イスラエルとハマス 衝突から1か月 日本に住む人の声は…

イスラエルとイスラム組織ハマスの一連の衝突から、7日で1か月です。

日本に住むイスラエルやガザ地区出身の人に話を聞くと、「武力でなく対話を」「この地獄が早く終わってほしい」という切実な声があがっていました。

憎しみと暴力の連鎖を止めることはできないのでしょうか。

国内でもドキュメンタリー映画が緊急上映されるなど、さまざまな動きが出ています。

イスラエル出身の男性「武力で平和は守れない」

埼玉県で家具作家として働いているイスラエル出身のダニー・ネフセタイさん(66)。
「武力によって平和を守ることはできない」として対話の重要性を訴えています。

自身も徴兵制で18歳から3年間空軍に所属した経歴があり、衝突が続いてきた歴史について次のように話します。

ダニー・ネフセタイさん
「ホロコーストを経験し、自分たちで自分たちを守るという教育を受けてきたイスラエル人の多くが、力でパレスチナ人を押さえるしかないと思っているし、パレスチナ人も第3次中東戦争から56年間、イスラエルに占領されきたので反発するのも理解できる」

イスラエル空軍時代のネフセタイさん

ネフセタイさんもイスラエルにいた当時は、武力で国を守るべきだと考えていたといいます。しかし、およそ40年前に結婚して日本で暮らし始めてから徐々に考え方が変わり、2008年にイスラエル軍がガザ地区に大規模な空爆と侵攻作戦を行い、子どもを含む民間人が犠牲になったことをきっかけに、講演会などを行うようになりました。

「多くの子どもを殺すことを、自分たちを守るためには仕方がないと片づけることが耐えられませんでしたし、私たちの教育がゆがんでいると考えるようになりました。自分たちを守るために軍事力を増強してきたが、武力によって平和を守ることはできず、必要なのは近隣諸国といい関係を築くことだ」

先月以降、ガザ地区への攻撃をやめて外交での解決を図るべきだとSNSで発信したところ、イスラエルの友人から批判的な意見が寄せられているということです。

「イスラエル国内にいる人たちは戦争やテロへの恐怖で支配されます。今、世界各地で反対の声があがっているが、外の人の発信が大切で、日本からも声をあげてほしい」

パレスチナ人の男性「地獄が早く終わってほしい」

現地に暮らす親族を亡くした、日本に住むパレスチナ人のモハメド・ファラジャラさん(27)は、「この地獄のような状況が1日でも1時間でも早く終わってほしい」と訴えています。

両親がパレスチナ暫定自治区のガザ地区出身で、自身も幼少期にガザ地区で暮らしていました。8年前に来日し、今はITエンジニアとして働いています。

ガザ地区には100人以上の親類が暮らしており、これまでに子どもを含む16人の親類が亡くなり、暮らしていた住宅のほとんどが破壊されたということです。

この1か月を振り返り、心境を明かしました。

モハメド・ファラジャラさん
「最初の1、2週間は悲しかったし泣いてましたが、最近は亡くなった子どもや空爆された家を見ても何も感じなくなり、無感情になっています。頭の中はぐちゃぐちゃだけど外には出せないという感じで、パレスチナ人はみんな同じなのではないかと思う」

イスラエルがガザ地区への攻撃を続けていることについては…

「イスラエルへの怒りはありますが、世界が反対しているのにアメリカやヨーロッパの国々がイスラエルを応援しているのはなぜなのかと思います。アメリカがイスラエルにお金や兵器を支援することが戦争が続く理由となっていると思いますし、アメリカがそれをやめれば攻撃は止まると思います」

世界各地で攻撃の中止と即時停戦を求める声が広がっていることについて、次のように話しました。

「一人ひとりの力は小さいかもしれませんが、それが集まれば世界を変えることもできる思います。この地獄が1日でも1時間でも早く終わってほしい。今願うのはそれだけです」

渋谷でドキュメンタリー映画が上映

イスラエルとイスラム組織ハマスとの衝突が1か月にわたって続く中、東京都内の映画館では、パレスチナのガザ地区で生きる人たちの姿を描いたドキュメンタリー映画が上映されています。

映画は2019年に製作された「ガザ 素顔の日常」で、イスラエルとの間で軍事衝突が繰り返され被害の傷痕が残るガザの街で、力強く生きる人々の姿が描かれています。

配給会社によりますと、衝突が始まった10月7日以降、自主上映の依頼が相次ぎ、11月7日までに25の都道府県から67件の申し込みがあったということです。

東京 渋谷区の映画館では、7日午前10時半からの上映におよそ20人が訪れました。

鑑賞した人
「ガザ地区や戦地など、どのような場所にも人の生活があることを忘れてはいけないと改めて思いました。遠い土地の戦争に対して、一人一人が出来ることは限られているが、署名を行うことやどう思うかなど、積極的に話す機会を持つことも大事だと思いました」(30代女性)

「映画では、子どもたちが大変な状況にもかかわらずたくましいなという風に感じましたが、いまはもっとひどい状況になっているので、人道的に考えても即、停戦が当然のことだと思う」(70代男性)

パレスチナ人の作家の小説 SNSの反響受け重版

出版界にも動きが出ています。

45年前の1978年に日本語訳が出版され、当時、パレスチナ解放運動の体験が原点になっているパレスチナ人の作家による小説として高い評価を受けた作品集が、SNSでの反響などを受けて重版されました。

重版された書籍 8日以降 書店などに

小説集「ハイファに戻って/太陽の男たち」には、1936年にパレスチナに生まれた作家のガッサーン・カナファーニーさんの代表作から、7つの短編が収録されています。

難民となったカナファーニーさんはパレスチナ解放運動に参加し、1972年に36歳の若さで暗殺されるまで、自身の体験を元に「パレスチナ問題」に翻弄される人々の苦しみなどを、小説や戯曲で発表してきました。

死後、1978年に河出書房新社から日本語訳が刊行された際には、大江健三郎さんがあとがきを寄せるなど高く評価され、2017年には文庫化もされました。

そして、先月(10月)以降、SNSで「今こそ読むべき作品だ」などとして注目されたことから、1500部を重版したということです。

編集担当の町田真穂さん
「祖国とは何かという話も入っていて、パレスチナの現状を伝えたいという思いで書かれた作品です。まずは作品を通して知ってほしい」