「見た目問題」知っていますか?

まっすぐにこちらを見つめるのは「見た目問題」の当事者の1人です。

病気による脱毛や生まれた時からのあざなど、見た目に症状がある人たちをモデルにした写真展が、東京都内で開かれました。

東京・世田谷区で開かれた写真展は、外見的な症状がある人たちが直面する差別や偏見を「見た目問題」と名付け、解決に取り組むNPO法人が、化粧品メーカーとともに開いたものです。

写真のモデルになったのは、生まれた時からほおに「単純性血管腫」という赤いあざがある人のほか、肌や髪の毛など、体の色素が薄い「アルビノ」や、全身の体毛が抜ける「汎発性脱毛症」などの症状がある、いずれも「見た目問題」の当事者5人です。

「見た目問題」とは

こうした、見た目に症状がある人たちは、海外のデータなどから推計し全国に100万人いるとも言われています。

問題の解決に向けた取り組みを行うNPO法人は、就職などで差別を受けたり、好奇の視線を向けられたりするなど、当事者が直面する困難を「見た目問題」と名付け、15年以上にわたって啓発活動や当事者の交流を支援してきました。

NPOでは、周囲が症状について知らなかったり、考える機会がなかったりするために誤った対応をしてしまうとして、理解を深めるための講演活動などに取り組んでいます。

「見た目に問題がある」のではなく「見た目を理由とする差別や偏見などによって生じる問題」があることを伝え続けています。

自分らしい姿 表現する当事者たち

会場に展示された5人の写真は、色とりどりの衣装を笑顔で身にまとったり、思い思いの表情でポーズをとったりするなど、それぞれが作品の中で自分らしい姿を表現しています。

撮影 フォトグラファー RiE Amano

石山直幸さん
生まれたときから「単純性血管腫」という境界がはっきりしている赤いあざがあります。治療法にはレーザー治療や皮膚移植がありますが、レーザーでは皮膚の奥の届かない部分は消すことができません。

「写真を撮られること自体が初めてだったのですが、おもしろかったです。克服すると楽しくなるから、苦手なことをやるのが好きなんです。写真を撮られるのは嫌いだけど、やってみようと思って参加しました」

Marikoさん
全身の体毛が抜け落ちていく「汎発性脱毛症」という自己免疫疾患。

「“髪がない”っていうと笑いの方向にもっていかれたり、バカにされたりすることのほうが多くて、生きづらい面もあります。髪がないことのイメージを変えてもらえたらと思って参加しました」

Masakiさん
顔のほほ骨やあご骨がうまく形成されない「トリーチャー・コリンズ症候群」で、聴覚障害や呼吸障害などを併発する場合もあります。

「なかなかできない経験で、楽しかったです。最初は緊張感こそあれど、皆さん優しかったので撮影は緊張せずにできました」

神原由佳さん
生まれたときから、肌や髪の毛など体の色素が薄い「アルビノ」。
視覚に障害がある人が多い。

「メイクや衣装選びが楽しくて、気分が上がりました。写真が世に出てどういうリアクションが得られるかわからないなと思いつつも、わからないからこそチャレンジしたいと思いました。まだまだ日本の化粧品の広告はきれいな人や、スタイルがいい人が主だけど、外見に疾患があったり、モデルではない普通の人だったりが、出るのがいいなと思いました」

粕谷幸司さん
『アルビノ・エンターテイナー』として活動。

「『こんなに苦しくても強く生きている人がいる』って方向性ではなく、『人と違う見た目の人たちでも自分らしさをとらえて、それぞれがそれぞれなりに生きていくんだよ』っていう、前向きかつ優しいメッセージになると思います。見た人が思う存分、心の底から、きれい、かっこいい、と思ってもらえるといいなと思います」

会場には、大勢の人たちが訪れ、1枚1枚の写真をじっくりと見つめていました。

30代男性
「『見た目問題』を知って考えるきっかけになりましたし、単純に、おしゃれなモデルさんだなという印象を持ちました」

20代女性
「写真がすごくきれいだなと思って、会場に入りました。皆さん笑顔で、輝いていると感じました」

※会場の様子が動画で見られます

“見た人が自由に感じてほしい”

主催したNPO法人「マイフェイス・マイスタイル」代表の外川浩子さんは、顔にやけどのあとがある人との交際がきっかけで、NPOを発足させました。

作品撮影時 モデルたちと並ぶ外川さん(中央)

今回の写真展の開催にあたり、1番伝えたいことは何かを聞きました。

「マイフェイス・マイスタイル」代表 外川浩子さん
「“こういうことを伝えたい”というのはあまりなくて、見た人が自由に感じてほしいなと思っています。当事者の人たちは、もちろん大変なことを経験してきている方もいますが、この写真を見ると『しんどいことだってあるけど、大丈夫だよ』って伝わるかなと。『見た目問題』を知らなかった方が、写真を見て『すてきですね』と言ってくれることも、とてもうれしいです。難しい問題は抜きにして、すてきな写真を見て“楽しんでほしい”という気持ちの方が強いです」