イスラエル軍 住民に南部へ退避通告 “数千人が従った”と発表

パレスチナのガザ地区に地上侵攻したイスラエル軍は、8日もガザ地区北部にとどまる住民に対し南部への退避を通告し、数千人の住民がこれに従ったと発表しました。一方、多くの人が避難している病院にも攻撃の被害が出ているほか、燃料不足も深刻となる中、医療活動の継続が危ぶまれています。

ガザ地区に侵攻したイスラエル軍は8日、軍事作戦が始まって以降、イスラム組織ハマスが構築した地下トンネルの出入り口130か所を破壊したと発表しました。

主にガザ地区北部で、空爆や地上部隊による砲撃によって急ピッチで、地下トンネルの破壊を進めているものとみられます。

また、イスラエル軍は8日もSNSを通じて、ガザ地区北部にとどまる住民に時間と経路を示して南部への退避を通告し、数千人の住民がこれに従ったと発表しました。

一方、多くの人が避難している病院にも攻撃の被害が出ているほか、燃料不足も深刻となる中、医療活動の継続が危ぶまれていて、国連によりますとガザ地区の入院設備のある医療機関の4割が閉鎖したということです。

こうした中、南部にあるエジプトとの検問所では、今月1日から始まった外国籍の人などの退避をめぐって混乱が続いています。

8日にNHKガザ事務所のスタッフが撮影した映像では、大勢の住民がガザ地区側のゲートの前に詰めかけ、係員に状況を問い合わせていました。

しかし、午後3時ごろになって8日はけが人の搬送も、外国籍の人たちの退避も行われないと現地で説明されたということです。

外国籍の人たちのガザ地区からエジプト側への退避は今月1日から始まり、その後いったん止まりましたが、6日に再開されていました。

家族がウクライナ国籍の男性は「ウクライナ人の妻と息子をこれ以上、ガザ地区にとどめることはできません。ガザ市内の自宅は破壊され、その後の避難先も空爆で破壊されました」と話していました。

一連の衝突でガザ地区の保健当局は8日、ガザ地区ではこれまでに1万569人が死亡し、このうち4324人が子どもだと発表しました。イスラエル側では少なくとも1400人が死亡していて、双方の死者は1万1900人を超えています。

こうしたなかイスラエルの複数のメディアは8日、エジプトの仲介によって人道目的での戦闘の休止と一部の人質の解放について、近く関係する当事者が合意する見通しだと報じました。

アメリカをはじめ欧米各国からは人道目的での戦闘の休止を求める声が高まっていて、合意が実現するのか注目されます。

イスラエル軍「ハマスは北部で支配力失い続けている」

イスラエル軍のハガリ報道官は8日夜の記者会見で、「ハマスはガザ地区北部での支配力を失い続けている」と強調しました。そのうえで「ハマスの指導部は断絶し、ざんごうの中にいる。住民が北部を離れるのはハマスが北部での支配力を失ったことを理解しているからだ」と主張し、引き続き、住民の南部への退避を通告しました。

また、ハガリ報道官は「停戦はない」と改めて強調する一方で、「人道目的での戦闘の休止はある。民間人がまとまって安全に南部へと移動できるようにするためだ」と述べて、人道目的での戦闘の休止の可能性を明らかにしました。

米の副報道官 検問所の通行「安全上の理由で停止」

アメリカ国務省のパテル副報道官は8日、記者会見でガザ地区とエジプトとの境界にあるラファ検問所の通行について「安全上の理由で停止されていると理解している」と述べ、エジプト政府やイスラエル政府と協力して対応にあたっていると説明しました。

パテル副報道官は、詳しい状況や具体的な通行再開のタイミングについては言及を避けましたが、「状況が改善すれば通行は再開される」と述べました。

ハマスの幹部「ネタニヤフ首相が人質解放を妨害」

イスラム組織ハマスの政治部門の幹部が8日、レバノンの首都ベイルートで会見し「停戦という条件が整えば、イスラエルの民間人と外国人は解放されるだろう」などと述べ、イスラエル側が停戦に応じれば人質を解放するとの考えを改めて示しました。

そのうえで「ネタニヤフ首相が外国人の人質の解放を妨害している」などと述べ、人質の解放が進まないのは、停戦に応じないイスラエル側に責任があるとの主張を展開しました。

また「ガザ地区では飲料水の90%が失われている」と述べ、イスラエル側がガザ地区への水の供給を止めているのは、人道に対する罪だとして強く非難しました。

さらにイスラエル側がガザ地区の病院や医療機関への攻撃を強め、甚大な被害が出ているとして「国際機関に対し、ガザ地区に代表団を送り込み、病院にハマスの幹部などいないことを証明してもらいたい」と述べ、ハマスの幹部が病院に潜伏しているなどとするイスラエル側の主張に対し強く反論しました。

パレスチナ赤新月社 病院被害の映像公開

パレスチナ赤新月社は8日、ガザ市北部のクッズ病院では、7日夜から続く病院付近での攻撃で、被害がでているとして映像を公開しました。

映像には、病院の廊下とみられる場所に多くの人たちが集まっている様子や、病院の近くで爆発音が聞こえる様子がとらえられています。

また、病院内とみられる画像では窓ガラスなどが割れ、粉々になったガラスが病室に飛び散っている様子や、天井がはがれている様子などが確認できます。

クッズ病院では燃料が尽きかけているとして今後数日間、最低限の医療処置を行う燃料を確保するため、多くの処置を減らさざるを得ないとしています。