“南シナ海に中国が設置した障害物を撤去” フィリピン発表

フィリピン沿岸警備隊は、中国海警局が中国とフィリピンの間で領有権が争われている南シナ海の岩礁の周辺に設置した障害物を、特別作戦を実施して撤去したと発表しました。

フィリピン沿岸警備隊は今月22日、中国海警局が南シナ海にあるスカボロー礁の周辺の海上に、白い浮き球を連ねたおよそ300メートルの障害物を設置しているのを確認しました。

この障害物についてフィリピンの国家安全保障会議は25日、岩礁の入り口をふさぎ、フィリピン漁船の航行に危険を及ぼしているほか、国際法にも違反するとして、特別作戦を実施して、撤去するよう沿岸警備隊に指示しました。

公開された映像には、ダイバーがナイフを使って、海に浮いた障害物をつなぐロープを切断している様子が写っています。

沿岸警備隊は撤去について、「フィリピンの漁民の生活を妨げるいかなる妨害も国際法に違反し、主権を侵害するものだ」としています。

スカボロー礁は豊かな漁場として知られ、フィリピンの排他的経済水域の内側にありますが、中国が2012年から実効支配を続けていて、2016年の国際的な仲裁裁判の判断でも、中国がフィリピン人の伝統的な漁業権を侵害していると認定されています。

中国外務省は25日、「周辺海域に対して争う余地のない主権と管轄権をもっている」と主張していて、撤去を受けた動きが注視されます。

障害物撤去の「特別作戦」とは

フィリピン沿岸警備隊の報道官は、中国海警局が南シナ海にあるスカボロー礁の周辺に設置した障害物を撤去した、25日の「特別作戦」の詳細を、26日明らかにしました。

スカボロー礁は2012年から中国が実効支配を続けていて、岩礁の周辺には通常、中国海警局の船4隻がパトロールを行っているということで、沿岸警備隊は、目立つ行動を控えながら慎重に作戦を実行したと説明しました。

具体的には、沿岸警備隊の隊員は漁民を装い、木製の船で障害物に近づき、海中に潜ってロープを切ったり、障害物を固定するいかりを引き上げたりして、撤去作業を進めたということです。

今回の特別作戦の実行はマルコス大統領が決定したということです。

フィリピン当局がスカボロー礁で、中国による障害物を確認したのは今回が初めてでしたが、沿岸警備隊が地元の漁民から聞き取った話では、中国側による障害物の設置は過去に何度もあったということです。

中国がスカボロー礁の実効支配を始めて以降、フィリピンの漁船は魚が豊富な岩礁の内側には入れなくなっているということで、報道官は「フィリピンの漁民が再び岩礁内で漁ができるようになるようパトロールを続ける」と強調しています。

中国外務省 報道官「騒動引き起こさないよう忠告する」

フィリピン沿岸警備隊の発表について、中国外務省の汪文斌報道官は26日の記者会見で、「まったくの独り言だ」と強く反発しました。

そのうえで、スカボロー礁の中国名、黄岩島という呼び方を使って、「中国は黄岩島の主権と海洋権益を断固として守る。われわれはフィリピン側に騒動を引き起こさないよう忠告する」と述べ、フィリピンをけん制しました。