イスラエル 緊急政府発足へ “ハマスとの戦争を遂行するため”

イスラエルでは「イスラム組織ハマスとの戦争を遂行するため」として、与党と野党の一部が連携して緊急政府を発足させることで合意しました。政権の基盤を強化し、地上侵攻を視野に、ハマスに対する強硬姿勢をさらに強めていくものとみられます。

イスラム組織ハマスが今月7日にイスラエル側に大規模な攻撃を仕掛けた報復として、イスラエル軍はハマスが実効支配するガザ地区に対する空爆を続けています。これまでにイスラエル側で少なくとも1200人、ガザ地区で1354人が死亡したとされていて、双方の死者はあわせて2500人を超えています。

こうした中、イスラエルのネタニヤフ首相は11日、野党の党首、ガンツ前国防相と会談し、「ハマスとの戦争を遂行するため」として、緊急政府を発足させることで合意しました。

緊急政府では通常の内閣とは別に、ガンツ氏やガラント国防相らによる「戦争管理内閣」を立ち上げるとしています。

合意を受けて演説したネタニヤフ首相は、ハマスを過激派組織IS=イスラミックステートになぞらえ、「世界がISを壊滅させたように、われわれもハマスを粉砕し壊滅させる」と述べました。

イスラエル軍はガザ地区の周辺に大規模な部隊を展開させていて、地上侵攻を視野に軍事作戦を進めていくものとみられます。

また、イスラエルのカッツ エネルギー相は12日、SNS上に、「人質が解放されない限りガザ地区には電力も水も、燃料も届けることはない」と書き込み、ガザ地区の人道危機が深まる中でも強硬姿勢を変えていません。

一方で、ハマス側は12日もロケット弾による攻撃を続けているほか、イスラム教徒が集団礼拝を行う金曜日に向けて各地で抗議行動を呼びかけています。

イスラエルはパレスチナのヨルダン川西岸地区への通行を厳しく制限するなどして警戒にあたっていますが、ガザ地区以外にも混乱が広がる懸念も出ています。

米ホワイトハウス “新たに空母打撃群が地中海へ”

イスラム組織ハマスとイスラエルの大規模な衝突が続く中、アメリカ ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は11日、記者会見で、新たにアメリカ海軍の空母「ドワイト・D・アイゼンハワー」を中心とする空母打撃群が近く、地中海に向かうと明らかにしました。

そのうえで、「必要であれば展開可能だ」としています。

アメリカは「今回の混乱に乗じて自分たちの目的を追求しようと考える国や組織を抑止する」として、イランを念頭に、最新鋭の空母「ジェラルド・フォード」を中心とした空母打撃群をイスラエルに近い東地中海にすでに派遣しています。

バイデン政権としては、空母を地中海に追加派遣することで、イランをけん制し、イスラエルとハマスによる攻撃の応酬が地域に拡大するのを抑えるねらいがあるとみられます。

米 イスラエルなどへの渡航情報を引き上げ

アメリカ国務省は11日、国民向けに出している渡航の安全度を示した情報を更新し、イスラエルと、パレスチナのヨルダン川西岸地区について、4段階で2番目に厳しい「渡航の再検討を求める」に引き上げました。

理由についてはテロなどのおそれがあるとしています。

ガザ地区に「人道回廊」 一刻も早い設置を

イスラエルによる報復作戦の影響で、ガザ地区では食料が不足しているほか、医療状況も悪化しています。

国連WFP=世界食糧計画は11日、声明を発表し、ガザ地区の人口のおよそ8割に当たる180万人が食料不足に陥っていて、現地は壊滅的な状況だと指摘しました。

そのうえで、「私たちはできる支援をすべてしているが、ガザ地区にある食料など必要な物資はすぐにも底をつきそうだ」として危機感を示し、必要な物資を届ける方法を確保するよう訴えています。

また、攻撃の応酬が激しさを増す中、イスラエル軍の攻撃により、ガザ地区の医療機関も深刻な被害を受けています。

WHO=世界保健機関が10日まとめた報告書によると、10月7日以降、ガザ地区で13か所の医療機関が攻撃を受け、医療従事者6人が亡くなったということです。

現地では医療品や救急車の燃料が不足し、死傷者が増え続ける中、ガザ地区の封鎖は救急医療を妨げているとし、人道危機にある人々に必要な物資を届けるための「人道回廊」を一刻も早く設けるよう強調しています。

また、避難所が過密状態になっていて、感染症が発生するリスクが高まっていて、対策をとることが重要だと指摘しています。

ガザ地区の避難民 33万人超に

OCHA=国連人道問題調整事務所は11日、イスラエルの報復作戦により、ガザ地区で避難している人はこの24時間で7万5000人増えて、33万8934人に上っていると発表しました。

このうち、21万8597人はUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関が設置した学校に避難しているとしています。

OCHAはガザ地区では5割以上の店で、小麦粉や乳製品、野菜、それに飲料水などの必需品の在庫が減りつつあるとしたうえで、「今回の危機が深刻かつ多面的な人道的な影響を及ぼしていることが浮き彫りになっている」と指摘しています。

また、電力や燃料、水などの不足や移動制限などが人道支援団体による対応を制約しているとしています。