世界中のプレイヤーと遊ぶことができるオンラインゲーム。
強くなるためには時間をかけて経験値をためたり、「ガチャ」を何度も引いて珍しいキャラクターやアイテムを引き当てたりと、たくさんの時間、そしてお金が必要になることもあります。
後から始めると手に入らないものもあり、先に始めた人に追いつくのは簡単ではありません。
そんなオンラインゲームの人気の高まりにあわせて広がり、問題も起きているのが、「RMT=リアルマネートレード」です。
「簡単に強くなれる」誘惑に潜むわな
大好きなゲーム、でも時間がなくてキャラクターを育てられない…。
どうしても限定のレアアイテムがほしい…。
そんな時、強いキャラクターやほしいアイテムを持つアカウントが買えるとしたら、つい手が伸びてしまうかも。
そうした「簡単に強くなりたい」という気持ちにつけこんで、お金をだましとる手口があります。安易に手を出す前に、立ち止まってみませんか?
(デジタルでだまされない取材班 / 科学・文化部 絹川千晴、京都放送局 岡本なつみ)
“人の力で強くなれる”
すでに強くなったゲームのアカウントやゲーム内通貨、アイテムなどを現金で売買することを意味し、人気のゲームでは、一つのアカウントが100万円以上でやりとりされることもあります。
ほかに、自分のアカウントで代わりにプレイしてもらい、順位を上げたり特典を受け取ってもらったりして現金を支払うといった「プレイ代行」もあります。ネット上には、いくつも専用のサイトがあって、こうした取り引きが盛んに行われています。
また、SNSでもアカウント売買を呼びかける投稿がたくさん見つかります。
ただ、国内の多くのゲームではこうしたRMTを不正行為だとして利用規約で禁止しています。ゲームバランスが崩れるだけでなく、トラブルや犯罪につながるおそれがあるからです。
買ったはずなのに…
「だまされた」
RMTをことしの春ごろから始めたという20代の自営業の男性は、そう訴えています。
4年ほど遊んでいる対戦型のゲームのアカウント。レアアイテムを持つアカウントを買ったり、手元のアカウントの価値を上げて売ったりすること自体が楽しく、売買にハマっていったといいます。
SNSで知り合った人から、7月、あるアカウントを買うことになりました。オンラインの決済サービスを使って7000円を送金したところ、突然、SNSでのやりとりをブロックされ、連絡がつかなくなりました。
相手とはSNSで知り合い、分かっている連絡先はそのSNSアカウントのみ。男性はそのまま泣き寝入りするしかありませんでした。さらに、ほぼ同時期に、同じSNSで出会った別のアカウントの相手からも同じように5000円をだましとられたと言います。
被害にあった男性
「アカウント売買をしているのは若い人が多い印象です。信用できると思った人にお金をとられたのでショックです。残念ながら、詐欺行為が多発しているのが現状です」
仲介専用サイトでも被害が
このRMT。
SNSでの個人間の直接取引だけでなく、仲介する専用のサイトもあります。
サイトは、確認できただけで10以上あり、ゲームアカウントやゲーム内通貨の売買、プレイ代行など、多いところではこれまで数百万件の取引実績があるといいます。
そうしたサイトでは取引の安全性がうたわれていますが、関連する事件も起きています。
ことし3月、京都府に住む20代の男性は、RMTの専用サイトのひとつで、スマホゲームのアカウントを購入しようとして、自分のアカウントを乗っ取られる被害にあいました。
このサイトでは購入の際、サイト内のメッセージでアカウントの受け渡しに必要な引き継ぎコードなどの情報をやりとりします。
その中で、「スムーズに取り引きするために必要だ」などといって別のサイトに誘導され、RMT専用サイトのIDとパスワードを入力するよう伝えられたといいます。
男性は言われたとおりに自分のIDとパスワードを入力。
実はそのサイトは情報を吸い上げるために作られたもので、男性のRMT専用サイトのアカウントが乗っ取られました。そして、勝手に取り引きを進められて2000円分のポイントが勝手に使われたのです。
結局、アイテムが男性のところに届くことはありませんでした。
男性は、警察に相談し、捜査の結果、専門学校生が不正アクセス禁止法違反と電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕されました。
ゲーム会社は禁止に
多くのゲームで、禁止されているRMT。
大手ゲーム会社の任天堂はことし7月、オンラインで遊ぶのに必要なアカウントの情報を第三者に受け渡さないよう求める文章をホームページで公開しました。
任天堂
「他人のアカウントを使用したり自分のアカウントを第三者に貸与・譲渡したりすることは利用規約違反です。違反が確認された場合は利用を停止させていただく場合があります」
アカウントの売買やプレイの代行など不正行為を確認したアカウントは、停止や凍結をするとしています。
高いリスク “安易に手を出さないで”
専門家は、RMTをめぐってはほかにも
▽アカウントを売ろうとIDとパスワードを教えたのにお金が振り込まれないとか
▽アカウントを乗っ取られゲーム上のアイテムやアカウントそのものを転売されてしまうといったさまざまな被害が起きているとして、注意を呼びかけています。
成蹊大学 高橋暁子客員教授
「フリマサイトなどの影響で、今の若者たちはスマホでお金のやりとりをすることや匿名での取引に慣れているので、RMTにも抵抗がなく、こうしたトラブルが起きやすいのではないか。よく知らない相手と金銭が絡むやり取りはせず、知らない人にはパスワードを教えないでほしい。RMT自体が多くのゲームサイトで規約違反になっている行為なので安易に手を出さないのがベストだと思う」
また国民生活センターはRMTの取引について、被害回復しづらいというリスクも指摘し、注意を呼びかけています。
国民生活センター
「利用規約に違反した行為だと、原則、消費者の自己責任になる。被害を受けたとしても、アカウント回復などの対応を、ゲームの運営会社に求めることも難しくなることがある」
ゲームで簡単に強くなれるRMTは、魅力的な方法かもしれません。
しかし、そうした気持ちにつけこまれ、お金をだましとられるリスクがあることも、常に意識しておくことが大切です。
11月13日「首都圏ネットワーク」で放送
11/20(月) 午後7:00 まで
NHKニュースポスト
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