UAW、全米自動車労働組合は、アメリカの大手自動車メーカーのGM=ゼネラル・モーターズやフォード、それにクライスラーのブランドを傘下にもつヨーロッパのステランティスの3社との間で労使交渉が合意できず、先週15日に3社の組合員が初めて同時にストライキに突入しました。
ストライキは3社の3つの工場に限定して人数を絞る形で行われています。
このうちGMによりますと、中西部のミズーリ州にある工場がストに入った影響で隣のカンザス州にある工場が部品不足から生産が一時停止しているということです。
労使交渉では、組合側が4年間で40%の賃上げなどを求めたのに対し、経営側の回答は要求を下回っているということです。
UAWは現地時間の22日の正午、日本時間の23日午前1時までに労使交渉に進展がなければ、ほかの工場にもストを拡大する方針を示していますが、妥結の見通しは立っていません。
組合側の不満の背景には、長引くインフレで生活が厳しくなっていることに加えて、ガソリン車に比べて部品の数が少ないEV=電気自動車の普及が雇用の縮小につながることへの不安があるとみられます。
3社の組合員はおよそ15万人に上り、ストが拡大すれば大手メーカーの自動車生産が減少する懸念があります。
また、賃金が上昇すればインフレが再び加速し、アメリカ経済全体に影響が及ぶことも懸念されています。
全米自動車労組ストライキ 期限まで交渉進展なければ拡大も
アメリカのUAW、全米自動車労働組合は、大手自動車メーカー3社に対して先週からストライキを続けています。日本時間の23日午前1時までに労使交渉が進展しなければストを拡大する方針ですが、妥結の見通しは立っておらず、自動車生産や経済全体への影響が懸念されています。
米で広がる賃上げ要求やストライキの動き
アメリカでは長引くインフレを背景に生活が厳しくなったことで、労働組合が賃金の引き上げを求めたり、ストライキを行ったりするなどの動きが広がっています。
ことし5月には映画やテレビの脚本家でつくる労働組合が、動画配信大手ネットフリックスやアマゾンなどに報酬の引き上げなど待遇の改善を求めてストライキに突入。
7月には、俳優でつくる労働組合が43年ぶりにストライキに入りました。
映画やドラマなどの制作にも影響が広がっています。
また、ことし6月には大手航空機メーカーのボーイング向けに航空機の胴体などを生産しているスピリット・エアロシステムズの労働組合が経営側と労使交渉が決裂して6日間のストライキを実施、賃上げやボーナスのアップを含む新たな労働契約を結びました。
33万人の組合員を抱える物流大手のUPSの労働組合は、ことしの労使交渉で集会を開くなどして賃金の引き上げを求めました。
合意できなければストライキに突入する可能性もありましたが、ことし7月、今のパートの従業員の賃金を5年間で48%引き上げるなどの内容で合意し、ストライキは回避されました。
また、航空大手ユナイテッド航空のパイロットの労働組合が4年間で最大40%の賃金の引き上げで7月に合意しました。
大手企業で労働組合が結成される動きも広がっていて、IT大手のアマゾンでも去年4月にアメリカで初めての労働組合の結成が決まり、その後、ストライキが実施されたほか、IT大手のアップルでも去年6月、アメリカで初めてとなる労働組合の結成が決まっています。
アメリカ財務省は8月28日、労働組合の存在が働く人の賃金を10%から15%押し上げるとの調査結果を発表しました。
バイデン政権は労働組合が有力な支持基盤で組合は中間層の収入増加につながるとして重視する姿勢を示した形です。
一方、ストが続けば企業の業績悪化につながるおそれがあります。
自動車産業で生産が滞ると中古市場に出回る車が減ってこのところ低下していた中古車の価格が上昇に転じる可能性もあります。
さらに賃上げの動きが幅広い産業に波及すれば、人件費の上昇分を物価に転嫁する企業が増えインフレが再加速するリスクがあるため、20日のFRB=連邦準備制度理事会のパウエル議長の記者会見でも質問が出ていました。
専門家「働く人たちは窮地に立たされている」

アメリカの労働組合に詳しいコーネル大学のケイト・ブロンフェンブレナー上級講師は、ストライキなど労働組合の動きが活発になっていることについて「インフレ率の上昇で労働者の(実質的な)賃金は下がっている。住宅、食料品、大学の学費など選択の余地のないものに対してインフレが起きていて、働く人たちは窮地に立たされている」と述べました。
そのうえで「UAWのようなストライキが起きると、人々はそれを見て、私は労働時間が長すぎるんだ、私は立ち上がる必要がある、力を与えられたと感じるようになる」と述べ、アメリカでさらにストライキが広がる可能性があると指摘しました。
また、UAWのストライキがアメリカ経済に及ぼす影響について「もし自動車が生産されなくなれば、自動車は品薄になる。そうなれば、自動車の価格は上昇し、インフレの一因となるだろう。経済の主要な側面に波及効果をもたらし、サプライチェーンに影響を与える」と懸念を示しました。