【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(7日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる7日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナとは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ゼレンスキー大統領「今は選挙をする時期ではない」

ウクライナのゼレンスキー大統領は6日、国民に向けた演説で「誰もがわれわれの国を防衛することを考えるべきだ。われわれは結束する必要がある」と述べ軍事侵攻を続けるロシアに対抗するため結束する必要があると強調しました。

そのうえで「戦時下で多くの課題があるいま、選挙の話題を軽々しく社会に投げかけるのは全く無責任であることは誰もがわかっていることだ。今は選挙をする時期ではないと考えている」と述べました。

来年の春が大統領選挙の実施時期ですが、選挙の延期を突如、示唆した詳しい背景についてゼレンスキー大統領は明らかにしていません。

ただ、ゼレンスキー大統領はイスラエル・パレスチナ情勢を受けて、ウクライナに対する国際社会の関心が低下していると危機感をにじませ地元メディアが大統領の政策に批判的な大統領府元顧問が立候補する意向を示したと報じるなど、ゼレンスキー大統領を取り巻く国内外の環境が変化しています。

ゼレンスキー大統領 トランプ氏をウクライナに招く考え示す

アメリカのトランプ前大統領が、ロシアへの譲歩などをウクライナに迫るような発言をしているとして、ゼレンスキー大統領は、軍事侵攻が続く困難な状況を説明するためトランプ氏をウクライナに招く考えを示しました。

ただ、トランプ氏は、招待を断ったとしています。

アメリカのトランプ前大統領は来年のアメリカ大統領選挙で自身が勝利すれば「ロシアによるウクライナ侵攻を24時間で終わらせることができる」などと主張しています。

この発言についてウクライナのゼレンスキー大統領は、5日放送されたアメリカNBCテレビのインタビューでトランプ氏をウクライナに招く考えを示しました。

そのうえで「もし彼が来たら24分でこの戦争を終わらせることなどできないと説明できる」と述べ軍事侵攻が続く困難な状況を説明するとしています。

アメリカの一部メディアによりますと、トランプ氏は「ゼレンスキー大統領を尊敬しているが、いまウクライナに行くことは適切ではないと思う」として招待を断ったとしています。

ウクライナへの軍事支援を巡っては、一部の国から消極的な意見が出たり実際に停止する方針が表明されたりするなか、イスラエル・パレスチナ情勢を受けて国際社会の関心も低下しているという指摘が出ています。

ゼレンスキー大統領としてはウクライナに譲歩と停戦を迫るようなトランプ氏の発言は到底容認できず神経をとがらせているものとみられます。

ウクライナ軍総司令官 英経済誌に論考を寄稿

ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、イギリスの経済誌「エコノミスト」に対して「現代の陣地戦とその勝ち方」と題する論考を寄稿し、今月1日公開されました。

このなかでザルジニー総司令官は、ロシアによるウクライナ侵攻について「第2次世界大戦後、最大で、前例のない世界的な安全保障上の危機」としたうえで両軍は、それぞれの陣地を拠点にするなどして長期的に戦う「陣地戦」の形態に移行しているとしています。

「陣地戦」に勝利するためには、ミサイルや砲弾といった基本的な武器が不可欠としたうえで
▽航空優勢の獲得、
▽深部の地雷原突破、
▽対砲兵部隊への有効性の向上、
▽必要な予備役の創設と訓練、
そして
▽電子戦能力の強化の主に5つの要素が重要になると指摘しています。

このうち「航空優勢の獲得」は、大規模な地上作戦の遂行に不可欠だとしていて、ウクライナ軍は、開戦時は120機の戦闘機を保有していたが3分の1の40機ほどしか使用に適していなかったと明らかにしています。

そして、ロシア空軍も大きな損失がでているものの「依然として大きく優位を維持している」と分析しロシアの防空システムに負荷を与えるためにも攻撃型の無人機の活用が重要だと指摘しています。

また、「深部の地雷原突破」についてはロシア軍の地雷原は、密度が高い上、15キロから20キロもの広範囲に及ぶと分析した上で、地中の地雷を探知するために光のパルスを使ったレーダー装置や、地雷を除去する部隊の活動を敵の攻撃から隠すための煙幕装置など、最新の技術が必要だと訴えています。

「対砲兵部隊への有効性の向上」については、過去の戦争と同様にウクライナでの戦闘でもミサイル部隊や砲兵部隊の任務は重要で、全体の60%から80%を占めていると指摘しています。

ウクライナは、欧米側から供与された高機動ロケット砲システム=ハイマースなども駆使して対抗してきましたがより優れた砲撃能力が必要だとしています。

「必要な予備役の創設と訓練」については、ロシアは、ウクライナと比べて3倍の予備役の動員能力があるとするものの、プーチン政権は、来年3月の大統領選挙などを前に総動員を行うことによる混乱を恐れ兵力で十分な優位性は築けていないと分析しています。

