【11日詳細】ガザ地区最大のシファ病院 “医療活動できず”

パレスチナ難民を支援するUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は10日の発表で先月7日以降ガザ地区で亡くなった国連職員やスタッフの人数があわせて101人にのぼったと明らかにしました。

また、イスラエル軍はガザ地区北部の住民に南部への退避を通告していて、10日も多くの人が避難を続けています。OCHA=国連人道問題調整事務所は一連の衝突が始まってからガザ地区ではすでに人口の6割を超える150万人以上が住まいを追われているとしています。

※11月11日(日本時間)のイスラエルやパレスチナに関する動きを随時更新でお伝えします。

パレスチナ保健相「イスラエル軍 病院離れるよう迫っている」

イスラエル軍がガザ地区最大の病院「シファ病院」を目指して部隊を進めるなか、パレスチナ暫定自治政府のカイラ保健相は11日、記者会見で「イスラエル軍は空爆によって脅していて、医療従事者に病院を離れるよう迫っている」と述べ、病院の状況を明かしました。

カイラ保健相によりますと、病院の4階部分に空爆を受けた際、太陽光発電に関連する機器が被害を受け、燃料の不足とともに電力も足りなくなっていて、ICU=集中治療室での治療などに影響が出ているとしています。

カイラ保健相はガザ地区の病院や医療従事者に対して行われていることは国際法などに違反しているとした上で「国際社会や国連の介入が今すぐ必要だ」と訴えました。

イスラエル軍 ガザ地区の住民に退避通告

イスラエル軍のアラビア語の報道官は現地時間の11日午前10時すぎに旧ツイッターのXにガザ地区の住民に対する退避通告を投稿しました。通告ではガザ地区を南北に縦断するサラハディン通りを午前9時から午後4時まで通行できるようにするとして従来の退避経路を示しています。

ただ、今回の通告ではこれに加えてガザ地区北部の海沿いにあるシャーティ難民キャンプで激しい戦闘が行われていることを踏まえ、海岸に沿って南に向かうよう求めています。

さらにジャバリア難民キャンプでは午前10時から午後2時にかけて「人道目的で戦術的に軍事活動を休止する」と明らかにし、退避する場合はサラハディン通りから南部に向かうよう通告しています。

そのうえでハマスが退避を妨害しようとしているとして妨害を受けた場合にイスラエル軍に通報するための連絡先を記しています。

ガザ地区最大のシファ病院 “医療活動ができなくなった”

ガザ地区の保健当局の報道官はガザ地区最大の病院であるシファ病院について、燃料不足のため医療活動ができなくなったと明らかにしました。シファ病院には多くの患者や数千人の住民が避難しているとされていますが、水や電気、燃料の不足が深刻となっていました。

ロイター通信などによりますと、シファ病院はガザ地区にある最大の病院で、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの衝突の後、多くのけが人の治療を行っているほか避難所としても利用されているということです。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラはシファ病院には外科や内科、それに産婦人科があり、8日時点では、およそ5000人の患者が治療を受けているほか数千人が避難していると伝えています。

また、病床が足りないため、けが人の治療を床で行うなど衛生状況が悪化し、感染症が広がる懸念も出ていて、状況はひっ迫しているということです。イスラエル軍は、この病院の地下にはトンネルやハマスの幹部の拠点があると主張しています。

国境なき医師団「病院への攻撃やめて」

国際NGOの「国境なき医師団」は日本時間の11日午後1時前にガザ地区内で最大規模のシファ病院の状況についてSNSに投稿しました。

このなかで「この数時間でシファ病院への攻撃は劇的に激しくなっている。病院にいるスタッフから内部が壊滅的な状況だという報告があった」としています。しかし、その報告を受けたあとは病院内のいずれのスタッフとも連絡がとれなくなり、患者やスタッフの安否は分かっていないとして懸念を強めています。

国境なき医師団によりますと、病院内に取り残された患者の中には、重体で移動させることができない人や手術が必要な人もいるということです。国境なき医師団は「病院への攻撃をやめて施設や医療スタッフ、それに患者を守るよう緊急に求める」として、病院への攻撃を直ちにやめるよう改めて訴えました。

支援活動のNGO「避難場所がなくなるおそれ」

パレスチナで支援活動を行っているNGO、JVC(日本国際ボランティアセンター)のエルサレム事務所で代表を務める木村万里子さんは現地スタッフや友人と連絡を取りながらガザ地区などで被害の情報収集を続けています。

