「床ずれ予防の日」重症化で死に至ることも 予防対策は

10月20日は学会が定める「床ずれ予防の日」です。床ずれと呼ばれる褥瘡(じょくそう)は対応が遅れて悪化すると命にも関わる重大な事態になりかねないとして、学会は予防と早期発見を呼びかけています。

患者は3万人以上

医療関係者らでつくる「日本褥瘡学会」は語呂合わせから、10月20日を「床ずれの日」と定めています。

床ずれは医学的には褥瘡と呼ばれ、寝具や車いすなどと長時間接触することで皮膚やその下の組織がダメージを受けてできる傷のことです。

厚生労働省の調査によりますと、床ずれで治療を受けている患者は2020年には全国でおよそ3万2000人と推計されていますが、治療を受けていない人や症状に気付いていない人は含まれていないということで、実態はさらに多いとみられます。

床ずれは、悪化すると細菌に感染して命にも関わる重大な事態になりかねず、学会は、予防と早期発見が重要で、床ずれの可能性がある場合は医師や看護師に相談するよう呼びかけています。

「早期発見で治療に結び付けて」

「日本褥瘡学会」の須釜淳子理事長は「病院だけではなく自宅で介護を受けている人も多いので、家族にも早い段階で見つけてもらい、適切な治療に結びつけてほしい」と話しています。

初めは小さな床ずれでも…

高齢者は皮膚の再生能力が低くいったん床ずれになるとなかなか治りにくく、強い痛みを伴うことが多いということです。

大阪・吹田市にある特別養護老人ホームの看護師・齊藤良子さんは「初めは小さな床ずれでも肌の奥深くまでどんどん進み細菌感染して命を落とすこともあるので、どうすれば防げるか常に気をつけています」と話しています。

この施設では入所者一人ひとりに合わせた床ずれ対策に力を入れていて、看護師、介護士、栄養士、それに理学療法士がチームになって予防に取り組んでいます。

まず、入所した日の入浴の際に全身をくまなく見て、皮膚の乾燥や床ずれの痕を確認します。

そして、体圧を測定し、寝る時の体勢を考えるといった予防策をとっています。

「床ずれは予防できる」現場の意識変えたい

齊藤さんは「介護現場では長年『寝たきりになったら床ずれができて当たり前、しかたがない』という意識があったと思います。しかし、床ずれは予防できる、ゼロにできると現場の意識を変えて知識や技術を高めていきたいです」と話しています。

頭から足までどこでも

「日本褥瘡学会」によりますと、床ずれは、骨が出っ張っている体の下になる場所にできやすいとしていて、寝ていても座っていても、頭から足まで幅広い場所にできるおそれがあるということです。

対策1 「圧迫対策」

床ずれを防ぐための予防法です。

空気が入っていたり、ウレタンでできていたりするマットレスやクッションを選び、体圧を分散させることが有効だということです。

対策2 「ずれ対策」

皮膚がこすれると弱い圧力でも床ずれができやすいため、電動ベッドを動かした際や起き上がったときに体がずり落ちていないか注意し、滑りやすいシートや手袋を使って介護することも対策の1つだということです。

対策3 「寝たきり予防」

筋肉を維持するため適度な運動を心がけるほか、十分な栄養を取ることが重要だということです。

床ずれの初期症状は、皮膚が赤くなったり、皮膚の下が硬くなったりするということで、早期に発見することも大切です。

川柳で理解促進

「日本褥瘡学会」は、床ずれをテーマにした川柳を公開して理解を広げる取り組みをおこなっています。

床ずれや介護について自分だけで抱え込まず、悩みや苦労を共有したいということです。

入選作品の中には「床ずれも 心のずれも 予防から」とか、「伸ばしたい パジャマとシーツと 顔のシワ」といったユーモラスな作品があります。

また「見逃すな 皮膚の小さな 赤信号」と床ずれの注意を喚起する作品も選ばれました。