G7外相会合「ガザ地区 “戦闘の人道的休止”を支持」で一致

東京で開かれたG7外相会合は2日間の日程を終え、イスラエル・パレスチナ情勢をめぐり、ガザ地区の人道危機に対処するため戦闘の人道的休止を支持することで一致しました。

G7=主要7か国の外相会合は2日間の日程を終え、議長を務めた上川外務大臣が記者会見を開き成果を発表しました。

それによりますと、G7外相会合では、イスラエル・パレスチナ情勢をめぐりハマスなどのテロ攻撃を断固として非難することや、人質の即時解放を求めることを確認しました。

そのうえで、ガザ地区の人道危機に対処するため、緊急の行動をとる必要があるとして、戦闘の人道的休止や人道回廊の設置を支持することで一致したとしています。

また、国際人道法をはじめとする国際法の順守が重要で、紛争のさらなるエスカレーションや拡大を防ぐ必要があるという認識を確認しました。

そして、ガザ地区の持続可能な長期的解決に取り組み、イスラエルと将来の独立したパレスチナ国家が共存する「2国家解決」が公正で永続的な平和への唯一の道だという認識などで一致したということです。

また、ウクライナ情勢をめぐっては、結束して厳しい対ロシア制裁と強力な支援に取り組む姿勢は変わらないことや、中長期的な復旧・復興のため官民一体となって取り組みを加速させていくことを確認しました。

そして、和平プロセスを国際的なパートナーとともに進める必要があるという認識で一致したということです。

このほか覇権主義的な動きを強める中国をめぐっては、G7として関与し懸念を直接表明することが重要だとする一方、グローバルな課題などについては協働する必要があることを確認しました。

さらに、北朝鮮による弾道ミサイルの発射やロシアへの武器・弾薬の供与を強く非難し、G7各国からは拉致問題の即時解決に向けた支持が表明されたということです。

また、東京電力福島第一原発の処理水放出をめぐっては科学的根拠に基づく日本の取り組みを歓迎し、放出後のモニタリングの結果でも安全性が示されていることを確認したとしています。

そして、こうした討議の成果を盛り込んだ共同声明が発表されました。

上川外相「G7として結束 精力的に取り組んできた結果」

上川外務大臣は記者会見で「今回の会合は、日本がG7議長国として国際情勢が目まぐるしく変化し世界の分断が深まる状況で、G7として従来以上に結束し連携して、さまざまな課題に対応できるよう精力的に取り組んできた結果だ」と述べました。

そして、イスラエル・パレスチナ情勢について「今回、G7として初めて戦闘の人道的休止やその後の和平プロセスを含め、一致したメッセージをまとめることができたことは、国際社会でG7が責任ある役割を果たすという観点からも重要な成果となった」と強調しました。

そのうえで「G7議長国として今後、グローバルサウス諸国をはじめとする国際社会のパートナーに説明し、理解を得ていくとともに、これらの国々と協力しつつ努力を積み重ねていく」と述べました。

そして「G7の外相間の連携はかつてないほど緊密であり、引き続き国際社会の喫緊の課題に対処すべく連携していきたい。議長国としての任期はあと2か月あるので、年末にかけて精力的に取り組んでいく」と強調しました。

「イスラエル パレスチナ含む関係各国へ働きかけ続ける」

また、上川外務大臣は「一般市民、とりわけ未来ある子供たちや女性、高齢者が被害にあっていることに大変心を痛めている。一般市民に必要な支援が行き届くよう、人道目的の戦闘休止と人道支援活動が可能な環境の確保を求めてきており、今回の成果も踏まえて外交努力を積み重ねていきたい」と述べました。

また「日本は原油輸入のおよそ9割を中東地域に依存しており、エネルギー安全保障の観点からも地域の平和と安定は極めて重要だ。今回G7として地域のパートナーとともに、紛争がさらに激化することを防ぎ、より広い地域に拡大することを防がなければいけないという認識で一致した」と述べました。

そして「中東各国に話ができるという日本の立場を利用して、短期的には事態の沈静化、中長期的には『2国家解決』の実現に向け、イスラエル、パレスチナ双方を含む関係各国への働きかけを続けていきたい」と述べました。

専門家「一つ間違えると中東全体に拡大 正しい方向性作るべき」

元外交官でキヤノングローバル戦略研究所の宮家邦彦理事特別顧問は、NHKのインタビューで「一つ間違えるとこの問題は中東地域全体に拡大してしまう。そうなれば当然のことながらインド太平洋地域にも影響が出てくると思う。国際的な最大公約数を欧米諸国だけでなく中東諸国の考え方も念頭に置きながら正しい方向性を作っていくべきだ」と述べました。

