参謀本部は、北朝鮮が21日午後10時43分ごろ、北西部のトンチャンリ付近から南に向けて軍事偵察衛星と主張するものを発射したと発表しました。トンチャンリには、ことし5月と8月に軍事偵察衛星が打ち上げられた「ソヘ衛星発射場」があります。

韓国通信社「奇襲発射」

韓国の通信社、連合ニュースは北朝鮮が予告期間より前に発射したことについて「奇襲発射」などと報じています。予告期間前に発射した理由については、専門家の話として、「22日午前の天気がぐずつくため、日程を繰り上げた可能性も排除できない」と伝えています。

北朝鮮メディア これまでのところ打ち上げ伝えず

北朝鮮国営の朝鮮中央テレビはすでに21日の放送を終えているほか、朝鮮中央通信もこれまでのところ軍事偵察衛星の打ち上げについては一切伝えていません。北朝鮮は21日、打ち上げの予告期間を日本側に通報しましたが、国内向けには知らされていません。