万博 会場建設費 博覧会協会“上振れ幅できるだけ抑えたい”

再来年に開催される大阪・関西万博の会場の建設費が、これまでより上振れする見通しとなっていることについて、実施主体の博覧会協会でトップを務める経団連の十倉会長は、金額はまだ精査中だとした上で、上振れ幅はできるだけ抑えたいという考えを示しました。

博覧会協会のトップを務める経団連の十倉会長と協会の石毛事務総長は、29日、都内で行われた理事会のあと、記者会見を開きました。

大阪・関西万博の会場の建設費は、これまで1850億円と見込まれていましたが、資材価格や人件費の高騰などを背景に博覧会協会が、現時点で、およそ450億円多い、2300億円程度になるという見通しをまとめ、調整を進めていることがわかっています。

これについて、十倉会長は記者会見で「建設費は精査をしているが、相当程度の金額が積み増されると思う。見通しは何だったのかと言われれば、見通せなかったのは申し訳ないが、引き上げの幅はできるだけ抑えたい」と述べました。

そのうえで、会場の建設費は、▼国、▼大阪府・市、それに▼経済界の3者で3分の1ずつ負担する計画となっていることを念頭に、「報道されているような水準であれば、経済界としてはなんとか集められるのではないか」と述べ、現時点の見通しであれば、経済界としては、上振れする額の3分の1は拠出できるのではないかという認識を示しました。

会場建設費 大阪の人の反応は

大阪・関西万博の会場建設費の上振れについて大阪 梅田で聞きました。

万博に行くつもりはないという大阪市の70代の女性は、「万博ではなく、福祉など、他のところに税金を使うべきだと思います」と話していました。

また、同じく万博に行くつもりがないという大阪市の19歳の女性は、「万博がどういうものか内容がよくわからない。行かないのに税金が多く使われるのはちょっと嫌だなと思います」と話していました。

万博に行くか迷っているという、堺市に住む30代の男性は、「見積もりが甘いなと思いました。費用をかけてうまくいけばいいですが、微妙な結果だと、もったいないなと感じます」と話していました。

また、1970年の大阪万博で会場に10回以上行ったという大阪市の60代の男性は、「万博は楽しみにしていて、行こうと思っています。費用が増えるのは、しかたのないことだと思います」と話していました。

東京の人の反応は

大阪・関西万博で、会場の建設費が上振れし、国民の負担が増す可能性があることについて、東京 新宿で話を聞きました。

東京 江東区に住む60代の男性は、「上振れの幅は異常だと思いますが、全ての物価が上がっている中で、建設費を上げないと、建設業などで働く人たちをたたくことになるので、しかたがないと思います」と話していました。

30代の会社員の女性は、「東京に住んでいて、大阪で開催される万博は自分とは関係ないと思うところがあるので、当初の建設費からどうしてこれほど上がっているのか、しっかり説明してほしいです」と話していました。

都内の大学に通う大学2年生の女性は、「大阪の負担をこれ以上増やしても大変だと思いますが、開催地ではない東京に住む人からすると、国の負担が多いと感じると思います」と話していました。

40代の会社員の女性は、「物価や人件費など、全般的にコストが上がっていると思いますが、少しでも減らす工夫をして、家計に影響がないようにしてほしい」と話していました。

海外パビリオン 準備状況は 間に合うのか

大阪・関西万博では、60か国がみずから費用を負担して独自に建設する「タイプA」と呼ばれる方式で、パビリオンを建設することになっていますが、資材の高騰などを背景に準備の遅れが表面化しています。

パビリオンの建設にあたっては、まず、開催地である大阪市に設計図や工程表などを盛り込んだ「基本計画書」を提出しますが、29日までに提出した国は8か国。

「基本計画書」のあとに提出する「仮設建築物」の建設許可の申請を出した国はチェコとモナコの2か国にとどまり、建設を始めた国はまだありません。

博覧会協会は、準備を加速させるため、協会が組み立て式の箱形の建物を建てて、参加国に内装や外装のデザインなどを委ねる、「タイプX」と呼ばれる方式を提示しています。

博覧会協会によりますと、28日の時点で10か国がこの方式での建設を検討していますが、実際に「タイプX」での建設を選択した国は1か国にとどまっているということです。

博覧会協会 副事務総長「引き続き接点を探す努力」

博覧会協会で海外パビリオンなどを担当する櫟副事務総長は、NHKのインタビューの中で、「各国と建設会社、すべての双方の希望に折り合いをつけきれてはいない。引き続き接点を探す努力を続けていく」と述べ、各国が建設を進められるよう、これからも協会としてできる範囲でサポートしていく考えを示しました。

一方で、「組織の公益性から考えて、ある特定の事業者だけを仕事につなげることはできない」と述べ、各国と特定の事業者を結びつけることは、法的な制約から難しいとしています。

また、「タイプX」について「準備が非常に遅れている国はタイプXを選んで進めることが、現実的なパビリオンを出展する手段だと考えている」と述べました。