国連安保理 戦闘休止求める決議採択 ガザ地区での軍事衝突後初

イスラエル軍とイスラム組織ハマスの軍事衝突をめぐり、国連の安全保障理事会ではガザ地区の子どもの人道状況を改善するために戦闘の休止を求める決議が賛成多数で採択されました。

一連の衝突が始まって以降、各国の対立が続いてきた安保理で事態の打開を目指す決議が採択されたのは初めてです。

安保理では15日、日本時間の16日朝早く緊急会合が開かれ、イスラエル軍とハマスの軍事衝突をめぐってマルタが提出した決議案の採決が行われました。

決議案はガザ地区の人道状況が悪化し、とりわけ子どもに深刻な影響が及んでいると深い懸念を示したうえで、子どもを含む民間人の保護を義務づけた国際法を順守し、子どもに必要な支援物資を搬入するために、人道目的の戦闘の休止などを求めるものです。

採決の結果、▽日本やフランス、中国など12か国が賛成、▽アメリカ、イギリス、ロシアの3か国が棄権し、賛成多数で決議が採択されました。

安保理ではこれまで、イスラエルを擁護するアメリカとパレスチナを支持するロシアや中国の対立などから、事態の打開を目指す決議案が4回にわたり否決されてきましたが、ガザ地区で4600人以上の子どもが犠牲になる中、子どもの人道状況の改善に焦点をあてることで各国が歩み寄り、初めて決議が採択されました。

アメリカ・ロシア それぞれ立場から“決議は不十分”

一方、棄権したアメリカは「決議はハマスのテロを非難していない」と不満を示したのに対し、同じく棄権したロシアは「戦闘の休止ではなく即時停戦が必要だ」と主張し、それぞれ立場から決議は不十分だという考えを示しました。

イスラエルは反発 軍事作戦の継続を表明

イスラエルは「安保理は現実からかけ離れた決議を採択した」と反発したうえで、ハマスに対する軍事作戦を継続する姿勢を表明していて、今回の決議が事態の打開につながるのか楽観できない情勢です。

決議案提出のマルタ国連大使「子どもたちは不当な苦しみ」

採決を前に、決議案を提出したマルタのフレイザー国連大使は「決議案はとりわけガザの子どもたちの窮状に焦点をあてている。この紛争で子どもたちは不当な苦しみを強いられている。いまこの時、子どもたちが置かれた状況から目をそらすことはできない」と述べ、決議案を支持するよう呼びかけました。

石兼国連大使「ついに安保理が行動できた」

決議案に賛成した日本の石兼国連大使は「ついにきょう、安保理が行動することができた。決議は民間人、とりわけ子どもは保護されるべきだと強調していて、人道目的の戦闘休止を求めたことは重要だ」と述べて採択を歓迎した上で、今後も安保理が紛争の拡大を防ぎ平和と安定をもたらすために関与し続けなければならないと、強調しました。

上川外相「決議が採択に至ったことを歓迎」

上川外務大臣は訪問先のサンフランシスコで記者団に対し、「わが国がこれまで働きかけてきた人道的休止や人道回廊の設置などの内容が含まれている。決議が採択に至ったことを歓迎し、すべての当事者が決議に基づいて誠実に行動することを求める」と述べました。

そのうえで、「事態の早期沈静化に向け、安保理が引き続き、しかるべき責任を果たす必要性があると考えている」と述べました。