【動画】ロシアを逃れ国外に学校設立 ロシア人女性教師の模索

先月、新学年がスタートしたロシア。戦争の終わりが見えない中、プーチン政権は「新たな歴史教育」や「軍事教練」を導入し、子どもたちに軍事侵攻の正当性を植え付けようとしています。“愛国教育”の名の下、政権の意に従うことを強いられる中、国外に逃れる子どもや親も増えています。

そんな子どもたちを支えようとしているのが、ロシア人の教師、マリコ・モナホワさんです。国外で学校を設立し、教師として何ができるのか模索する姿を取材しました。

※10月3日の「国際報道2023」で放送した内容です
※動画は5分18秒、データ放送ではご覧になれません

モンテネグロで学校設立 200人以上の子ども支える

バルカン半島に位置する人口62万のモンテネグロ。ロシアからビザなしで入国できるため、去年2月の軍事侵攻以降、大勢のロシア人が逃れてきています。

去年9月、ここで学校を設立したロシア人のマリコ・モナホワさんです。およそ10人の同僚と共に、プーチン政権による教育から逃れてきた200人以上の子どもたちと向き合っています。

(マリコ・モナホワさん)
「教育の変化という点で、子どもたちは困難な時を迎えています。彼らが理解できる言語で、再び教育の機会を与えたいと思っています」

モナホワさんがモンテネグロにやって来たのは去年4月。以前はモスクワの学校で、地理の教師をしていました。信条にしていたのは、子どもたちに“自分で考え、判断できる力”を身に付けさせることです。

“愛国教育”の名の下 国家への忠誠心刷り込まれ

しかし、軍事侵攻が始まると、ロシアの学校を取り巻く状況は一変。子どもたちは、“愛国教育”の名の下に、プーチン政権の歴史観や国家への忠誠心を刷り込まれることになったのです。

かつての生徒たちが政権の意に従うしかない状況に追い込まれている姿を見て、モナホワさんは無力感にさいなまれたといいます。

(マリコ・モナホワさん)
「政権からの圧力によって、子どもたちは、自分で考え行動する機会を奪われました。視野を広げることは許されず、狭い世界観の中で生きなければなりません。より絶望的な社会になるのではと恐ろしさを感じたのです」

“自分の意見言えない”子どもたちと向き合って

せめて国外に逃れた子どもたちには、教師としての使命を果たしたいと考えたモナホワさん。みずから資金集めや場所探しに奔走し、およそ5か月かけて学校の設立にこぎ着けました。

一方で、子どもたちと向き合うことは決してたやすいことではありませんでした。政権の意に従うことを強いられたことで、多くの生徒が、人と異なる意見を口にするのをためらうようになっていたというのです。

(マリコ・モナホワさん)
「子どもたちは非難を恐れて、自分の意見を言えずにいました。傷ついていない子など、1人もいませんでした」

自由な意思を 互いに尊重できる心を

以来、モナホワさんが子どもたちと接する時に心がけてきたことがあります。ささいなことでも彼ら自身の意見を聞くようにすることです。自由に話すことをためらわないでほしいと思っているからです。

「みずからの意思を持ち、それを互いに尊重できる心を取り戻してほしい」。モナホワさんは、子どもたちひとりひとりと向き合い続けたいと考えています。

(マリコ・モナホワさん)
「人にはそれぞれの価値があり、それがこの先の社会を作るのだと教えています。互いに敬い合い、周りの人や国を尊重し、知識を攻撃のためではなくみずからの成長のために使ってほしい。いつもみんなの側にいて支えると伝えたいのです」