手紙は1936年(昭和11年)、井伏鱒二が作家の佐藤春夫に宛てたもので、佐藤の遺品を調べていた実践女子大学の研究チームが見つけました。
太宰は盲腸で入院した際に鎮痛剤の依存症になり、井伏の説得で精神科病棟に入院しましたが、手紙では「私たちが太宰をだまして入院させたと憤慨している」とか、「太宰の妻も面会できない状況になっている」などと、当時の様子が原稿用紙2枚に生々しくつづられています。
「人間失格」のモチーフ 太宰治の入院生活伝える手紙 見つかる
太宰治の代表作「人間失格」のモチーフとなった、精神科病棟での入院生活について、太宰の師匠にあたる井伏鱒二が別の作家にあてて書いた手紙が、初めて見つかりました。「私たちが太宰をだまして入院させたと憤慨している」など、当時の様子がつづられ、専門家は貴重な資料だとしています。


太宰は芥川賞の受賞を3回続けて逃した直後で、この入院体験が人間不信を強め、代表作「人間失格」のモチーフになったとされています。
実践女子大学の客員研究員で東京大学の河野龍也准教授は「周囲の親切で入院したことを太宰がだまされたと感じ、被害者意識を持ったことは新しい発見で、大変興味深い資料だ」と話しています。
この手紙は、9月30日から11月26日まで、横浜市中区にある神奈川近代文学館で展示されます。