フーシ派 日本郵船運航の貨物船を乗っ取りか

イスラエル軍は19日、イエメン近くの紅海を航行していた貨物船がイエメンの反政府勢力フーシ派に乗っ取られたと発表しました。貨物船は日本企業が運航していたものですが、日本人は乗船していませんでした。

イスラエル軍は19日、イエメン近くの紅海で、トルコからインドに向かっていた貨物船が、イエメンの反政府勢力フーシ派に乗っ取られたと発表しました。

乗っ取られた貨物船は日本郵船が運航する船で、会社によりますと日本時間の19日夜、船を所有するイギリスの会社から連絡があったということで、乗組員はあわせて25人で詳しい安否などは分かっていませんが、日本人は含まれていないということです。

イスラエル軍は乗っ取られた船はイスラエルの船ではなく、イスラエル人も乗船していなかったとしています。

その後、イエメンの反政府勢力フーシ派の報道官が、紅海を航行中だった船を乗っ取ったとするビデオ声明を発表しました。

この中で報道官は乗っ取った船がイスラエルの船だったとしたうえで、「紅海で作戦を実施し、イスラエルの船舶を拿捕(だほ)し、イエメン沿岸まで連行した。乗組員に対してはイスラムの教えに沿って対応している」と述べました。

また「われわれはイスラエルの船舶や関係のある船を標的とする。紅海で働く乗組員がいる各国には、こうした船舶やイスラエル人が所有する船で国民を働かせないよう警告する」として、ガザ地区に対するイスラエル軍による攻撃が続くかぎり、今後も紅海を航行する船舶を含め、あらゆる手段でイスラエルへの攻撃を続けると主張しました。

フーシ派はこれまでもイスラエル南部に対して、弾道ミサイルや無人機による攻撃を繰り返していますが、今回民間の貨物船が乗っ取られたことで、世界的な物流への影響も懸念されます。

西村経済産業大臣「エネルギー供給に直ちに影響は生じない」

西村経済産業大臣は、20日の閣議の後の会見で、「事案が発生したイエメン沖は、日本への原油タンカーやLNG船などはあまり航行していないので、日本のエネルギーの安定供給に直ちに影響は生じないと認識している」と述べました。一方で、西村大臣は、「この海域はヨーロッパと日本を結ぶ航路で自動車をはじめさまざまな物資が運搬されるルートであり、日本経済に影響を及ぼす可能性もあるのでしっかり見ていきたい」と述べ、今後の情勢を注視していく考えを示しました。

斉藤国土交通大臣「詳細な情報について精査中」

斉藤国土交通大臣は、20日の閣議の後の会見で会社から、日本時間の19日夜、連絡を受けたとした上で、「詳細な情報については現在精査中だ。国土交通省としては、関係省庁と情報の共有を図るとともに、日本郵船とも緊密に連絡を取りながら情報の収集に努めてまいりたい」と述べました。

松野官房長官「断固非難、早期解放を強く求める」

松野官房長官は繰り上げ閣議のあとの記者会見で船員に日本人は含まれていないとした上で「政府として断固非難する。現在、国土交通省や外務省などの関係省庁が情報収集を進めつつ、関係国と連携しながら船舶や船員の早期解放のため取り組んでいるところだ」と述べました。

また「イスラエルとも意思疎通を図りつつ、当事者であるフーシ派への直接の働きかけに加え、サウジアラビア、オマーン、イランなど関係国に対して早期釈放を強く求めるよう働きかけを行っている。状況の推移を踏まえながら必要な対応を行っていく」と述べました。

フーシ派の軍事力は

フーシ派は、イランの支援を受けるイエメンの反政府勢力で、2015年以降、首都サヌアを武力で掌握しています。

近年、海上での活動を活発化させていると指摘されています。

去年1月には、紅海でUAE=アラブ首長国連邦の貨物船を拿捕して乗組員を3か月以上にわたって拘束し、国連の安全保障理事会から航海の安全を脅かす重大なリスクになっていると非難されていました。

イギリスのシンクタンク、国際戦略研究所によりますと、フーシ派はおよそ2万人の戦闘員を抱え、イランの協力によって巡航ミサイルや弾道ミサイル、それに無人機など、軍備を増強してきたということです。

ことし9月、首都サヌアで軍事パレードを行った際には、射程が最大1950キロとされ、イラン製の中距離弾道ミサイルと同じタイプとみられるミサイルが公開されたということです。

イエメンからイスラエルの国境までは最も近いところでおよそ1600キロで、国際戦略研究所は、このミサイルはイスラエルを射程圏内におさめる可能性があると指摘しています。

これまでフーシ派は、イエメンの内戦で、敵対する政権側を支援するサウジアラビアやUAEなどに対し、ミサイルや無人機で石油施設や軍の基地を攻撃することはありましたが、今回、一連の衝突が始まって以降、その矛先がイスラエルにも向けられています。