10月のクマ被害 71人で過去最多に 「60代以上」に被害集中

クマに襲われてけがをするなど被害にあった人の数をNHKがまとめたところ、10月の1か月で71人に上り、1か月の被害としてはこれまでで最も多くなりました。今年度はこれまでに少なくとも18の道府県で180人が被害にあい、国が統計を取り始めて以降かつてない規模の被害となっていて、国や自治体などが対策の徹底を呼びかけています。

環境省によりますと、ことし4月から9月までにクマによる被害にあった人の数は合わせて109人に上っています。

その後、10月の被害をNHKが各地域局の取材をもとに集計したところ、被害にあった人は少なくとも71人で、環境省の9月までの集計と合わせると、18の道府県で180人に上っています。

これは、環境省が統計を取り始めて以降、最も多い158人の被害が出た3年前=2020年度の1年間をすでに大きく上回り、過去最悪の被害となっています。

また、10月の被害は71人と、1か月の被害として、これまでで最も多かった49人を大きく超え、かつてない規模の被害が出ています。

今年度の被害を道府県別に見ますと、
▽秋田が61人で最も多く、全体の3分の1以上を占めているほか、
▽岩手が42人
▽福島が13人
▽青森で11人と、
東北地方で被害が多くなっています。

このほか、
▽長野で10人
▽富山で7人
▽新潟で7人
▽北海道で6人
▽岐阜で6人
▽山形で5人
▽群馬で3人
▽宮城で2人
▽石川で2人
▽山梨で1人
▽福井で1人
▽三重で1人
▽京都で1人
▽島根で1人と、
各地で被害が広がっています。

例年、クマが冬眠に入る12月ごろにかけて、各地で被害が相次いでいることから、国や自治体、専門家が被害を防ぐ対策の徹底を呼びかけています。

クマの生態に詳しい石川県立大学の大井徹特任教授は「11月になると、冬眠に入るクマも少しずつ出てくるが、被害や目撃情報が多くなる、ことしのような“大量出没”の年には、なかなか冬眠に入らず、餌を求めて行動を続けるクマも出てくるかもしれない。山林や川の近くだけではなく、思いもよらない場所に出没するおそれもあり、警戒を続けてもらいたい」と話していました。

クマに襲われた時間帯や被害にあった人の年代は

NHKは各地域局の取材をもとに、10月の1か月間に被害にあった71人について、クマに襲われるなどした時間帯、被害にあった人たちの年代について、その傾向を分析しました。

特に警戒が必要な「時間帯」は

クマに襲われたり、通報があったりした時間帯をみますと、71人のうち22人が「午前5時ごろから午前8時ごろまで」の早朝から朝にかけての時間帯に集中していたほか、午前中の被害を合わせると46人と全体の6割以上を占めています。

また、午後4時ごろ以降の夕方から夜にかけての時間帯も13人と多くの被害が出ていました。

大井特任教授は「人とクマの活動が重なる朝や夕方の時間帯に鉢合わせてしまうことが増えているのではないか。日の出の時間帯が遅くなって、人が活動を始める時間が遅くなり、クマの活動時間も長くなっているとみられる。朝に外に出るときには、近くにクマがいないか注意深く確認したり、クマが潜んでいそうな、やぶなどの見通しが悪い場所に近づくときには、大きな声を出して人の存在を知らせるようにしてもらいたい」と話しています。

被害は「60代以上」に集中

被害にあった人たちの年代をみてみると、
▽60代が11人
▽70代が29人
▽80代が21人となっていて、
全体の71人のうち、60代以上が61人と、高齢者などに被害が集中しています。

一方、10月19日には秋田県北秋田市で学校から帰宅途中の女子中学生がクマに襲われてけがをするなど、若い世代にも被害が出ています。

これについて、大井特任教授は「クリや柿をとるなど、対策が難しい高齢化が進んでいる地域で被害が多くなっているとみられ、高齢者は若い人に比べて危険を察知するのが遅くなる傾向があるため、より注意が必要だ。クマの出没が確認されている地域では、今の時期は、朝や夕方、それに夜間の散歩などの外出は控えるようにしてほしい」と呼びかけています。