米 予算案めぐる協議難航 バイデン大統領は共和党の対応を批判

アメリカの連邦議会で政府の予算案をめぐる協議が難航し、政府機関の一部が閉鎖される懸念が高まる中、バイデン大統領が演説し、予算案に反対している共和党の保守強硬派の議員を強く批判しました。

アメリカの連邦議会では10月から始まる新たな会計年度の予算案の協議が難航していて、当面のあいだ予算の執行を続ける「つなぎ予算」を成立させるための調整が続いています。

ただ、議会下院では共和党の保守強硬派の議員が大幅な歳出削減などを主張して、「つなぎ予算」にも反対していて、10月1日以降、政府職員の人件費などが手当てできず、政府機関の一部が閉鎖される懸念が高まっています。

これについてバイデン大統領は28日、西部アリゾナ州で行った演説のなかで、「議会の過激派の議員は、政府に国民のための仕事をさせるよりも、政府を閉鎖することの方に執着している」と述べて、保守強硬派の議員を強く批判しました。

また、国務省のミラー報道官は記者会見で、「われわれは政府機関の閉鎖が起きた場合の対応策を検討している」と述べて、安全保障上、継続するべき業務を選定する作業を続けていると明らかにしました。

議会では上下両院のそれぞれで、「つなぎ予算」を成立させるために調整が続いていますが、合意のめどは立っていません。

政府機関の閉鎖は1981年以降14回

アメリカの連邦議会は来月から始まる新たな会計年度の予算案を今月中に成立させる必要があります。

与野党の激しい対立がいわば恒例行事となっていて、欧米メディアによりますと、政府機関の閉鎖は1981年以降、14回に上っています。

多くの場合、閉鎖は1日で解除されていますが、アメリカのシンクタンク「ブルッキングス研究所」によりますと、過去に4回、2営業日以上にわたって政府機関の一部が閉鎖したことがあります。

このうち、民主党のクリントン政権下では、1995年から1996年にかけて歳出の水準で合意できず、2回、あわせて26日間にわたって閉鎖されました。

2013年には、当時のオバマ大統領が進めていた医療保険制度改革の財源をめぐる対立で、16日間、閉鎖されました。

直近では、トランプ前政権下で、メキシコとの国境沿いに壁を建設する費用をめぐって与野党が対立し、2018年の12月から2019年1月にかけて政府機関の一部が過去最長となる35日間にわたって閉鎖に追い込まれました。

連邦政府の職員は自宅待機を命じられたり、無給で働いたりすることを余儀なくされ、各地の空港では保安検査などを行う職員の欠勤が相次いだことで旅行者にも影響が出ました。

また、一部の国立公園や首都ワシントンの観光名所の博物館などの施設も閉鎖され、ワシントンではホテルの宿泊客が大きく減少しました。

政府機関の閉鎖 幅広い分野への影響を懸念

政府機関が閉鎖されると交通や観光、それに食料支援など幅広い分野に影響を及ぼすことが懸念されています。

このうち、食料支援についてホワイトハウスは、およそ700万人の女性や乳幼児などが利用している支援プログラムの資金が足らなくなり、このプログラムに頼って生活している人々を危険にさらすと強調しています。

また、交通面では、1万3000人以上の航空管制官と5万人以上の保安官、それに連邦航空局など数千人の職員が無給で働くことを余儀なくされ、前回のケースでは全米各地の空港で旅行者が長時間待たされるなどの影響が出たとしています。

また、研修中の管制官の訓練が中止となり、人手不足に拍車がかかる恐れがあるとしていて、ブティジェッジ運輸長官は27日記者会見で、「特に輸送機関が混乱し、危険を招くことになるだろう」と述べました。

経済全体の影響について大統領経済諮問委員会のバーンスタイン委員長は、政府機関の閉鎖によって、1週間ごとに、ことし10月から12月のGDP=国内総生産の成長率が0.1ポイントから0.2ポイント押し下げられるとしています。

トランプ前政権下で閉鎖が35日間にわたった際には、アメリカの議会予算局が、経済の損失が最終的に30億ドルにのぼったという試算を公表しました。