ネットに差別的な投稿 賠償命じる判決 横浜地裁川崎支部

川崎市に住む在日コリアンの女性が、インターネット上に「さっさと祖国へ帰れ」などと投稿されて名誉を傷つけられたとして、書き込んだ男性に賠償を求めた裁判で、横浜地方裁判所川崎支部は、「悪意のある差別的な言動だ」などとして、190万円余りの支払いを命じる判決を言い渡しました。

川崎市にある在日外国人との交流施設で館長を務める崔江以子さんは、7年前の2016年に茨城県に住む男性のブログ上で「日本国に仇なす敵国人め。さっさと祖国へ帰れ」などと差別的な投稿をされて名誉を傷つけられたとして、300万円余りの賠償を求める訴えを起こしていました。

12日の判決で、横浜地方裁判所川崎支部の櫻井佐英 裁判長は「書き込みは、出身地を理由に在日コリアンなどの外国人を敵と決めつけ、国外へ排斥しようとする悪意のある表現で、差別的な言動だ」と指摘しました。

そのうえで「『祖国へ帰れ』という表現は、女性のこれまでの人生や存在自体を否定するもので、多数の人が閲覧できるネット上で差別的な書き込みをしたことも悪質だ。名誉や尊厳などが侵害された精神的苦痛は非常に大きい」として、男性に対して194万円の賠償を命じました。

原告「これから先を生きていく子どもたちを守る力に」

判決のあと、原告の崔江以子さんと弁護団は、12日午後3時から川崎市内で会見を開きました。

この中で崔さんは「私たちは一緒に生きる仲間なんだということを判決で示してもらった。これから先を生きていく在日コリアンの子どもたちを被害から守る力になると受け止めています」と話しました。

一方で、訴えを起こして以降、以前にも増してネット上で自身への差別的な投稿が相次いでいることについて、「川崎市が条例に基づいて対応してくれましたが、ネット上のヘイトスピーチを止めることはできません。ルールがなく野放しになっているので、これ以上の被害を生まないような法整備につながってほしい」と訴えました。

また、師岡康子 弁護士は「『祖国へ帰れ』ということばはネット上にあふれているが匿名でも高額な責任を負わされるということで、抑止効果が認められる意義のある判決だと思う」とと話していました。