体操 世界選手権 橋本大輝が個人総合2連覇 史上4人目

ベルギーで開かれている体操の世界選手権は5日、男子個人総合の決勝が行われ、橋本大輝選手が金メダルを獲得して2連覇を果たしました。大会連覇の達成は内村航平さん以来、史上4人目です。

ベルギーのアントワープで開かれている体操の世界選手権は大会6日目の5日、6種目の合計で争う男子個人総合の決勝が行われ、日本からは連覇を目指す橋本選手と、初出場の27歳、千葉健太選手が出場しました。

予選3位だった橋本選手は最初の種目のゆかで高さのある演技を見せますが、最後の着地で乱れ、13.466と得点を伸ばせませんでした。

首位の選手と1点差の6位で迎えた4種目めの跳馬は、高難度の「ロペス」を着地まで完璧に決め、15.000をマークして、この種目を終えた時点で2位に順位を上げ、流れを引き寄せました。

続く平行棒も足先まで伸びた美しい姿勢で安定感のある演技を見せて高得点をマークします。

トップで迎えた最後の鉄棒はG難度の「カッシーナ」など、手放し技と最後の着地もしっかり決めて、6種目の合計86.132で金メダルを獲得しました。

大会連覇の達成は2009年の大会から6連覇を果たした内村さん以来、史上4人目です。

一方、予選トップだった千葉選手は2種目めの得意のあん馬でF難度の「ブスナリ」を決めると持ち味のテンポのいい旋回を見せて、予選の得点を上回る14.800をマークしました。

千葉選手は5種目を終えた時点で3位に順位を上げましたが、最後の鉄棒で落下するミスがあり、合計83.464で4位でした。

橋本大輝「まだまだ成長できる」

2連覇を果たした橋本大輝選手は「最初のゆかでヒヤヒヤだったが、最後まで集中力切らさずできてほっとしている」と笑顔で振り返りました。

そして、4種目めの跳馬について、「後ろに1歩と思ったが、着地を止められると思ったので意地でも動かさず、流れをもってこられたのがよかった」と話していました。

その上で、「苦しい戦いだったが、まだまだ成長できると思うし、これをパリオリンピックにつなげたい。残り2日間も最後まで気を抜かず、自分の演技ができるよう頑張りたい」と話していました。

千葉健太「最後まで楽しく演技できた」

千葉健太選手は「メダルは逃してしまったが、最初から最後まで楽しく演技できてよかった。種目別のあん馬は金メダルを目指したい」と話していました。

成長を続けるエース 橋本の強さは

苦しい状況に陥っても高い集中力で立て直す底力を見せた橋本選手。成長を続ける日本の若きエースが連覇を果たしました。

1種目めのゆかは冒頭のG難度の大技「リ・ジョンソン」を盛り込まず、ふだんよりも難度を下げた演技構成で臨みましたが、着地でミスが出て、17位スタートと大きく出遅れました。

その後、演技の合間に「自分の演技に集中するだけ」と、周りの情報を遮断するようにダウンコートのフードを頭にかぶって1人、集中力を高めていた橋本選手。大会直前の強化合宿ではどんな状況に陥っても演技に集中し、力を十分発揮できるようトレーニングを積み重ねてきました。

試技会や通し練習の直前は通常、確認したい技を繰り返し練習しますが、本番と同じように、あえて確認を1回にとどめるトレーニングを続け、大会前には「どれだけその1本に集中できるかを大切にしたら安定してきた」と、体の反応や感覚に手応えを感じていました。

決勝でその集中力が発揮されたのは4種目めの跳馬。首位の選手との差はわずか1点。失敗が許されない場面で、「自分の強さを引き出せた」と高さのある跳躍と完璧な着地を決めました。

最後の鉄棒もしっかり決めて、この日、初めて笑顔を見せた橋本選手。大会連覇は体操界のレジェンド、内村航平さん以来となる快挙も、橋本選手が目指すのは内村さんを超えることではなく、「自分を毎年超えていくこと」。

今大会、団体に続いて、個人総合でも金メダルを獲得し、来年のパリオリンピックに向けて大きな弾みをつけた若きエース。その姿には、再び世界のトップに立つという強い決意がにじんでいました。

着地は“勝敗を分ける11個目の技”

着地を「勝敗を分ける11個目の技」だという橋本選手は、ここぞという場面でピタリと決め、今大会2つ目の金メダルをたぐり寄せました。

橋本選手はチューブを使って着地の瞬間に必要な下半身の使い方を確認したり、1回宙返りなどの基本的な技で着地を止めたりする練習を繰り返してきました。

特にことしは足だけで着地を止めるのではなく、股関節から連動させ、より完成度の高い、高い位置での着地を目指しました。

日本選手の中では1メートル67センチと身長が高い橋本選手。着地で強い衝撃が加わりやすいため、腰の負担を減らすために股関節の柔軟性や機能性を高めるトレーニングを多く取り入れています。

「着地を決めてチームに勢いをつける」と臨んだ今大会。跳馬や鉄棒、平行棒の重要な後半の種目でほぼ完璧に着地を決め、団体で8年ぶりに金メダルを獲得したのに続いて、個人総合連覇を果たしました。