そのうえで、ウクライナ側としても兵力を確保するために戦闘に参加する国民の統一された徴兵登録簿を導入することや訓練の拡大が必要だとしています。

そして、電波妨害などを行う「電子戦能力の強化」についてロシアは過去10年間で、電子戦の能力を近代化するなどウクライナの能力を大きく上回っていると指摘したうえでウクライナ側は欧米などの支援も得ながら、能力を強化する必要性を訴えています。

ザルジニー氏は「陣地戦の形態に移行することは戦争の長期化につながり、ウクライナにとって重大なリスクを伴う。あらゆる手段で軍事力の再編成と増強を図ろうとする敵にとっても有益となる」として長期化すればロシアにとって有利になりかねないとしていて、5つの要素に従って敵との軍事的な均衡を打開する新たなアプローチが必要だと結論づけています。

欧米紙 “ウクライナへの関心低下でロシアに利益”

欧米の主要紙は、ウクライナへの関心が低下することで利益を得るのは、ロシアのプーチン大統領だとして、イスラエル・パレスチナ情勢が緊迫する中にあってもウクライナに対する継続的な支援が必要だと訴えました。

このうちイギリスのガーディアン紙は4日の社説で「中東での出来事は、世界の政治やメディアの関心をウクライナで起きている戦争から遠ざけている。ウクライナへの関心が低下することで利益を得るのはロシアのプーチン大統領だ」と指摘しました。

そのうえで「プーチン大統領は『勝利』を目指していて、西側にとっては、ウクライナへの支援をいかなる形であっても揺るがすべき時ではない」として、イスラエル・パレスチナ情勢が緊迫する中にあってもウクライナに対する継続的な支援が必要だと訴えました。

また、アメリカの有力紙ワシントンポストも5日「ウクライナは、去年のいまごろよりも困難な状況にある。西側の社会は、いっそうの支援を行うかどうかをめぐり二極化が進んでいる」と述べ、ウクライナ支援の足並みが乱れつつあるとして懸念を示しています。

フランスの有力紙ルモンドも、先月の社説で「プーチン大統領はアラブ諸国などで西側への拒否感が広がっている状況を利用し、自身の侵略行為を忘れさせようとしている」としてプーチン大統領はロシアを取り巻く状況を好転させるためにも中東の混乱を利用しようとしていると警戒感を示しました。

ロシア軍 冬に向け空からの攻撃強めるか

ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は、各地で無人機やミサイルの攻撃を続けていて南部オデーサなどで被害が出ています。

ウクライナのクリメンコ内相は、ロシア軍が5日、南部ヘルソン州で一日だけで87発の爆弾を投下したと発表し、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は6日、「これまでで最大規模の滑空爆弾による攻撃だった」と指摘しています。

また、アメリカの「戦争研究所」は「ロシアのミサイル製造は、以前の予測よりも急速に増加していると報告されていて、ミサイルの在庫を増やしている」と分析していてロシア軍は、冬に向けて今後、空からの攻撃を一段と強めるものとみられます。

クリミアでの攻撃の成果 双方が発表

ロシア国防省は7日、黒海や一方的に併合している南部クリミアの上空でウクライナ側が、無人機による攻撃を仕掛け、合わせて17機を撃墜したと発表しました。

ウクライナ軍は4日もロシア軍の艦船を建造しているクリミアにあるザリフ造船所をミサイルで攻撃したと明らかにし、ロシア国防省も艦船1隻が損傷したと認めるなどウクライナ側は奪還を目指しているクリミアで無人機やミサイルによる攻撃を続けています。

“ロシア軍兵士も劣悪な環境に置かれている” 英国防省分析

イギリス国防省は5日、侵攻するロシア軍の状況について「前線で何週間にもわたり、頭からつま先までぬれていた」とか「泥の中で食事をとっていた」などとする証言を紹介し、兵士が劣悪な環境に置かれていると指摘しました。

補給支援の不安定性などが背景にあるとしていて、ロシア軍の大きな課題となっていると分析しています。

ロシア軍による無人機やミサイルでの攻撃続く

ロシア軍は、ウクライナ各地で無人機やミサイルによる攻撃を続けていて、南部オデーサ州の当局者は6日、ロシア軍の夜間の攻撃で8人がけがをしたと発表しました。

さらに世界遺産に登録されているオデーサ中心部の「歴史地区」では住宅や美術館が被害を受けたとしています。

ゼレンスキー大統領は5日に公開されたアメリカNBCテレビのインタビューで、「冬は非常に困難な時期だ」と述べ、防空システムや無人機などのさらなる軍事支援を欧米各国に求めました。

ロシア側幹部 “南部クリミアまでつながる鉄道建設が始まった”

ロシアが一方的な併合を宣言したウクライナ南部ザポリージャ州のロシア側の幹部は6日、国営メディアなどに対し、ロシア南部ロストフ州からザポリージャ州を経由し、南部クリミアまでつながる鉄道の建設工事が始まったと明らかにしました。

ウクライナ東部ドネツク州でもすでに鉄道建設が始まり、物資輸送などに使われる見通しだとしていて、ロシアとしては部隊の補給支援を強化するとともに支配の既成事実化を進めるねらいとみられます。