そのうえで「戦闘が終わったあとどのような形でガザを統治するのか、誰がするのかということを考えなければいけない。その延長線上には必ず中東和平プロセスの再開ということが見えてこなければいけない」と指摘しました。

【政治部 記者解説】G7外相会合の成果は

(政治部 加藤雄一郎記者)
当初、各国の間では温度差があるとも言われていましたが、G7で一致して戦闘休止の必要性を打ち出しました。

外務省の幹部は「G7が同じ方向を向いていると国際社会に示すことができた」と強調しています。

ただ、ガザ地区の統治のあり方や、将来の和平プロセスなどをめぐっては激しい議論も行われたということです。

一方で、戦闘の休止はアメリカの大統領が求めてもイスラエルは応じておらず、先行きは不透明です。

別の外務省幹部は「G7で一致しても実効性を担保できるかは難しい」と話しています。

中東諸国の間でバランス外交を進めてきた日本としては、イスラエルだけでなくハマスに影響力を持つ関係国にも協力を呼びかけて戦闘休止の実現に向け外交努力を続けていくことが求められます。

中央アジア5か国やウクライナがオンライン参加 拡大会合も

8日午後には、G7以外の国の外相がオンラインで参加する拡大会合が行われました。

このうち、カザフスタンやキルギスなど中央アジアの5か国を交えた会合では、上川外務大臣が「中央アジアは法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化するうえで重要なパートナーだ」と述べました。

そのうえで、来年開催する日本と中央アジアの国々との首脳会合に向けて関係強化の取り組みを進めていきたいという考えを伝えました。

続く会合にはウクライナのクレバ外相がオンラインで参加し、上川大臣は「ロシアによるウクライナ侵攻が始まってからおよそ1年9か月が経過した。世界の注目が中東に集まる傾向にある中でもG7がウクライナを支持するという明確なメッセージを国際社会に発信したい」と伝えました。

上川外相 ドイツ外相と会談

上川外務大臣は、G7=主要7か国の外相会合のために来日しているドイツのベアボック外相と8日午前、外務省で会談しました。

この中で上川外務大臣は「緊迫するイスラエル・パレスチナ情勢やロシアによるウクライナ侵攻への対応、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、両国間およびG7で引き続き緊密に連携していきたい」と述べました。その上で「両国の関係は安全保障分野での協力の進展など、かつてないほど緊密かつ強固なものになっている。連携をさらに強化していきたい」と述べました。

これに対しベアボック外相は「ことし3月に開催した政府間協議では、安全保障分野でインド太平洋での協力を深めることができた」と応じました。

そして両外相は、中東情勢への対応がある中でも、ウクライナへの力強い支援を継続する必要があるという認識を共有しました。また北朝鮮の核・ミサイル問題や拉致問題についても連携して対応していくことを確認しました。

討議の成果を盛り込んだ共同声明が発表

G7=主要7か国の外相会合は2日間の日程を終え、討議の成果を盛り込んだ共同声明が発表されました。

それによりますと、イスラエル・パレスチナ情勢をめぐり、ハマスなどのテロ攻撃を断固として非難し、人質の即時解放を求めるとしています。

その上で、ガザ地区の人道危機に対処するため、緊急の行動をとる必要があるとして、戦闘の人道的休止や人道回廊の設置を支持するとしています。

また、国際人道法をはじめとする国際法の順守が重要で、紛争がさらにエスカレートすることや拡大することを防ぐため取り組むとしています。

そして、ガザ地区の持続可能で長期的な解決に取り組み、イスラエルと自立可能なパレスチナ国家が共存する「2国家解決」が公正で永続的な平和への唯一の道だとしています。

ウクライナ情勢をめぐっては、引き続きロシアに対して力強い制裁を科す一方、必要とされる限りウクライナとともにあることにコミットするとしています。

また、和平プロセスを発展させるため、引き続きウクライナを支援するほか、中長期的な復旧・復興のため民間も関与させるとしています。

このほか覇権主義的な動きを強める中国をめぐっては、G7として関与し懸念を直接表明することが重要だとする一方、グローバルな課題などについては中国と協働する必要があるとしています。

さらに、北朝鮮による弾道ミサイル計画の増強やロシアへの武器の移転を非難するとともに、拉致問題の即時解決を強く求めるとしています。

また、東京電力福島第一原発の処理水放出をめぐっては、安全で透明性が高く科学に基づいた日本のプロセスを歓迎するとしています。