最近ではガザ地区中部に幼い子どもと避難した友人から避難先周辺が爆撃を受けて住民が亡くなり、別の場所への避難を余儀なくされている状況を知らせる画像が送られてきたといい、軍事衝突が長期化する中住民の避難先も徐々に少なくなってきていると指摘しています。

木村さんは「南に避難しろという指示が出ていますが、移動手段がないとか頼る人たちがいないほか、病気などで移動や避難生活を続けることが難しい人たちはいまも北側に残っている状況です。一方で南の方はすでにかなりの人口密度になっていて、避難場所がないというような状況も発生するおそれがあります」と話しています。

NGOでは現地と連絡を取り合って避難した住民などへ医療支援を行うための準備を進めているということで、木村さんは「現地に入って支援活動を行うことはしばらく難しいと思いますが、爆撃によって何もない状態になってしまったガザ地区では中長期的な支援が絶対に必要になる」と話しています。

そのうえで今後の支援に向け自身も日本に帰国せずに活動を続ける考えだといい、「現地の人たちがどう考えてどう感じて何を望んでいるのかという声をキャッチするためにはやはり現地に近い所にいることが非常に重要だと思っています。その人たちの声や温度感を日本に向けて届ける役割を担っていると感じています」と話していました。

フランス大統領「民間人爆撃 理由も正当性もない」

イギリスの公共放送BBCは10日、フランスのマクロン大統領に対して行ったインタビューの内容を放送しました。このなかでマクロン大統領はガザ地区で軍が地上侵攻を進めるイスラエルの自衛権を認めながらも「民間人が爆撃され、乳児や女性、高齢者が殺されている。理由も正当性もない。イスラエルにやめるよう強く求める」と述べました。またマクロン大統領は「まずは人道目的で戦闘を休止し、停戦に移っていくことしか解決策はない」と強調しました。

これに対しイスラエル首相府は11日、旧ツイッターの「X」にネタニヤフ首相の声明を投稿し「民間人へのいかなる危害の責任も、イスラエルではなく、ハマスにある。イスラエルは、民間人に戦闘地域から離れるよう促しているが、ハマスが人間の盾として利用している」として、責任はハマスにあるとしています。

国連安保理が緊急会合 ガザ地区の病院攻撃に各国から懸念相次ぐ

国連安全保障理事会の緊急会合が10日に開かれ、WHO=世界保健機関のテドロス事務局長が報告し「ガザ地区の状況はことばではあらわせない。病院の廊下はけが人や病人でごった返し、麻酔なしの手術が行われている。10分に1人、子どもが死亡している」と危機感を示しました。

このあと各国からは病院や医療従事者の被害が拡大していることに懸念を示す意見が相次ぎ、UAE=アラブ首長国連邦のヌサイベ国連大使は「イスラエルの攻撃が残酷で非人道的なのは疑いの余地がない」と非難しました。

これに対してイスラエルのエルダン国連大使は「ハマスは医療従事者も患者も人間の盾として使っている」と主張したほか、アメリカのウッド国連次席大使は民間人は常に保護されなければならないと強調しながらも「ハマスは病院や学校に武器や弾薬を保管して、住民を意図的に危険にさらしている」などと述べ、イスラエルを擁護する姿勢も示しました。

ガザ地区 ガソリン手に入らず ロバが移動手段に

ガザ地区ではイスラエル軍による封鎖でガソリンなどの燃料が手に入らないなか、ロバが住民にとって移動や運送の貴重な手段になっています。

NHKガザ事務所のサラーム・アブタホンカメラマンは10日、小麦粉の入った袋を避難先まで運ぶために、ロバが引く荷車を利用しました。運賃は400メートルでおよそ200円だったということです。

イスラエル 先月のハマスによる襲撃の死者数1200人に修正

イスラエル政府は先月7日のイスラム組織ハマスによる大規模な襲撃によるイスラエル側の死者の数を1400人から1200人に修正しました。

イスラエル外務省の報道官は10日、SNSへの投稿のなかでイスラエル側の死者の数を「およそ1200人」と言及しました。

この投稿についてAFP通信が問い合わせたところ、イスラエル外務省は「身元が確認されていなかった遺体の多くが、イスラエルの犠牲者でなく、ハマスのテロリストの遺体だと考えているためだ」と説明し、死者数を修正したことを認めたということです。

