藤井八冠 一夜明け会見 今後の防衛戦“できるだけよい内容に”

将棋界で史上初の八大タイトル独占を達成した藤井聡太八冠(21)が一夜明けて記者会見し、現在行われている「竜王戦」をはじめとした今後のタイトル防衛戦に向けて「できるだけよい内容のものにしていきたい」と意気込みを語りました。

※動画は藤井聡太八冠の発言をノーカットで(16分43秒)
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藤井八冠は、11日、京都市で行われた「王座戦」五番勝負の第4局で、永瀬拓矢九段(31)に勝ち、3勝1敗で「王座戦」を制して史上初の八大タイトル独占を達成しました。

藤井八冠は一夜明けた12日に記者会見し「終局も比較的遅かったので部屋に戻ったあとに軽く対局を振り返りました。いろいろ考えてしまいましたが、ふだんどおり眠れたと感じています。八冠の達成はまだ実感が湧かないというのが正直なところですが、うれしい気持ちとともにこれまで以上に高いレベルの将棋が要求されると思っています」と今の気持ちを語りました。

そのうえで「まだまだ伸びしろや改善の余地は多いと思っていますが、10代の頃と違って意識的に取り組んでいかないと棋力を伸ばしていくのが難しいかなと思っているので、どうすれば実力を高めていけるかしっかり考えていきたい」と話していました。

現在行われている「竜王戦」をはじめ、今後もタイトル防衛戦が続きますが、藤井八冠は「将棋は盤を挟んでしまえば立場の違いも全くないので、その点はこれまでと変わらない気持ちでいいのかなと思っています。これからの番勝負をできるだけよい内容にしていきたい」と意気込んでいました。

小学4年生まで通った将棋教室の代表「歩みを止めないで欲しい」

藤井さんが5歳から小学4年生まで通っていた愛知県瀬戸市にある将棋教室の代表文本力雄さんは「生まれつき何かを持っている子なので、驚きはなかったです。これも通過点の1つに過ぎないと思う。これから新しく登場する天才や、AIで学習した世代の棋士らとの対戦が楽しみです。花がきれいに咲いても上には上があるように、そこが頂点と思えば進歩は止まるので、歩みを止めないで欲しいです」と話していました。

八冠達成から一夜明け 地元から喜びの声

11日、史上初の八冠を達成した藤井聡太さんの地元、愛知県瀬戸市では、一夜明けた12日も市民から喜びの声が聞かれました。

藤井さんの地元、瀬戸市の観光施設「瀬戸蔵」の吹き抜け部分には、「藤井聡太棋士史上初八冠達成」などと書かれた長さおよそ12メートルの垂れ幕が掲げられ、地元のファンたちが拍手をしてお祝いしていました。

市内に住む4歳の男の子は「聡太くんおめでとう」と話し、母親は「七冠の時も来ましたが、垂れ幕がさらに長くなっていてびっくりしました。息子も藤井さんみたいになれるように将棋をやらせたいです」と話していました。

また、80代の男性は「八冠を達成してくれて本当にうれしいです。藤井さんは瀬戸の奇跡の宝です。今後も頑張ってほしいです」と話していました。

瀬戸市の川本雅之 市長は「きのうは大逆転の勝利でうれしく思いました。すごい偉業だし、努力をされてきた結果だと思います。またこれからタイトルを守っていくのも大事だと思うので、瀬戸を挙げて応援を続けていきたい」と話していました。

八冠を祝して セールや特別メニューの提供も

史上初の八冠を達成した藤井聡太さんの地元、愛知県瀬戸市はお祝いムードに包まれ、このうち、市内の喫茶店では八冠と魚のカンパチをかけた「祝冠八丼」(しゅく・かんぱちどん)を12日から提供するということです。

お祝いのためにカンパチも8枚にしたということで、メニューを考案した「瀬戸蔵カフェ花ごよみ」の遠山英歳さんは「八冠級のおいしさになっていると思います。多くのファンの方に食べてもらいたいですし、藤井さんにもぜひ食べてもらいたいです」と話していました。

また、特産品の瀬戸焼の販売店では、八冠達成を受けて12日から8日間、すべての商品を8%引きにするセールを始めました。

店員の女性は「ずっと瀬戸みんなで応援しているので、おめでとうという気持ちを込めて、セールを開催することにしました」と話していました。

八冠独占後 初のタイトル戦へ 会場の京都 仁和寺では

11日、京都市で行われた将棋の「王座戦」で勝利し、史上初の八大タイトル独占を達成した藤井聡太さんが八冠として初めて対局を行うことになる京都の仁和寺は将棋盤の確認などの準備を進めています。

京都市右京区にある世界遺産の仁和寺は将棋の八大タイトルの最高峰、「竜王戦」七番勝負の会場に選ばれていて、第2局が今月17日から2日間の日程で行われる予定です。

11日夜の対局で勝利して「王座」となり、史上初の八大タイトルをすべて獲得した藤井八冠は、この「竜王戦」第2局が八冠としての初めてのタイトル戦の対局になります。

対局は仁和寺の境内にある宸殿の中段の間で行われることになっていて、部屋からは国の名勝になっている庭を見ることもできます。寺では12日、対局に使う可能性がある将棋盤を確認し、今後照明の設置や畳の高さの調整などを行うことになっています。

仁和寺の大林實温執行長は「昨日は固唾をのんで見守っていました。次の対局は多くの人の注目を集めると思うので、両者がもてる力を発揮できるように準備していきたいです」と話しています。

森下卓九段「考えられないくらいのすさまじさ」

藤井聡太八冠が将棋界で史上初の八大タイトル独占を達成したことについて、日本将棋連盟の常務理事を務める森下卓九段(57)は「考えられないくらいのすさまじさで、生涯で2回もタイトル独占を見ることになるとは思わなかった。前回、羽生善治九段がタイトルを独占したときは、情けなく悔しいし、屈辱的だった。今回、トッププロや強い若手たちは闘志が燃えるとともに、藤井八冠の圧力を痛感せざるを得ないと思う。ただ、藤井八冠といえども神様ではなくAIでもない。逆転負けをなくしていけば、勝つチャンスはあると思う」と話していました。

そして、藤井八冠の強さについては「局面が少しずつ良くなっていって、そのまま右肩上がりに押し切っていく『藤井曲線』と呼ばれる将棋が指せるのは、トッププロ相手だといくら藤井八冠でも6割くらいだ。もちろん技術的にずば抜けているが、それに加えて細胞のすべてが勝ちたいという純度100%の思いと、最後は勝てるという自信が、奇跡の大逆転を呼び込んでいるのだと思う」と話していました。