8月の家計調査 実質消費で前年同月比2.5%減 6か月連続減少

総務省が発表したことし8月の家計調査で、2人以上の世帯が消費に使った金額は、物価の変動を除いた実質で前の年の同じ月と比べて2.5%減少しました。減少は6か月連続で、総務省は物価高の影響で習い事や食料などへの支出を抑える動きが出ているとしています。

総務省が6日発表したことし8月の家計調査によりますと、2人以上の世帯が消費に使った金額は1世帯当たり29万3161円と、物価の変動を除いた実質で去年の同じ月より2.5%減りました。減少は6か月連続となります。

「月謝類」や「食料」などが減少

▽スポーツや音楽といった習い事の「月謝類」が23.4%減少したほか、

▽予備校や塾の授業料を含む「補習教育」も23.6%減りました。

▽「食料」も2.5%の減少となりました。

いずれも物価高の影響で家計からの支出を抑える動きが出ていることが要因とみられています。

▽携帯電話料金などの「通信」は、割安な料金プランを契約する人が増えたことから12.2%減少したほか、

▽「洋服」は記録的な猛暑の影響で秋物の商品の売り上げが伸び悩み、10.1%減りました。

「交通」や「国内パック旅行費」は増加

一方で、新型コロナウイルスの感染症法上での位置づけが5類に移行してから初めての夏休みとなり、旅行需要が回復したのを背景に、

▽鉄道や航空の運賃を含む「交通」は32.7%増加したほか、

▽国内の旅行商品「国内パック旅行費」も17.4%増えました。

食品メーカーの商品の売れ行きに変化も

物価の上昇が続く中、食品メーカーの中には消費者の安い価格を求める傾向を受けて商品の売れ行きに変化が出ているというケースもあります。

新潟市に本社を置く水産加工会社では、輸入されたスケトウダラのすり身などを加工して、かまぼこやさつま揚げ、それに、かに風味のかまぼこ「カニカマ」などを生産していて、年間の売り上げはおよそ300億円に上ります。

このうち、「カニカマ」は合わせて8種類の商品があり、全国各地のスーパーなどで販売していますが、1年ほど前から売れ行きに変化が出ています。

それは販売数量の増加で、ことし8月は去年の同じ月に比べて5%以上伸びているということです。

会社では、「カニカマ」は希望小売価格が200円ほどから600円台となっているため、消費者の安い価格を求める傾向を受けてほかの価格帯の商品から消費が移ってきていると分析しています。

水産加工会社「消費者に外されないよう頑張る」

「一正蒲鉾」ESG推進部の小森道夫部長は「単価の低い商品の方が売れ行きがよく、商品の中での構成比的に上がってきている傾向が見られる。消費者は1回当たりの買い物の金額を決めている、またはその金額を感覚的に持っていると思う。今まで10品買えていたが9品に抑えなければならないという時に水産練り物が外される1品にならないように頑張っていくのが今後のメーカーの対応だと考えている。消費者のこの価格帯の商品がほしいというニーズを踏まえて商品を開発していかなければならない」と話しています。

支出を抑える動き「習い事」でも

物価高の影響でスポーツや音楽などの習い事にかける支出を抑える動きが出ています。

埼玉県の卓球教室では、電気代などが上昇する中、レッスン料を据え置くための取り組みを続けています。

埼玉県八潮市にある卓球場では、小学生から大人まで100人ほどが通う卓球教室を運営しています。

教室ではことし1月、電気代などの上昇に伴って、子ども向けなど3つのコースについて1か月当たりのレッスン料を1000円値上げしました。

その際、保護者からは「値上げはしないでほしい」とか「これ以上の値上げは家計に厳しい」といった意見が出たということで、その後は、電気代などが上昇する中でもレッスン代を据え置いてきました。

一方、保護者からは、可能であれば週2回教室に通わせたいが、家計の支出を抑えるため週1回のレッスンにとどめているという声もあるということです。

小学生を通わせる母親「今は何事も安いほうがありがたい」

小学生の息子を卓球教室に通わせている40代の母親は「物価が高くなっていて家計への負担は苦しいです。卓球のレッスン代が上がったことについて、子どもがやりたいと言っていることはなるべくやらせてあげたいけど今は何事も安いほうがありがたいです」と話しています。

卓球場ではレッスン代のさらなる値上げを避けようと、エアコンを新しいものに買い替えたり、電灯をLEDに変えたりするなど電気代を抑えるための取り組みを進めています。

また、教室で使っている卓球のボールは海外製で、円安の影響で価格が上昇していることから、価格の安い別のメーカーのものに切り替えたということです。

卓球教室を運営「経費上がっているが頑張っていく」

「卓球家840」の社長の正海三弘さんは「保護者からの声を聞くと、これ以上の値上げは厳しいと考えています。経費が上がっているので、もう少しレッスン料を上げたいが、企業努力で頑張っていきたい。物価が今後も上がるかもしれないという不安はあるが、なんとか乗り越えていきたい」と話していました。

今後の見通しについて専門家は

今後の見通しなどについて、消費の動向に詳しいみずほ証券の小林俊介チーフエコノミストに聞きました。

Q.8月の家計調査が6日に発表されましたが、どうみますか?

A.7月に比べれば、8月は外食や旅行業についてはお盆の時期の消費とインバウンドの増加によって回復しています。

しかし、食品関係について弱さが目立ちます。

食品の価格が上がっていて、賃金は去年より増えているのですが、物価の上昇に追いついていないため生活防衛のために節約せざるをえない動きが続いています。

Q.節約はどういった動きがありますか?

A.消費者も日々買うものが値上がりしていても、量を減らすわけにもいかないので安い商品を購入する傾向となっています。

また、塾やスポーツ教室などへの支出は回復が見込まれていましたが、人件費や光熱費、家賃などのコストが上がり、結果として授業料が上がり、家計としては手が伸ばしづらい状況です。

一方で外食や旅行業では回復しているので、消費は2極化となっているのが現状です。

Q.足もとでは円安が進んでいますが。

A.円安の影響で輸入品の価格が上がるので、輸入品の冷凍された魚や肉、缶詰めなどが上がってくるので、家計も打撃を受けると考えています。

Q.今後の見通しをどう予想していますか?

A.来年の春闘で賃金が十分に上がらなければ、物価の上昇に負けてしまい実質賃金はマイナスが続くことになります。

一方、春闘によって賃上げが物価の上昇を上回り実質賃金が改善すれば、消費も回復すると思います。

Q.今後、必要なことは?

A.企業はコストカットではなく、働く人の賃金を増やして待遇を上げていくことが求められています。

そのことは経済全体の底上げになり、企業の収益増加にもつながることになります。