リニア中央新幹線 山梨県で初のトンネル貫通

2027年の開業を目指して工事が進められているリニア中央新幹線で、山梨県内のトンネルの1つが13日貫通しました。品川から名古屋の本線区間で初めてのトンネル貫通です。

リニア中央新幹線のトンネルが貫通したのは、山梨県富士川町にある「第一南巨摩トンネル」です。

トンネル内で、名古屋方面に向かって「ブレーカー」と呼ばれる重機が掘削を進めると、内壁が少しずつ剥がれて穴があき木の葉の間から光が差し込みました。

その瞬間、集まった関係者およそ160人が万歳をして貫通を祝いました。

JR東海によりますと、このトンネルは、全長およそ710メートル、幅およそ12.8メートル、高さおよそ7.6メートルで、去年3月から掘削を進めてきたということです。

開業が予定されている品川・名古屋の区間で実験線以外の本線のトンネルが貫通するのは初めてです。

リニア中央新幹線はJR東海が2027年の開業を目指していますが、静岡県は水資源や南アルプスの生態系などへの影響を懸念して着工を認めていません。

JR東海中央新幹線山梨西工事事務所の渡辺隆所長は「不安や心配などいろいろな声を細かく聞くなど地域の理解を得ながら今後も工事を進めたい」と話していました。

山梨 長崎知事「沿線全体で待望論が高まることも重要な要素」

山梨県の長崎知事は記者会見で「無事に開通できたことは大変よかった。県内では工事が一歩一歩、ステップを踏んでいるあらわれだと思っている」と述べました。

そして、静岡県が水資源や南アルプスの生態系などへの影響を懸念して着工を認めていないことについて、「静岡県も含めて沿線全体で待望論が高まることも重要な要素だ」と述べました。

静岡内での着工 めど依然立たず

リニア中央新幹線は、時速500キロで走行し、東京 品川と名古屋を最短40分で結ぶ次世代の交通の大動脈とされています。

2014年10月、国土交通大臣がこの区間の工事実施計画を認可したことを受けて、JR東海が工事に着手しました。

JR東海によりますと、ことし3月の時点で工事に必要な土地の権利をもつ権利者のうち、およそ65%の人と取得に関する契約を締結したということです。

工事費の見込みはおよそ7兆円、2027年の開業を目指していますが、静岡県内での工事をめぐって、県とJR東海の協議が難航し、計画どおりの開業は難しくなっています。

静岡県側は、県内を流れる大井川の地下で行われるトンネル工事によって、川の水が減少し、流域の水資源や生態系に悪影響が出る懸念があるとして県内での着工を認めていません。

工事が実質的に進まない状況が続く中、国土交通省は、静岡県とJR東海の仲裁に入る形で2020年4月に有識者会議を設置し、水資源などへの影響について科学的・工学的に議論してきました。

このうち水資源への影響について国の有識者会議では、2021年12月にトンネル工事の際に湧き出た地下水を大井川に戻すための水路をつくれば、中流や下流での水量は維持されるなどとする中間報告をまとめました。

また、生態系への影響についても先月、対策案を示し、トンネルを掘った際に周辺の沢で水量が減少するのを抑える保全措置や、工事の残土が周辺環境に与える影響を調べるモニタリングなどJR側が取るべき対策について「一定の整理がついた」と位置づけました。

ただ、静岡県側は、議論すべき点がまだ積み残されているとして、JR側とさらに協議を行う必要があるという姿勢で、県内での着工のめどは依然、立っていません。