3位決定戦は27日、サンドニで行われ世界ランキング5位で前回の日本大会で準優勝のイングランドと4大会ぶりの3位を狙う世界7位のアルゼンチンが対戦しました。
ラグビーW杯 イングランドがアルゼンチンとの激闘制し3位に
ラグビーワールドカップフランス大会は27日、3位決定戦が行われ、前回大会準優勝のイングランドがアルゼンチンに26対23で勝ちました。
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【詳しいデータはこちら】アルゼンチン×イングランド
イングランド 一時逆転されるも激闘制す
試合はイングランドが前半3分、キャプテンのオーウェン・ファレル選手がペナルティーゴールを鮮やかに決めて3点を先制し、その5分後には素早いパス回しで相手のスペースを突き、最後はフォワードのベン・アール選手が鋭く駆け込んでトライを奪いました。
イングランドはその後もファレル選手が2本のペナルティーゴールを決め16対3とリードを広げました。
対するアルゼンチンは前半終盤の36分、持ち味のフィジカルの強さで粘り強く攻め、スクラムハーフのトマス・クベリ選手がスペースを駆け上がってトライを決めて6点差に詰め寄り、後半開始2分には25歳の若き司令塔、サンティアゴ・カレラス選手が華麗なステップで相手をかわしトライを決めるなど17対16と逆転しました。
しかし、イングランドがその直後、アルゼンチンのキックをチャージしたフッカーのテオ・ダン選手がトライを決めて、再びリードを奪いました。
その後は互いにペナルティーゴールを蹴り合い、イングランドは3点差まで詰め寄られましたが、最後はアルゼンチンの猛攻をしのいで、26対23で逃げきり3位になりました。
アルゼンチンは終盤の35分に途中出場のベテラン、ニコラス・サンチェス選手が同点のペナルティーゴールを狙いましたがわずかに外れ、その後の猛攻も届きませんでした。
1か月半を超える熱戦が続いたラグビーワールドカップフランス大会は28日、ともに史上最多4回目の優勝を目指す南アフリカとニュージーランドが決勝で対戦します。
《イングランド HC・主将談話》
ボーズウィックHC「成果をみせることできた」
接戦を制したイングランドのスティーブ・ボーズウィックヘッドコーチは、試合後「われわれのやり方で勝つことができてうれしい。ワールドカップでは7試合戦って、6試合勝つことができた。このチームをつくってきた成果をみせることができてうれしい。本当によくやったと思う」と振り返りました。そのうえで「優勝したかったが、若い選手が多いこのチームで、ここまでやれたことが大事だった。まだまだ勝つための手段は見つけられると思うし、改善すべき点はあると思う」と話していました。
ファレル主将「次のW杯へ所属クラブで良いプレーすること」
キャプテンのオーウェン・ファレル選手は「このチームは常に進化していく。ボーズウィックヘッドコーチは、私たちが何をすべきかを徹底的に見直すだろう。選手たちは今夜は、勝利の余韻に浸り、来週には、それぞれのクラブに戻るだろう。選手たちが次のワールドカップのためにできる最善のことは、所属クラブで良いプレーをすることだ」と話していました。
《アルゼンチン HC・主将談話》
チェイカHC「チャンスを逃してしまった」
接戦の末に敗れたアルゼンチンのマイケル・チェイカヘッドコーチは、試合後「残り15分で逆転することができた試合だったが、終わってしまったことはしかたがない。全力を尽くしたが、何度かのチャンスを逃してしまった」と振り返りました。そのうえで「ここまで大会にいることができたことはよかった。負けたことを受け入れるのは大変つらいが、われわれが成し遂げたことはアルゼンチンの人々に誇りに思ってもらえると思う。すべてのテクニックにおいてまだまだ改善できる点はある」と話していました。
モントーヤ主将「チームのみんなには感謝しているし誇りに思う」
キャプテンのフリアン・モントーヤ選手は「とにかく負けたことが悲しくて胸が痛い。自分たちのベストを尽くしたが、ミスをしてしまった。チームのみんなには感謝しているし、誇りに思う。アルゼンチンは今後、もっと良くなれると思う」と話していました。
◆イングランド ベン・ヤングスの代表引退に花添える
3位決定戦でアルゼンチンに勝利したイングランド。チーム歴代最多キャップを誇る、スクラムハーフでキックの名手のベン・ヤングス選手の代表引退に花を添えました。
34歳のヤングス選手は、今大会でワールドカップに4大会連続出場となるベテランで、キックの名手として知られています。試合前の25日、メディアに対し今大会で代表から退くことを表明していました。
ベン・ヤングス選手
「ずっと頭の中にあって迷いもありません。正しい決断だと思っています。イングランド代表はすばらしい思い出で、長い旅でした。良い時も悪い時も見てきたので、週末(3位決定戦)は最高の気分で終われたらいい」
そして迎えた3位決定戦。スクラムハーフで先発出場したヤングス選手は、持ち前のキックをいかし、何度も弾道の高いキック=ハイパントを相手の陣地に蹴り込み、チームの攻撃の起点になり続け、両チーム最多に並ぶ11回のキックをマークしました。
また、パスもチーム最多の34本と全く衰えを感じさせない活躍を見せました。
そして後半11分に途中交代する際にはファンから大声援が送られ、ベンチ前にいる選手1人1人と握手をしてグランドから退きました。
試合後、イングランドのスティーブ・ボーズウィックヘッドコーチは、ヤングス選手をたたえました。
スティーブ・ボーズウィックHC
「彼は若い時は才能ある選手だったが、そこからプレッシャーのかかる状況でもゲームを管理し、周りの選手を助けることができるリーダーに成長した。賞賛されるのは当然だ」
そして、ヤングス選手は試合後のNHKの取材に対し笑顔で答えました。
ベン・ヤングス選手
「イングランド代表としてプレーできたことはとても名誉なことだし、光栄なことだった。準決勝は負けてしまったけど、きょうは笑顔で立ち去ることができる。イングランドは若い有望な選手がたくさんいるので、きょうのチームは4年後には大きく変わるとともにとても強いチームになっているだろう」
今大会、キックを多用する伝統のスタイルを改めて印象づけたイングランド代表。そのチームを象徴するキックの名手は、最後までチームの勝利に貢献し、代表のユニフォームを脱ぎました。