NTT 自社開発の国産生成AIサービス 来年3月から企業向け開始へ

NTTは、自社で開発した国産の生成AIのサービスを来年3月から企業向けに始めると発表しました。アメリカの大手IT企業に対抗し、導入などのコストを大幅に抑えたのが特徴だとしています。

発表によりますと、NTTは自社で開発した国産の生成AIを使ったサービスを来年3月から企業向けに提供します。

名称は打楽器の鼓(つづみ)にちなんだローマ字の「tsuzumi」で、日本語の処理性能を重視しています。

生成AIをめぐっては、アメリカの大手IT企業が豊富な資金力と大規模なデータセンターを使ったサービスの提供で先行しています。

これに対して、特定の業種や分野に特化する形でパラメーターと呼ばれるAIの学習量を抑え、大規模な設備が必要ないことや、提供先の企業が行うAIの学習の期間を短縮できることが特徴だとしています。

これによって、アメリカの大手IT企業のサービスに対して、導入や運用のコストを大幅に抑えられるとしています。

また、将来的には、小規模な設備で分散化し、NTTが開発中の「IOWN」と呼ばれる次世代のネットワークでつなぐことで大規模な生成AIと同様の機能を持たせることを目指しています。

記者会見で島田明社長は「国内外の事業者が切磋琢磨(せっさたくま)して市場は大きくなる。2027年に年間1000億円以上の売り上げを目指したい」と述べました。

日本企業の顧客獲得の競争 日米で激しさ増す

日本企業の顧客を獲得しようと、アメリカの大手IT企業が手がける生成AIと、国産の生成AIを開発する日本勢との間で、日本市場を舞台にした競争が激しさを増しています。

生成AIの開発で先行するアメリカの大手IT企業では
▽マイクロソフトが「ChatGPT」を開発したオープンAI社に対し、複数年にわたって数十億ドル規模の投資を行うことを決め、その提携関係を強みに日本市場でも攻勢を強めています。

先月には、自社の生成AIを導入する企業を対象にした総額1億ドルの支援プログラムを発表し、このうちのおよそ4割は日本企業を対象にする見込みです。

▽アマゾンは、自社のシステムを基盤に生成AIを開発する日本企業向けに、総額600万ドル規模の支援を始めました。

日本企業の顧客を獲得しようと攻勢を強めるこうしたアメリカの大手IT企業の動きに対抗しようと、国産の生成AIの開発を進める企業の動きも活発になっています。

▽NECは、自社開発した国産の生成AIの企業への提供をことし7月に開始し、企業だけでなく自治体や大学も含めて実証データの収集を重ねています。

日本語への対応を強化したうえで、特定の業種や分野に特化する形で導入を広げようとしています。

▽ソフトバンクは、生成AIの開発を目的とした新たな子会社を設立し、来年中には技術的な基盤である「大規模言語モデル」の完成を目指しています。

今回、NTTが国産の生成AIのサービスの開始を打ち出したことで、日本市場を舞台にした顧客の獲得競争がさらに激しさを増しそうです。