双方の死傷者数を発表しているOCHA=国連人道問題調整事務所も、一連の衝突によるイスラエル側の死者の数を「1200人以上」に変えていてイスラエル政府の修正を反映したとしています。

一方、ガザ地区の地元当局は10日、ガザ地区ではこれまでに1万1078人が死亡したと発表しています。

イスラエル世論調査 “停戦支持 条件つきも含め62%”

イスラエルのメディアが報じた最新の世論調査で、停戦を支持すると回答した人の割合が人質解放などの条件つきも含めると6割を超えていることがわかりました。

イスラエルの新聞マーリブが9日、電子版に掲載した世論調査によりますと、ガザ地区でのイスラム組織ハマスなどとの戦闘をめぐり停戦すべきだと回答した人は全体で62%でした。

内訳は、
▽すべての人質の解放を条件に挙げた人が39%
▽人質の一部の解放を挙げた人が16%
▽人質の情報を挙げた人が4%
▽無条件で停戦すべきだと答えた人が3%でした。

一方、どのような状況下でも停戦には反対すると答えた人は30%でした。

また現役の首相と野党の党首のどちらが首相にふさわしいかを問う質問では、野党党首のガンツ前国防相が過去最高の52%で、ネタニヤフ首相は26%でした。

ガザ地区で亡くなった国連職員ら101人に UNRWA発表

パレスチナ難民を支援するUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は10日の発表で先月7日以降ガザ地区で亡くなった国連職員やスタッフの人数があわせて101人にのぼったと明らかにしました。

UNRWAは、死亡した人たちの名前を載せた動画を公開し、この中では「彼らは教師や医療従事者、技術者などであり、母や父、息子や娘、夫や妻でもあった。彼らはただの数ではなく私たちの友人や同僚だった。彼らなしにUNRWAはもう二度と元に戻ることはできない」と訴えています。

ガザ地区北部 5万人以上が南部へ退避か OCHA推定

イスラエル軍がガザ地区北部の住民に対し南部へ退避するよう通告する中、ロイター通信は10日、ガザ地区中部で撮影された退避する人々の映像を配信しました。

映像ではイスラエル軍が退避ルートに指定していたサラハディン通りをリュックサックを背負ったり、大きなかばんを持ったりした人々が道いっぱいに歩いている様子が確認できます。

中には小さな子どもを抱きかかえたり肩車したりして歩く人の姿や、車いすに乗って移動する人の姿もあります。

OCHA=国連人道問題調整事務所は9日の1日だけで5万人以上が徒歩やロバを使って南部へ向かったと推定されるとしています。

ガザ地区では人口の6割を超える150万人以上が家を追われているとみられ、中部地区に新たに2つの避難所が開設されたということです。

一方で、OCHAによりますと、北部には数十万人が残っていて、生きるための最低限の水や食料を確保するのが難しい状態だとしています。

【動画あり】ガザ北部から避難の少年「道中にも標的にされた」

イスラエル軍はガザ地区北部の住民に南部への退避を通告していて、10日も多くの人が避難を続けています。

NHKが南部ラファで撮影した映像では、リュックサックや手提げ袋などに入るだけの限られた荷物を持って徒歩で北部から避難してきた人たちの様子が映っています。避難してきた少年は「国連が運営する学校も攻撃を受けたし、銃撃も受けた。道中にも標的にされました」と話していました。

別の女性は「イスラエル軍の空爆で避難所の学校も被害を受け、朝の6時から避難をしてきました。私たちガザの住民は殺されていても誰も気にもとめてくれません」と訴えていました。

ネタニヤフ首相 ハマスとの戦闘後も「軍がガザ地区を管理」

イスラエルの地元メディアはハマスとの戦闘の後も軍がガザ地区を管理する考えをネタニヤフ首相が示したと報じました。

イスラエルの地元メディア タイムズ・オブ・イスラエルはネタニヤフ首相が10日、テルアビブで開かれたガザ地区周辺の自治体関係者との会談で「イスラエル軍はガザ地区の管理を続ける。国際的な勢力に手渡すことはない」と述べたと伝えました。

アメリカのブリンケン国務長官はイスラエル軍によるガザ地区の占領に反対する考えを示していて、ネタニヤフ首相の発言は波紋を広げることが予想されます。

ガザ北部 住民避難の学校へ攻撃 少なくとも25人死亡

イスラエル軍は10日もパレスチナ暫定自治区のガザ地区への地上侵攻を続ける一方、ガザ地区の北部から南部に退避するよう住民に通告し、2日間で10万人以上が応じたとしています。

こうした中、激しい戦闘が続くガザ地区の北部では大勢の住民が避難していた学校の建物が攻撃を受け、地元の当局は少なくとも25人が遺体で病院に運び込まれたと発表しました。

現場で撮影されたとされる動画には建物の一部が崩壊し、がれきの下から動かなくなった子どもが運び出されていく様子や数十人の遺体が布で巻かれ並べられている様子が映っています。

イスラエル軍はハマスが学校や病院に拠点を置き人間の盾として利用していると主張していて、ガザ地区の保健当局はこれまでに135か所の医療機関が攻撃を受け少なくとも2つの病院が包囲されているとしています。

ガザ地区から退避の医師「通常助かる患者も助からない」

パレスチナのガザ地区から退避したイギリスの外科医がNHKの取材に応じ、現地では医療事情がひっ迫し、人工透析を受けていたり手術を待っていたりした患者が危険な状態に置かれているとして、イスラエル軍の攻撃の直接の犠牲者以外にも多くの人命が失われることに強い懸念を示しました。

イギリスの王立リバプール大学病院の外科医、アブデル・ハマドさんは、これまでガザ地区を定期的に訪れボランティアで腎臓移植手術などを行っていて、先月もガザ地区最大級の病院、「シファ病院」で手術を行う予定だったもののイスラエル軍の攻撃が続く中、病院が急患しか受け入れられなくなり手術を断念して退避せざるを得なくなったということです。

ハマド医師は、これまでガザ地区では1200人の患者が通常週3回4時間の人工透析を受けていたとしたうえで「透析には機器や備品が必要だが、今は手に入らない。この状況が長引けば多くの人の命が脅かされる」と強い危機感を示しました。

そして、2008年にイスラエル軍がガザ地区に大規模な空爆を行った際にも透析を受けていた患者の半数が亡くなったとして「通常であれば助かる患者もこの状況では助からない。戦争の犠牲者は統計が示すよりはるかに多くなるだろう」として、今後、イスラエル軍による攻撃の直接の犠牲者以外にも多くの人命が失われることに強い懸念を示しました。

イギリス 医療従事者らが首相官邸前で戦闘停止を訴え

パレスチナのガザ地区で病院付近への攻撃によって被害が出ていることなどを受け、イギリスでは医療従事者たちが首相官邸前に集まり、戦闘を直ちに停止するよう訴えました。

ロンドン中心部の首相官邸前には10日夜、作業着姿の医師や看護師など数百人が集まり、ガザ地区で先月以降、病院付近や救急車などへの攻撃で死亡した医療従事者およそ200人の名前を掲げて追悼しました。

集会では、現地の病院で活動を続ける医療従事者のメッセージも紹介され「ここから逃れたいが、逃れられない。朝まで生きていられないかもしれない。避難ルートを作ってほしい」という、1時間前に届いたばかりの悲痛な声に集まった人たちは涙を流していました。

ガザ地区では、診療所の70%、病院のおよそ40%が燃料不足などで稼働できていない上、イスラエル軍は北部で稼働中の12の病院にも退避を通告しているということで、参加者たちは戦闘を直ちに停止し、食料、燃料、医療物資などの無制限の人道支援を実現するようイギリス政府に求めました。

集会を主催したオマル・アブデルマナン医師は「ガザ地区の医療施設を毎年訪れてきた中で、ハマスや軍事活動との関連をうかがわせるものは見たことがない。私たちは医療従事者として命の尊厳を重んじているが、残念ながらそうでない人たちもいる。攻撃は今すぐやめなければならない」と強調していました。

パレスチナ国連大使 欧米を批判「イスラエル非難を避けている」

スイスのジュネーブに駐在するパレスチナのフライシ国連大使は10日会見を開き、中東やアジア、アフリカなどの40か国以上の代表も同席しました。

フライシ国連大使は欧米がロシアによるウクライナへの軍事侵攻を厳しく非難してきたと指摘したうえで、イスラエルによるガザ地区への攻撃に対しては非難を避けていると批判しました。

そのうえで「みずからを『自由世界』と呼ぶ人々に呼びかけたい。流血を止め、停戦を実現するために全力を尽くすべきだ。問題の根幹をただすこと、つまりイスラエルによる占領を終わらせるために私たちと協力すべきだ」と述べ、欧米に対してイスラエルにより厳しい姿勢で臨み停戦の実現に向け全力を尽くすよう訴えました。